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78話 夜のお話(1/2)

 前田との戦いはいよいよ明日に迫った。俺はこの間、ロッシュさんとの訓練、オーク討伐、さらにカイさんに稽古をつけてもらったり、リルと戦ったり・・・。とにかくいろんな人に協力してもらった。

 正直、前田に勝てるという自信は無い。前に戦ったときは手も足も出なかった。そこから俺がどれだけパワーアップできたか。しかしロッシュさんやカイさん、リルには完敗だった。オーク討伐も5体目ぐらいからへばってロッシュさんたちの助力を仰いだ。本当に俺は強くなっているのだろうか。そして、前田も強くなっているかもしれない。それを考えると厳しい勝負と言わざるを得ない。

 それでも俺は勝たなければいけない。勝たなければ結依が聖女にさせられるのをもう止められない。だから絶対に勝つ。そんな緊張とプレッシャーと気合いとで、心が重い。かすかなめまいさえするようなストレス。心臓が速く脈打つ。ベッドに入ったが、そんな精神状態では寝られるわけもなく・・・。1~2時間は寝付けずにいた。


「はぁ・・・」


 試合は明日だというのに・・・。早く寝なきゃ・・・。そう思えば思うほど目がさえてくる。今日は訓練をせずに休養にあてたから、身体が疲れていないというのもあるかもしれないが・・・。寝付けないことが焦りになり、それでまた寝れなくなる。完全な悪循環だ。


「ん・・・」


 ベッドの上でゆっくりと身体を起こした。眠れないなら仕方ない。リビングに行って水でも飲もう。そう思ってベッドを下り、部屋から抜け出した。みんなを起こさないように静かに廊下を歩き、階段を下り、ゆっくりリビングの扉を開けた。誰もいないだろう。そう思いながら。

 静かなリビング。しかしそこに一人の少女がぽつんと座っていた。幻想的な月明かりに照らされたその姿に一瞬目を奪われた。


「「あ・・・」」


 やがてその少女はこちらを向き、目が合った。先客は結依だった。




☆☆☆




 ベッドに入ったものの、なかなか寝付けなかった、どうしても明日のことを考えてしまう。悠と前田の決闘。前田が勇者になれば私は聖女にされてしまう。それが嫌なら俺と戦って勝て、と前田は悠に言った。以前圧勝したから悠に負けるはずはないと高をくくっての提案だろう。なんて卑怯な。

 前田と恋人になるのはもちろん、コンビを組むのも絶対嫌だ。周りから前田の女だと思われるなんて耐えられない。死んでもごめんだ。

 ・・・でも。それで悠が傷つくのは・・・。この9日間、悠はボロボロになりながら訓練していた。身体能力強化魔法を使ったロッシュさんに生身で挑みボコボコにされ、命がけでオークと戦い、カイさんにはまた子供みたいにあしらわれ、リルにはヘトヘトになるまでもてあそばれ・・・。鬼気迫る勢いで自分を追い込んでいた。私のために・・・。そして明日の本番。前みたいに気絶するまでボコボコにされるかもしれない。気絶された後も殴られ続けるかもしれない。そんな姿見たくない。

 ・・・私のことなんて無視すればいいのに。聖女?勝手になれ。そう言ってくれた方がずっと楽なのに。私のために傷つく必要なんて無いのに。普段ケンカばかりのくせに、こういう時だけ頼もしいのは・・・。


「はぁ・・・」


 なんだが寝付けない。緊張と不安とあとよく分からない感情が交じり合って胸がモヤモヤする。寝るのは諦めてリビングに下りることにした。静かに部屋を出て階段を下りる。そっと扉を開け、水を飲みながら食卓に着く。 

 月明かりに照らされた青白いリビング。いつもはロッシュさんとメイさんと悠とリルがいる賑やかな場所だが、いまは静寂に包まれている。ぽつんと腰掛け、考えるのはやはり明日のこと。もちろん悠には勝ってほしいが、それ以上に悠が傷つくのは・・・。もうあんな思いはしたくない・・・。

 そのまま一人でぼぅっと考える。いっそのこと、明日の決闘を中止にしてもらおうか。そしたら悠は戦わなくてすむ。そのかわり、前田が勇者になったら私が聖女にならなくちゃいけないけど・・・。前田がトーナメントに勝つ保証はない。村上くんや水野さんだって出るはずだ。彼らが勝つ可能性だって十分ある。それを信じても良いんじゃないだろうか。

 そう。無理に悠が戦う必要は無い。前田が勝つとは限らないじゃないか。それでももし万が一前田が勇者になったら・・・。そのときは、この国を出ればいい。そうだ。そうすればいいんだ。


 そのとき。リビングの扉がぎぃ、と音を立てて開いた。そしてそこからあらわれたのは


「「あ・・・」」


 悠だった。

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