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58話 身体能力強化

 リルと出会って三日目。今日は、というか今日も草原へ行くことになった。しかし、今日はリルと遊ぶためではない。身体能力強化という魔法を試すためである。

 草原には俺、結依、ロッシュさん、メイさん、そしてリルというメンバーで来た。初めリルはまた遊んでもらえると思ってそわそわしていたが、俺と結依の訓練だと分かると座っておとなしくしてくれた。本当に頭がいい子だ。

 で、草原ではメイさんの説明が続いている。


「身体能力強化の魔法というのは、その名の通り、対象の身体能力、つまりステータスを底上げする魔法です。ユイさんがユウさんにこの魔法を掛ければ、ユウさんの身体能力が上がることになります」


 名前の通りの効果のようだ。足が速くなったり、力が強くなったりするんだろう。このような魔法は、なんとなく魔法の中でもオーソドックスなものというイメージはある。アニメでの話だけど。しかし名前が長い。強化魔法とかでいいんじゃないかな。


「うむ。身体能力強化の魔法を掛けられると、自分が思っている以上に動けるようになる。それ故に、慣れていないと軽く走っただけなのに勢い余って転んだりするなど、自分の身体を上手く扱えないことがしばしばある。じゃが、使いこなさせれば大きな武器になるじゃろう」


「はい」


 しかし、この強化魔法。効果はあるが、使いこなすのは簡単ではないらしい。この魔法は発動する結依だけでなく、発動される俺も頑張らなければならないようだ。いや、よく考えてみたら当然か。いきなり足が速くなったり、力が強くなったりしたら、戸惑うのも当然だ。


「ではユイさん。ユウさんに魔法を掛けてみて下さい」


「分かりました」


 メイさんに促され、結依は俺に向かって手をかざした。早速身体能力強化の魔法を俺に使うらしい。

 さて、どんな効果があるのだろうか、楽しみだ。ワクワクしながら待っていると、結依が呪文を唱え始めた。


「=&#’(!”*/」


「わっ」


 俺は思わず声を上げてしまった。というのも、俺の身体がポヤッと赤く光ったからだ。これが強化されているということか。珍しく、と言ったら失礼だが、結依は一回できっちり魔法を発動させたらしい。


「・・・これで俺の身体能力が上がったのか?」


 でも、俺の中では、今のところ、力がみなぎるとか、そういった身体の感覚はない。いつも通り、何も変化はない。本当に身体能力は強化されたのだろうか。疑問に思っていると、ロッシュさんが言った。


「ユウ。少し走ってみなさい」


「はい」


 確かに、こういうのは実際に動いてみないと分からないだろう。俺は元気よく返事をして、腰を落とす。足に力を入れて、右足で地面を強く蹴る。そしてぐっと駆け出す。


「おっっ!?」


 ビュン、と勢いよく身体が飛び出した。いつもと勢いが違う。その感覚に戸惑う。

 あまりの速さに、身体が前に倒れそうだ。慌てて左足で着地し、地面を蹴る。すぐに右足で着地し、また左足を地面に着ける。


「あ」


 と思っていると、足がもつれた。よろっとバランスを崩す。


「おっとっとっ」


 幸い、転びはしなかった。少しよろけただけで、立ち止まることが出来た。


「ふぅ」


 息を吐いて、落ち着かせる。身体能力強化。思ったよりも効果てきめんだった。足の速さが全然違った。これは使える。ただしーー


「どうじゃった?戸惑うじゃろ」


 そばにやってきたロッシュさんの言うとおりだ。使いこなせれば、の話だ。


「はい。自分の感覚と合わないというか・・・。ちょっとパニックになりました」


 今もよろけて転びかけた。多分10メートルも走れなかったんじゃないかな。自分のキャパシティ以上に速度が出て、身体を動かす感覚が追いついていない。例えるなら、坂道を全力で下っているような。

 使いこなせなければ、自滅するだけ。強敵と戦っているときによろけていたんじゃ、殺されるだけだ。


「ええ、そうですね。今のはステータスが1.5倍になる魔法です。強くなれるとはいえ、戸惑うことも多いでしょう。ユウさん、ユイさん。頑張ってものにしてくださいね」


「わん!」


 そして、リルが鳴いた。多分、頑張れ、と言ってくれた気がする。ありがとう、とリルをなでると、うれしそうに身体をこすりつけてきた。その温かい感触を暫し楽しむ。


「使いこなせれば格段に強くなる。練習あるのみじゃ」


 強くなるのは間違いない。力強く言うロッシュさんに頷く。絶対にものにたい。そうすればもっと強くなれる。

 そう決意したところで、クスクスという笑い声が聞こえた。驚いてその声の方を見ると、なんとメイさんが笑っていた。


「うふふ。あなた、えらそうに言ってますけど、あなたが初めてこの魔法を受けたとき、あなたはーー」


「おっと!メイ!それ以上はいかん!」


 笑いながら言うメイさんの言葉を、慌ててロッシュさんが遮る。ロッシュさんが珍しく焦っている。多分、恥ずかしい話なんだろう。慌てるロッシュさんの様子がおかしくて、俺は笑いながらメイさんに聞いた。


「メイさん。ロッシュさんはどうなったんですか?」


「ユウ!」


 ロッシュさんが制止しようとした。が、今度はメイさんも止まらない。ロッシュさんの黒歴史を暴露し始めた。


「あの人はねぇ。張り切りすぎて一歩目から木にぶつかっていったのよ。あれはおもしろかったわ」


「~~っ!!」


 ロッシュさんの顔がかぁっと赤くなった。非常に珍しい光景だ。それを見て俺も結依もますます笑顔になる。

 若かりしロッシュさんが勢い余って木に激突・・・。想像しただけでおもしろい。


「あっはっは。そんなことがあったんですね」


「なんというか・・・。かわいらしいです」


 俺と結依にもからかわれ、ロッシュさんは顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。それがおかしくて、メイさんも含めて三人でまた笑う。


「ふんっ。もういいじゃろ。ほれ、ユウ!ユイ!さっさと練習せんか!」


「「はーい」」


 すねたロッシュさんに促される。少なくとも木にはぶつからないようにしよう。もっとも、草原だからそもそもぶつかる木が無いのだが。そう思いながら俺と結依は練習に戻る。


 今日一日は、この強化魔法の訓練に費やした。途中草原で昼食を食べ、少しリルと戯れながら、また強化魔法の練習をして身体を慣らしていった。

 しかし、結論としては、今日一日ではなかなか思ったような動きは出来なかった。実戦で使うにはまだまだ練習が必要だ。


「ま、一日でできるもんじゃないからの。こんなもんじゃろう」


「はい・・・。木にぶつからなくてよかったです」


「ユウ!」


 あっはっは、と。四人と一匹で和やかに帰途についた。練習あるのみだ。頑張ろう。

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