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76話 オーク討伐(1/2)

「ロッシュさん。今日もよろしくお願いします!」


 俺はそう言って頭を下げた。昨日は草原でロッシュさんと訓練を行った。それもただの訓練ではない。ロッシュさんだけ身体能力強化魔法を使ってステータスを底上げし、俺は生身のまま模擬戦をした。当然俺は勝てない。どころかボコボコにされた。痣もいくつかか出来た。

 それでも今日も訓練がしたい。その理由は簡単。前田に勝つため。8日後に迫った前田との戦い。結依を守るためには勝たなければならない。だから疲れたとか身体が痛いとか言ってられない。


「ふむ。そうじゃのう・・・」


 朝食を食べながらロッシュさんが考え込んだ。どうしたら俺が強くなるか。どうしたら前田に勝てるか。それを考えてくれているんだろう。そんなロッシュさんには頭が上がらない。本当に有難い限りだ。


「よし。ではオーク討伐行こう」



 ということでギルドでオーク討伐の依頼を受け、アルスの森にやってきた。俺、結依、ロッシュさん、メイさん、そしてリル。目標はオーク1体の討伐。余裕があれば2~3体。オーク自体は今の俺でも倒せるだろうという強さらしい。

 ところで、オークというのは二足歩行の魔物である。その特徴は大きな身体。2メートルを超えるのも珍しくない。そしてひとたび拳を振るえば木々をなぎ倒し岩をも砕くと言われているパワーが最大の武器だ。

 今日は俺の特訓がメイン。なので俺一人でオークを討伐することになる。もし俺がやられそうになったらロッシュさんやリルが助太刀に入り、怪我をしたらメイさんが治してくれる。結依?結依はただの見学だ。ただ本人がどうしてもついてきたいって言ったから来ているだけで。


 さて、森を4人と1匹で歩いている。ゴブリンの生息域よりも奥。日の光も少なくなり、薄暗くなっている。魔物に見つからないように、そして気配を見逃さないように、こっそりと慎重に森を進んでいる。

 と、先頭のロッシュさんがぴたっと止まった。そして、伏せ、のサイン。俺たちはその場でしゃがみ、五感を研ぎ澄ませる。


 ガサ バキ


 森の奥からそんな音が聞こえる。ゴブリンではない。もっと重量感のある生き物の音だ。

 ロッシュさんを見る。目が合って、ロッシュさんが頷いた。つまり、これがオークの気配だ。


 ガサガサ


「グモ」


 森をふらふらと歩いている巨体が目に入った。俺たちには気付いていない。

 しかし、でかい。身長は2メートルほど。茶色の肌は肥満というより筋肉で肥大している感じがする。これを倒すのか。思ったより強そうだぞ。でもやらなきゃ。


「よし」


 そうひと言つぶやいて自分に気合いを入れる。

 またロッシュさんを見つめる。目が合い、頷いた頑張れと言われているようだ。

 俺はその場で立ち上がり、オークの前へ躍り出た。


「グモ?」


「行くぞっ」


 俺を見てきょとんとしたオーク。その隙を逃すわけにはいかない。剣を抜いて一気にオークとの距離を詰める。


「グモモモモっ!」


 それでようやく俺が敵だと認識したようだ。怒ったような雄叫びを上げ、俺を威嚇してきた。その声にのせられた殺気。肌を刺すようだ。だがひるむわけにはいかない。オークに接近し、剣を振り抜く。


「グオっ!」


 ブン、と振り抜いた俺の剣は空振りに終わった。オークが後ろに飛んで躱したのだ。


「むっ」


 素早い。パワーが武器の魔物だとはきいていたが・・・。スピードもある。油断できない相手だ。


「グオオオッ」


 今度はオークから迫ってきた。拳を握り、俺を殴り殺そうとしている。


「グモモ!」


「はっ」


 オークの一撃をかわし、距離を開ける。


「グオオオ」


 まだオークの攻撃は終わらない。雄叫びを上げて突進してくる。その殺気は肌を突き破り、心臓を握りつぶそうとするほど。とてつもない迫力だ。


「ふっ」


 突進を横に飛んで避ける。オークの拳が身体のすぐ横を通り、風が肌に届いた。ヒヤッとした。


 バキバキ


「なっ」


 勢い余ったオークがそのまま木にぶつかり、なんと木がいくつもなぎ倒された。真ん中からぽっきりと何本も木が折れている。恐ろしいパワーだ。思わずつばを飲む。


「グモモモッ」


 ちょこまかと逃げる俺にいらだつようにオークが叫んだ。と、折れたうちの一本の木を持ち上げた。両腕で抱えるような太さで、長さも2~3メートルはある木の幹だ。それをブンブンと振り回し、


