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23話 目標と方針

「いらっしゃい。あなたたちがユウさんとユイさんね」


 出てきたのは初老の女性だ。ロッシュさんと同じ年頃。金色の髪を後ろで緩く束ね、顔には優しげな微笑み。明るく親しみやすそうな雰囲気の女性だ。


「紹介しよう。わしの妻、メイじゃ」


「ロッシュの妻、メイです。主人がいつもお世話になっております」


 丁寧にお辞儀をして迎えてくれる、慌てて俺たちも自己紹介。


「は、初めまして。ユウ=タカシマです」


「ユイ=イチジョウです」


「はい。立ち話も何ですので、どうぞお上がりください」


「「お邪魔します」」


 メイさんに招かれ、俺たちはベイル邸へ入る。



「どうぞ」


「あ、どうも」


「ありがとうございます」


 一階の食卓に通された。テーブルに座り、メイさんが入れてくれたお茶をいただく。温かい紅茶だ。苦みがなくすっきりとしとした味わい。

 この家は外から見て大きいと感じたが、入ってみてもそう思う。この部屋は食卓の他に、奥にキッチンがあるし、カーペットとソファまであり、とても豪華だ。キッチンは大きいし、テーブル、ソファがあってもなお広々と感じる。


「話は聞いてますよ。異世界から召喚されたのに、能力が低くて居場所がないって」


「ええ、まあ・・・」


 紅茶を入れて席についたメイさんが開口一番、ズバッと切り込んできた。ともすれば嫌みな台詞だが、困ったような、同情したような表情だったので、悪気はないのだと思えた。


「大変だったでしょう。うちは大歓迎ですから、我が家だと思ってくつろいで下さいね」


 その証拠に、にっこり笑って歓迎してくれた。


「「ありがとうございます」」


 メイさんとは初対面だが、優しそうな人でよかった。今の笑顔でそう感じた。


「でも、主人はお二人のことを根性がある奴だと褒めていましたよ」


「え、そうなんですか?」


 メイさんの言葉に驚いてロッシュさんを見る。


「ふん」


 俺に見られたロッシュさんは、ぷいと顔をそらした。ツンデレかよ、と思ったが、素直にうれしかった。この世界に来てからずっと、無能としか言われてこなかったから、褒められたのはすごくうれしい。それも、ずっと近くで見てくれたロッシュさんだから、なおさら。


「ありがとうございます。ロッシュさん」


「うれしいです」


 俺と結依がお礼を言うと、ロッシュさんは照れたようにごほんと咳払いした。


「ま、まあ一度くらいはそんな話もしたかのう」


「何言ってるんですか。ユウさん、ユイさん。この人ったら、このところ毎日お二人の話ばっかりなんですよ。素直で礼儀正しくて真面目だって。それはもううれしそうに。二人の仲が良いのも見てて微笑ましいって」


「メイ!」


「うふふ」


 思わぬメイさんの暴露に、ロッシュさんが赤面している。こんなロッシュさんの姿は初めて見た。そして、ロッシュさんが俺たちのことをそんな風に思っててくれたことに驚いた。普段はビシバシ鬼のようなトレーニングばかりさせてくるだけだから、イメージが変わる。

 でも、俺たちの仲が良いっていうのだけ引っかかる。そんなことはない。見てて微笑ましいこともしていないはずだ。


「メイさん。別に僕たちはそんなに仲が良いわけではないですよ」


「そうです。ケンカばっかりの、腐れ縁です」


「あら、そうなの?私はてっきり恋人なのかと」


「「いえいえ、そんなわけありません」」


 まさか、と俺と結依が同時に否定する。にもかかわらずメイさんは首をかしげた。


「だって、訓練中はお互いを励まし合ったり」


 それはマウントを取ったり煽ってるだけです。


「どちらかが疲れ果てて立てないときは手を貸してあげたり」


 それは上から目線で施しを与えてるだけです。


「ユウさんが模擬戦で倒れたときはユイさんがいち早く割って入ったり」


 え?それは知らない。


「そんな風に聞いて、とても仲良しなんだと思いました。そんなお二人と一緒に住めるなんて、うれしいわ」


 わかった。メイさんって天然なんだ。ロッシュさんから聞いた俺たちの行動を、勝手に好意的に解釈してるんだ。というか、それより気になることがあった。


「結依。お前、俺が気絶したとき、割って入ったのか!?ライオスがすぐ負けを宣告したんじゃないのか!?」


 以前結依は、俺が気絶した後すぐにライオスが俺の負けを宣告したと言っていた。しかし割って入る、という口ぶりだと、負けが宣告される前に俺と前田の間に立ち塞がったような言い方だ。どういうことだ。もしそうならちょっと言い聞かせないといけない。


