もみじ饅頭
しっとりとしていて甘かった。感想は大体こんな感じか、そんな別に毎日三度の飯を捨ててまでやりたいと思う程のもんじゃなかった。ただボルテージは上がり精神的充足は確かに認められた。ナイーブな時に良いだろう。「もっかい」とねだってきたので押し付けるように恋愛ドラマで昔見たような感じで見よう見まねでキス、漢字に直せば接吻をした。どうでもいいが接吻の方がエロく聞こえるのは俺だけなのだろうか。「………ヘタクソ」と結構長い間してやったにも関わらず童貞のコンプレックスを突いてくる。致命傷だ、せめてもっと優しい言葉をだな。しかしぎこちなかったのはいったいどっちだろうか。なんか舌まで入れてきたし謎に歯を当ててきたり、もしかしてファーストキスなのか?向こうも。反撃の余地あり、今こそ勝機!なんて思っていたが顔を真っ赤にしながらもじもじしている彼女を見てやめることにした。そうそう、男は紳士たれ。ジェンダー社会になってもそれは通用するはずだ。それに性別関係なく人の弱みにつけこむなんてことは人間として最低なのであるからにして、俺は筋斗雲へと足を運びまたがる。もう告白したんだし彼女って呼んでいいんだよな?彼女はファーストキスのインパクトが強かったのか知らないがとてとてと千鳥足でついてきてそのまま筋斗雲に乗っかる、そんな所為でわかったのは向こうもコンプレックス的何かを抱えていてあのセリフは相当な見栄張りだったんだなと俺は変なところで親近感がわく。「出発しまーす!」「うん」ムニュッ!ナッツが掛け声に反応したのと同時にまるでシートベルトの要領で背中に自動的にというかやんわり自然に、いや自然すぎてビックリするくらいに背中に胸の心地よい感触が、じゃなかったまぁそれもあるんだが俺の前へと手が回されハグされる。今更キスもしたし、裸も見た癖に何を驚くことがあろうか、と反論する俺の意識。しかしだな、なんやかんや今まで俺からいろいろとしてきたのであって向こうからしてきたことは未だなかったのだよ、つまりこれが初めての施しの両立が成立した記念のハグであり動揺しないのも無理はない。「ちょ、ちょっと。なんかなすがままのように自然とあんたにハンドル譲っちゃったけど大丈夫なの?な、なんか凄いぐらついてて、あ、あのジェットコースター思い出しそうになって吐きそうなんですけど!」おっと弱みも見せてきたな。なるほど、遊園地中黙っていたのは俺の告白しない日和っていた状態にイライラしていただけではなかったようだ。「大丈夫、大丈夫。俺につかまっとけ」とカッコつけるもなんだろうか、前は一人乗りだったのでバランスが取れていたが二人乗りだと重くて一人乗りの時の要領でいくと落っこちてしまいそうだ。しかしもうかっこつけてしまった手前今更「変わってください」なんて言ってみろ、幻滅されるぞ、多分。それに告白してキスも拒まなかったのはいいが返事はもらってない。そう、これは未だに俺が試されているという証拠だ。そんな心境の中、ここで運転テクでも見せつけたらいいんじゃね?と思った俺を誰が責められよう。それに遊園地に行くまでのナッツの安全運転にはちょいと嫌気がさしていたのだ。目の前には雷雲と雨雲が接近してきており、しかも両方かなりデカい。しかし間にすこし隙間が空いている。普通は上昇して避けるだろうが俺はあろうことかその隙間に向かって全速力で走り始めた。「ちょ、えっ!なにやってるの!」と後ろから悲鳴が聞こえるがもう遅い。フフフ、ハンドルが言う事きかねぇ…終わった。死んだわ。でも死んでもナッツだけは生き残るからいいよな、とよりによって雷雲の方へ直行してしまう筋斗雲を尻目にあきらめ口調で一人嘆いていると「いや、いくら天使でも雷雲に突っ込んだら死ぬぞ。」と最近登場してなくて完全に忘れていた神の声が脳内にとどろく。つーか、マジかよ。天使でも雷で死ぬのか!何としてでも雨雲の方へ突っ込まなくてはとハンドルを右へ必死にグイグイ押し込むも操縦がきかないので減速してせめて時間稼ぎを、と思ったが俺はとっくにブレーキを踏んでいた、おまけに踏んでいない足もありつまるところ勝手に爆速でいつしか筋斗雲は進んでいたのだ。絶望を再確認した。「まー安心しろ、ワシが助けてやるわい。」と救いの声。おお、あなたは神ですか!あ、神だった。「そのかわり明日下界にお使いを頼む。今いる神界のキャバクラの子が下界の饅頭が食べたいってうるさくてのー、あ、ちなみに饅頭といっても紅葉饅頭で頼むぞ。買ったら天使ちゃんが場所知ってると思うからこういっておくれ、神だってはっちゃけたい!って店にいるってな。では、直してやってから頼むぞ。」と一方的に打ち切りられたがなんとかブレーキが治りつーか神が運転してんのか?針の穴に糸を通すような細かいハンドル操作が必要であるくらいには隙間が小さいというのに俺は雷雲からの静電気や雨雲からの水滴一つかかることなく爆速で通り過ぎた。「す、すごいじゃない!レン!こんな操作ゴールド免許取ってる私ですら無理よ!才能があるわ!流石私の彼氏ね!」と無事褒められた。いや、うれしいし当初の目的は達成したわけだがズルを使ってるみたいでなんかひけるなぁ。でも凄い凄いといいながら肌を俺の背中に摺り寄せてくれるとても上機嫌なナッツを害するような自白的行為を言うのにはもっとひけるのであった。ていうかさっき俺の事彼氏とか言ったよなぁ。えへへ。思わず肌が緩む。思わずハンドルを握る手が緩む。ってあっ!ツルっ!「レ―ーーン!」とまるで劇場版某名探偵アニメの主人公が彼女に向かって叫んでいるようだななんて思っていた俺の体はそんな初めての彼女の声を耳に地上へ落ちていった。まぁなんにせよ偶然ナッツが俺から手を放していて道ずれにならなくてよかった。自由落下ってこんなに早いんだなと物理が大嫌いにもかかわらずこういうときだけ思い浮かぶ、あの競馬レースのような名前をしている教師の顔。おえ、やめてくれよ。目の前に俺を追って筋斗雲を急降下させて必死になっていても可愛い顔をしているナッツがいるんだからさ。しかし本当に自由落下とはすごいものだ。微塵たりともナッツが俺に追いつく気配がない。向こうも多分最高速度のはずなのにな。「もみじ饅頭買ってきてな、よろしく!」とお気楽な爺の声が聞こえてくる。いや、買ってくるより前に死にますて。つーか広島まで行かなきゃならないのかよ…そんなの嫌…だ………これを最後に俺は気を失った。
祝一〇話達成!いやーこれでミル子の倍の話数なんですがあまりにも内容がなさすぎると感じるのは僕だけでしょうか、いや、ほんとにすいません。次回、とうとう僕も忘れそうになったのでくるみちゃんが登場します!次回もサービス、サービス!