「グモッ」


「やべっ」


 そのまま木を俺に向かって投げてきた。


「くっ」


 ブン。風を切って向かって来る木を、間一髪避ける。木はそのまま別の木に向かって飛んでいき、やがてグシャ、と音を立てて木っ端みじんになった。


「グオオ・・・」


 急いで態勢を立て直し、オークを見つめる。するとやつはもう一本折れた木を抱え、両手で振り回し、


「グモッ」


「うわっ」


 二本目を投擲してきた。ブンとうなりを上げて俺の目の前に迫ってくる木。それを身体をひねって躱す。


「グモモモッッ」


 オークがひときわ大きなうなり声を上げた。それはまっすぐ俺に殺意を届けてくる。恐怖に飲み込まれそうになる心を抑え、きっ、とオークを睨む。


「グモモ」


 オークが三度折れた木を掴んだ。それを両手で振り回す。また来るはずだ。投擲が。しかし。


「グモモッ」


「っ!」


 オークは木を担いだまま、俺に向かって突進してきた。そう。木を投げるのではなく、近接武器として使ってきた。憤怒の表情で俺を睨みながら丸太のような木を振り上げ、


「グググモ」


 たたきつけた。


 ダーーーン


 俺はその木を間一髪避けた。打ち付けた木が激しい音を響かせ、前が見えなくなるほどの土煙を巻き上げる。その隙にそっと距離を取る。


「グモモモモ!」


 オークの戦意はなお衰えることを知らない。雄叫びを上げた後、まっすぐ俺に向かって突進してくる。

 

 落ち着け、俺。避けてばかりでは勝てないぞ。


 隙を見つけろ。


 前に出ろ。


 世界がゆっくりになる。


 オークの動きが鮮明に見える。


 よし。


「グオオッ!」


「はっ」


 オークが迫ってくる。

 逆に、俺もオークへ向かって走る。


 向かってくる俺に驚いたのか、オークが目を見開くのが分かった。


「グオオ!」


 しかしそれでもオークは拳を振り上げる。


 だが、俺には当たらない。俺が前に出たことで、タイミングが遅れたな。


 そこが隙だ。


「はっ」


 すれ違いざま、オークのすねを切りつけた。


「グモッ!?」


 さすがに効いたようで、やつは苦悶の声を上げた。俺は切りつけたまま一気に距離を取る。一撃離脱だ。あのパワーで攻撃されたらひとたまりも無い。欲張らず粘り強く戦っていこう。

 そう思ったところで、


「グオオオオ!」


 今日一番の雄叫び。うっ、とひるみそうになる心を奮い立たせ、オークと対峙する。

 ダッ、とオークが巨体を揺らして俺へと向かってきた。今までより速い!


「グモモモ!」


 その大きな左手を握り、力をため、


 ブン


「うっっ」


 力のこもった拳。間一髪で避けた。パンチの風圧で前髪が揺れる。

 オークの目がキラッと光った。

 やぺっ。


「グモモッ!」


 今度は右手。迫り来る。


 っ!!!


 避けられねぇっ!


 ガキ


「ぐぅっ」

 

 身体に伝わる衝撃。

 オークの拳と俺の身体の間に剣を滑り込ませ、なんとか身体は守った。

 しかし勢いは殺しきれない。俺の身体は吹っ飛ばされ、ばきっ、と音を立てて木にぶつかった。


「いっつ・・・」


 背中に痛みが生じる。防具のおかげで大事には至っていないだろうが・・・。ああ。ジンジンする。


「悠っ!?」


 結依の叫び声が聞こえた。大丈夫、と答える代わりに拳を突き上げる。

 ロッシュさん。リルも。俺はまだ戦える。だからもうちょっと待っててくれ。

 

 さあ、こっからだぞ。気合いを入れろ、俺。

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