77話 オーク討伐(2/2)
さあ、こっからだぞ。気合いを入れろ、俺。
ゆっくり深呼吸して気持ちを切り替える。
「グオオッ」
一方、にっくき敵をぶっとばしたオークは、しかしそれでも溜飲はさがらなかったようで、なおも突進してくる。
「くそっ」
痛む身体にむちを打って立ち上がる。本音を言えばもう少し間がほしかったが・・・。そんなこと言えるはずもない。
迫り来るオークは目の前だ。
シン、と世界が静かになる。色を失い、スローモーションの世界になる。
オークが拳を握って腕を引き絞る。右ストレートの構えだ。
ぐっ、と脚に力を入れ、前に飛び出す。
「グオオ」
しかしオークはそのまま右腕を振り抜く。俺を殺そうとする、パンチ。
ゆっくりと拳が目の前に迫ってくる。
今度はタイミングバッチリ。
殺意を込めた渾身の一撃。
だが。
俺に焦りはない。
大丈夫。当たらない。
討伐への最善手は。
前に進む勢いは殺さず、身体をひねってパンチを避ける。
目の前を拳が通り過ぎる。
そしてあらわになる、オークの左の胸。
今だっっっ!
貫けっっっ!!!
ズブシッッッッッッッ
「グモモモモモッッッッッ!?!?!?!?」
俺の剣がオークの左胸を深く突き貫いた。ブチ、グニュ、という感触。吹き出す血が身体にかかって生暖かい。そしてオークが断末魔の悲鳴を上げる。
「はっっ」
さらに深く押し込む。ぐしゃという手応え。それでもさらに押し込む。
ブチという手応え。それを超えるとすっと剣が入った。どうやら貫通したようだ。
「グ・・・・モ・・・オ・・」
オークの悲鳴は段々小さく、途切れ途切れになっていった。ピクピクと身体が震えた。と思うとだらんと力が抜け、俺に覆い被さるように力尽きた。
「はぁっはぁっ。ふぅ・・・」
どさっとオークを地面に転がす。胸から剣を抜く。ぶしゅ、と血があふれる。
しばらく観察してもピクリとも動かない。どうやら討伐に成功したようだ。
「よし・・・」
一人で感慨にふけっている。苦戦はしたが自力で討伐できた。自信になる。と、
「悠っ!」
遠くから結依が駆けてきた。気のせいだろうか。泣きそうな顔をしている。そんな結依は俺の近くまで来ると身体をひっつけんばかりに身を乗り出し、切羽詰まったような声で聞いてきた。
「大丈夫だった!?」
「あ、ああ。心配するな。この通りピンピンしてるよ」
「そう・・・」
俺が若干のけぞりながらも笑顔で言うと、結依はやっとほっとしたような顔になった。今回は吹っ飛ばされたりと絵面的にはかなり苦戦したからな。さすがに心配もするか。
「大丈夫か?ユウ?」
「わん!」
そこにロッシュさん、リルもやってきた。そしてメイさんも。やはり心配そうな顔だ。そんな顔をさせたことを申し訳なく感じると同時に、心配してくれたことは素直にうれしくも思う。
「ユウさん。背中を見せて下さい。治療しますから」
「メイさん。大丈夫ですよ」
メイさんがそう言ってくれるが、見た目ほどたいしたことではないと思うし、心配掛けたくないからそうアピールした。しかしメイさんは譲らない。そして結依も加勢する。
「悠。怪我を甘く見ちゃだめよ。治療してもらいなさい」
「そうですよ、ユウさん」
ロッシュさんもリルもそばでじっと見つめている。
「・・・分かりました。お願いします」
しかたなく俺は折れて治療をお願いすることにし、メイさんに背中を向けた。
「はい。$#)”#<@+$%」
メイさんが謎の呪文を唱えた。それと同時に背中がもわっと温かくなった。ヒリヒリと感じていた痛みが徐々に治まっていく。
「はい、ユウさん。どうですか?」
「メイさん。ありがとうございます。もう大丈夫です」
「痛みが出たらすぐに言ってくださいね。遠慮はダメですよ」
「はい。ありがとうございます」
治療が一段落した。背中の痛みはすっかり消え、コンディションはバッチリだ。いますぐにでももう一戦できる。そんな俺の状態を見透かしたようにロッシュさんが問うてきた。
「さてユウよ。どうする?まだ続けるかの?」
「はい。もちろん。まだまだいうきます」
オークを一体倒した。もちろん自信にはなった。ただ今日の目的は自信をつけることでも、ギルドの依頼をこなすことでもない。強くなることだ。だから一体如きで満足は出来ない。もっともっとやるぞ。そう決意を込めて拳を握り、ロッシュさんに答えた。
しかしメイさんはやんわりたしなめるように言う。
「ユウさん。あなた。せめて少し休憩してからでもいいんじゃない?」
「わん!」
「そうじゃの。少し休憩するか。焦りはよくないの」
メイさん、そしてリルの意見でロッシュさんも休憩しようと言った。そうなったら俺も従わざるを得ない。
「わ、わかりました・・・」
俺は焦っているんだろうか。いや、焦ってるな。速く強くならないといけない。時間は無い。もっと頑張らないと。前田には勝てない。
さあ。休憩したらもっといくぞ!
「・・・」