「ぅ、そ、そうよ!割り込んではいないわ!負けが宣告されたあとにすぐ駆け寄ってあげたのよ!文句ある!?」


「いや、そうだよな。模擬戦中に割り込むなんてしないよな。そんなことしてたら怒ってたぞ」


 やはり俺の考えすぎか、と一安心。しかし俺の言葉を聞いた結依は何故か怒ったような表情になった。


「な、なんでよ!一刻を争うじゃない!」


「危ないだろ!もし前田の攻撃が当たったら、怪我するんだぞ」


「っ!」


 前田のパワーをなめてはいけない。前田は結依に惚れているので、結依に攻撃はしないと思うが、万が一がある。間違って当たってしまったらと思うとぞっとする。まあ実際は割り込んでいないようなので安心した。

 ふとメイさんを見ると、にまにま笑っている。笑う要素はあっただろうか。普通にケンカしてただけなのに。


「こういうことね」


「・・・そういうことじゃ」


 何が!?

 おほん。ロッシュさんが咳払い。


「さて、今後についてじゃが」


 少し真剣な口調になってロッシュさんが語り始めた。俺も結依もメイさんも大人しく話を聞く姿勢になる。


「改めて確認じゃ。大前提として、おぬしらは元の世界に帰りたいか?」


「「はい」」


 俺と結依は同時に力強く頷いた。無理矢理連れてこられたこの世界。特に愛着はない。そして日本にいる家族に会いたい。元の平和な日常が恋しい。両親がいて、村上、柴田さんがいて、料理がうまくて、野球もあって、そして、まあ、結依もいる。そんな日常が。


「今のところ、元の世界へ帰る手段は三つ。一つは、他の召喚者達が魔王を倒すのを待ち、帰還するときに便乗させてもらう。二つ目は、わしら独自で魔王の魔石が必要ないぐらい効率的な帰還用魔法を開発する。三つ目は、わしらが魔王を倒し、その魔石を提供することで帰還用魔法を発動してもらう。こんなところじゃろう」


「一つ目は怪しいと思うわ。あなたたちを邪険に扱っていた人たちが、何も役に立たなかったあなたたちを一緒に帰してくれるかしら」


 メイさんが辛辣な意見を述べた。確かに、もし前田が魔王を討伐したら、結依はともかく俺も一緒に帰ることは前田が拒否しそうな予感がする。そして、功労者の言葉はおそらく聞き入れられるだろう。つまり、前田が魔王を討伐したら、俺は元の世界に帰れないかもしれない。


「二つ目も、やってみるけど難しいと思います」


 さらに、メイさんが言葉を重ねる。俺は魔法のことはさっぱり分からないが、あまり現実的ではないらしい。となると、確実に帰還するためには三つ目。


「おぬしらが自ら魔王を倒すこと。それが今考えられるもっとも確実な帰還方法じゃ」


「「・・・」」


 魔王討伐。帰還するためには必須。しかも前田達に先んじて。無能と呼ばれた俺たちが、できるだろうか。


「やります」


「私も」


 でもやるしかない。そうしないと帰れないなら、やるしかない。やってやる。


「だから、俺たちを強くしてください」


 俺と、そして結依も頭を下げる。

 ややあって、ロッシュさんがわかった、と言った。


「ビシバシいくぞ。わしがユウに剣術を、メイがユイに魔法を教える。それに加え、冒険者としても活動していこうと思う」


 ビシバシ。いや、怖じ気付いていられない。やるんだ。当面の目標は決まった。前田より先に、魔王を倒す。


「ロッシュさん。冒険者とは?」


 冒険者。定番だ。俺はピンとくるものがあったが、しかし結依はなんのことか分からないようで、ロッシュさんに聞いた。


「冒険者とは、様々な依頼をこなす何でも屋のような存在じゃ。薬草採取、街の清掃、ペットの捜索、魔物討伐まで・・・。もちろん中には危険な依頼もあるが、魔物討伐も一種の訓練になるじゃろう」


