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39話 ピクニック

 いろんなことがあったペット捜索。いや、ペット捜索より、クリスの登場の方が重大イベントだった。その翌日、朝食の席でロッシュさんがこんなことを言い出した。


「せっかくじゃし、王都の外の草原でピクニックでもするか」


「あら、いいですね」


「ピクニックですか?」


「うむ。王都の外の草原でな。今日は天気も良いし、昼食を外で食べるのも悪くないじゃろう」


「ええ。サンドイッチでも作って行きましょう」


「草原は広いからの。思いっきり走るトレーニングも出来るぞ」


 というわけで、草原でピクニックをすることになった。正直、あの草原は俺のお気に入りなので、楽しみだ。何と言っても景色が良いからな。

 メイさんのサンドイッチ作りをみんなで手伝って、王都の外へ出発する。


「うわ~」


 昨日来たばかりだが、やはり王都の外は、いつ来てもきれいな景色だ。特に今日は天気が良い。青々とした草原と雲一つ無い青空、さんさんと輝く太陽が美しい。


「さて、少し歩こうかの」


 ロッシュさんに言われて、大門から離れるように歩く。歩きながら、ロッシュさんが草原の奥に見える森を指さして説明してくれる。


「D級からはあの森に入る。森にいる様々な魔物を討伐するのが主な依頼になる」


「魔物って、動物とは違うんですよね?」


「うむ。魔物は、魔石を体内に有し、魔力を蓄えている。知能も高いので、手懐ければ人の役に立つように使役もできる。一方で、人を襲う危険なものもいる。人を襲う代表的な魔物は、鬼系のゴブリン、オーク、オーガなどじゃな。一方、犬系や鳥系の魔物は人に懐きやすく、ペットとして飼ったり、従魔として一緒に戦ったりすることもできる」


 昨日散歩させたグレイウルフも魔物だ。俺たちにもよく懐く、普通のペットだった。魔物だからといって、一概に討伐対象にはならないようだ。しかし、いずれは魔物を討伐しなければならない。そしてその先の魔王討伐へ。頑張らないと。


「さて、この辺りでよいかの」


「いいと思います」


 ロッシュさんが足を止めた。大門から少し離れたところなので、通行人の邪魔にもならないし、視線も気にならない。ここで俺たちは足を止め、持参したシートを敷く。

 シートの上に靴を脱いで座る。爽やかな風が吹き付け、心地よい。


「ふぅ」


「いいじゃろう」


「はい」


 俺が感嘆のため息をつくと、ロッシュさんが自慢げに言った。結依も同意し、メイさんはニコニコと笑っている。 

 しばらく全員無言だった。この素晴らしい景色を堪能していた。


 やや間を置いて、俺はロッシュさんに尋ねた。


「そう言えばロッシュさん。クリスっていう冒険者を知ってますか?」


「おお。A級冒険者のクリスか?知っておるぞ」


「実は昨日、そのクリスに絡まれたんですよ」


「ほう?彼は誰かに絡むような、乱暴な奴だとは思えんが・・・」


「いきなり結依に、一目惚れしましたとか言ってきたんです」


「ほぉ!そうか!あのクリスがなぁ」


「どういうことですか?」


 これまたずいぶん驚いたようなリアクションだったので、そのわけを尋ねた。


「いや、彼は真面目で謙虚な人柄で、民衆からの人気もあるんじゃが・・・。あまり人と関わろうとせんのじゃ。ずっと一人で依頼をこなしておった。それでA級に上がるのもたいしたものじゃが・・・。とにかく、彼が誰かと親しくしているのは見たことがないのう。じゃから、ユイに声を掛けてと聞いて驚いたんじゃ」


 確かに昨日会ったとき、クリスは単独でA級に上り詰めたと自慢していた。それはどうやら人と関わらないが故のようだ。そしてメイさんも同意するように頷いた。


「そうですね。むしろ意図的に人を避けているようにすら感じました。そんな彼がユイさんに声を掛けたってことは、よっぽどユイさんが魅力的だったんでしょうね」


 メイさんはそう言って、いたずらっぽく笑った。しかし結依は困ったような顔で、


「う、うーん。クリスさんは一目惚れしたって言ってくれましたけど。私はクリスさんに一目惚れはしなかったので・・・。とりあえずお誘いはお断りしたんですが」


「そうじゃろうな」


「でしょうね」


「え?」


 ロッシュさんとメイさんの知ったような相づちに、結依は戸惑ったような声を出した。俺も、何故ロッシュさんたちがそういう反応をするかわからなかった。クリスはかなり容姿端麗だから、結依がコロッと引っかかる可能性だってあるだろうに。もっとも、そうなったら、目を覚ませ、と結依をぶん殴るかもしれないが。少なくとも、あんなチャラチャラした奴、俺は認めん。


「私は、ああやってぐいぐい来られるのは・・・。あまり、好きでは・・・」


 結依の言葉は、段々尻すぼみになっていく。今まで言い寄ってきたのが強引で乱暴な男ばかりという、ある種のトラウマがあるのだろう。


「ふむ。クリスはああ見えて優しい奴じゃから、大丈夫じゃとは思うが・・・。ユイが嫌な思いをせんよう、おぬしが守ってやるんじゃぞ、ユウ」


 あんな変な絡み方をしてきたにもかかわらず、意外にクリスの人物評価は高い。だが、結依に強引に迫るなら俺は阻止する。


「はい」


「ごめん・・・」


「気にすんな」


 申し訳なさそうに小声で言う結依に、あえて明るく言った。まあ、幼なじみだから、これぐらいはサービスだ。


「さ、せっかくのでお昼にしましょう」


 雰囲気を盛り上げるように、メイさんが明るく言った。

 そして実際、草原で食べるサンドイッチは絶品だった。


 食後は草原で思い切り走った。持久力をつける訓練だそうだ。苦しいことは当然苦しいのだが、場所がよかったのか、走るのが気持ちよくも感じられた。

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