60話 リルとゴブリン討伐(2/2)
「よしっ!リルッ!行くぞッッ!」
「わんッ!」
「「「ギイギイ」」」
俺とリルはゴブリンの群れへ駆け出した。
「ガルルル」
まず、リルが手近なゴブリンへと襲いかかった。その速度に、ゴブリンはまったく反応できない。
「グルルッ!」
「ギュゥゥゥッ」
ゴブリンの首にかみついた。そいつは苦悶の声を上げ、まもなく崩れ落ちた。他のゴブリンはあっけにとられて、ろくに動けない。
「グルル!」
その隙に、リルはすぐに別のゴブリンへ襲いかかる。
「ギャッ」
今度は爪でゴブリンの喉をかききった。これで二体目。ここでようやくゴブリンも我に返り、
「ギイイイイ!」
「リル!」
リルの背後に、別のゴブリンが襲いかからんとする。俺は叫びながら、
「はっ!」
剣を振るい、そいつの首を跳ね飛ばした。これで三体目。残り七体。さぁ次はどいつだ。そう思ったところで
「ギギギィィィ!」
「きゃっ!」
「結依っ!」
ゴブリンが一体、結依に襲いかかるのが見えた。俺とリルが前に出た隙を狙ってきたのだ。
結依は解体用ナイフを不格好に構えながら、ゴブリンを迎えようとする。まずいっ!くそっっ!
「はぁっっ!」
全力で地面を蹴り、身体を前に押し出す。剣を構え、思いっきり振り下ろす。
「ギ!」
ゴブリンが結依に到達する前に、背後からゴブリンの首を跳ね飛ばした。
死体越しに結依の顔が見えた。その顔は強張っていた。
「結依!だいじょうぶーー」
「悠っ!うしろっ!」
俺の言葉を遮って、結依が叫んだ。結依の目線は俺の後ろを捉えている。俺も釣られて後ろを見ると。
「あっ」
俺の背後にゴブリンが。爪を振りかざして、俺に突き立てようとしている。くっ。まずい。防御できないーー
「グルルル!」
「ギィィッ」
グシャ。鈍い音がして、ゴブリンの首が割れ、血が噴き出した。
「リルッ!」
俺の背中に迫るゴブリンを、すんでのところでリルがかみ殺してくれた。
「助かった!リル!」
「わん!」
リルにお礼を言って、結依を背に剣を構える。リルもそばに寄ってきて、結依を挟むようにしてゴブリンに対峙した。俺、結依、リルで固まった状態だ。
一端の小康状態。状況を整理すると、ゴブリンを五体殺した。あと残っているのは五体。その五体は固まる俺たちを囲むように円になっている。
「さて、どうするか・・・」
小さく独りごちる。数で言えば圧倒的に不利。しかも囲まれている。一対一では負けはしないが、一体のゴブリンと戦っている間に背後から襲いかかられる危険がある。それでさっきは俺や結依が狙われたんだ。
どうするか。思案しながらゴブリンを睨む。すると、
「ギギギ」
「ギギギ」
「ギッ!」
ゴブリンたちが会話している。
と、思ったら、五体が一斉に襲いかかってきた!
「なっ」
五体が武器、爪を振りかざして迫ってくる。
固まっていてはダメだ。そう思い、俺は前に出た。
「せやぁっっ!」
「ギョッ!」
まずは、目の前の一体に剣を振るった。しかし、俺の一撃はゴブリンにひらりと躱される。
「ギギギ」
その隙に、別のゴブリンが横から襲ってくる。
「くっ!」
なんとか、身体をひねってその爪を避ける。
「ギギギギ」
「なっ!」
また別の方向から、三体目のゴブリンが襲ってきた。ボロボロのナイフを持った個体だ。そのナイフを俺に向かって突き出しながら襲いかかってくる。
キン
ナイフに剣を合わせて、防ぐ。
「ギョッ!」
剣とナイフを合わせ、硬直した俺に向かって、一体目のゴブリンがまた襲いかかってくる。鋭利な爪で俺の喉に狙いを定めて。
「やべっ」
俺を狙うゴブリンの爪。しかし俺は、つばぜり合いの状態だ。簡単には動けない。なんとか身体をひねり、避けようとする。しかし、避けられるか。いや、やられるかもーー
「”#&$%=)(!”%&」
「ギョッ!」
後ろから、水の玉が飛来した。それは、俺に襲いかかるゴブリンの顔に直撃した。そのゴブリンは身体をのけぞらせ、攻撃も中断された。
「悠っ!」
結依の魔法だ。ウオーターボールで俺を助けてくれた。そして、それを受けたゴブリンは隙だらけ!
「今だっ!」
「ギッ」
剣にぐっと力を込め、ゴブリンごとナイフを押し込む。ナイフを持ったゴブリンは俺の力に押され、一瞬よろめいた。
「はっ!」
いったん、そいつは無視する。そして、狙うは水の玉を受けたゴブリン!
ブン
「ギョッ」
グシャ、と首を跳ね飛ばす。そしてその勢いのまま、ナイフをもったゴブリンと対峙する。
「ギッ」
振り下ろしてきたナイフを、避ける。攻撃が空振りに終わったため、ゴブリンはよろめいた。
「はっっ!」
その隙だらけの身体に剣を振るう。グシャという鈍い感覚と共に、首が転げ落ちた。
「わん!」
背後からリルの声。振り返ると、飛び上がってゴブリンの首を爪で突き刺していた。俺を襲っていた三体のうちの最後の一体だ。
「リル・・・」
周りを見る。もう立っているゴブリンはいなかった。最後に俺たちを囲っていた五体も全て死体になっている。どうやら俺が三体を相手にしている間にリルが二体をさっさと片付け、さらに俺に加勢に来て最後の一体を倒してくれたようだ。
「わん!」
「倒したのか・・・」
10体のゴブリンを全て倒した。危ない場面も何度かあったが、結果的に俺も結依もリルも無傷だ。
「ええ・・・。そうね・・・」
そうつぶやく結依の顔はなんだか暗いように見えた。それは気になったが、それよりもまずやることがある。
「結依。まずゴブリン魔石を取ろう。で、すぐにここから離れるんだ。話はその後だ」
「そ、そうね」
これだけ多くの血が流れたなら、他の魔物が寄ってくるかもしれない。そもそもこの十体だって先に倒したゴブリンの血に集まったかもしれないのだ。だからさっさとこの場を立ち去りたい。
結依は慌ててナイフを取り出し、近くにある死体を解体し始めた、
「よし。俺も」
ゴブリンの解体はあまりやったことないが、これだけの数を結依に任せるのも悪い。覚束ない手つきでゴブリンの胴体を開き、内臓をあらわにして、魔石を取り出す。うーん。あまりいい気分ではない。嫌な手応えだし、黒い光景だし。そう思いながら、わたわたとゴブリンの魔石を回収する。
「ふぅ。出来たわ」
俺が三体のゴブリンを解体する間に、結依は残りの七体の魔石を回収したようだ。これで十体のゴブリンの魔石を回収できた。
それを受けて、急いで言う。
「よし。帰ろうか」
「そうね」
「わん!」
俺たちは足早に戦場を立ち去り、森の出口へ歩き出した。