 魔物。能力測定後の座学で教わった。普通の動物とは違い、魔力を帯び、知能が高い生き物。身体に魔石と呼ばれる物質を宿している。人間の従魔になるものもいれば、人を襲う危険なものもいる。そして、魔王軍幹部は魔物を操り、手足としているとも。

 魔物討伐は冒険者の基本だ。そしてそれができなければ魔王軍幹部も、魔王も倒せない。思わずぐっと拳を握る。


「早速昼食後、冒険者ギルドへ行こう。ああ、冒険者ギルドとは、冒険者と依頼人をつなぐ仲立ちのような組織じゃ。ここに登録せんと依頼を受けられんからの」


「ええ。私と主人も、近衛隊を引退した後、暇つぶしに冒険者活動をしているの。いいお小遣い稼ぎになるわよ?」


 いたずらっぽく笑うメイさんに、ふっと力が抜けるのを感じた。狙ってやったのかは分からないが、少し落ち着くことができた。


「さて、では昼食まで時間があることだし、この家の案内でもしましょうか」


 メイさんとロッシュさんに、ベイル邸を案内してもらった。一階はリビングと水回り、二階は物置部屋とロッシュさんの部屋、メイさんの部屋があり、なんと俺と結依の個室もそれぞれ用意してくれたようだ。元々部屋が余っていたところに、ベッドなども用意してくれたそうだ。本当に頭が上がらない。


「ざっとこんなもんじゃ。どうじゃ?」


 ロッシュさんに俺の部屋を紹介してもらいながら、そう聞かれた。


「至れり尽くせりです。ありがとうございます」


「おぬしと結依、同部屋がよかったかの?」


「い、いえ!いらないです!」


「ほっほ。まあまずは同居で十分ということじゃな」


「どうきょ・・・!?」


 ・・・たしかに、言われてみれば同居か?ん?いやいや。俺と結依二人っきりじゃないし。それぞれの部屋だってあるし。応接棟での暮らしと同じだ。そう。だから変に意識することはないのだ。




☆☆☆




「いらっしゃい。あなたたちがユウさんとユイさんね」


 私たちが玄関に向かって歩いていると、扉が開いて初老の女性が出てきた。ロッシュさんと同じ年頃、60代くらいだろうか。金色の髪を後ろで緩く束ね、優しく微笑んでいる。明るく親しみやすそうな雰囲気の方だ。


「紹介しよう。わしの妻、メイじゃ」


「ロッシュの妻、メイです。主人がいつもお世話になっております」


「は、初めまして。ユウ=タカシマです」


「ユイ=イチジョウです」


「はい。立ち話も何ですので、どうぞお上がりください」


「「お邪魔します」」


 メイさんに招かれ、私たちはベイル邸へ入る。



「どうぞ」


「あ、どうも」


「ありがとうございます」


 一階のダイニングスペースに通された。テーブルに座り、メイさんが入れてくれた紅茶をいただく。熱っ。でも、香りが豊かですっきりとした味わいだ。

 奥にキッチン、そして4人掛けのテーブルがあるダイニング、さらにはカーペットとソファが置かれたリビングスペースがある部屋だ。ソファも2人掛けのものが二つ。デザインは同じだが、片方が古く、もう片方が新しい感じがするので、私たちのために新しく買ってくれたのだろうか。だとしたらとてもありがたく、申し訳なく感じる。


「話は聞いてますよ。異世界から召喚されたのに、能力が低くて居場所がないって」


「ええ、まあ・・・」


 直球な質問に、悠が答えづらそうに返事をする。ともすれば嫌みな感じに捉えかねないメイさんの質問だが、悲しそうな顔が悪意がないことを教えてくれる。


「大変だったでしょう。うちは大歓迎ですから、我が家だと思ってくつろいで下さいね」


 メイさんは、にっこり笑って歓迎してくれた。


「「ありがとうございます」」


 彼女とは初対面だが、優しそうな人らしい。ほっとした。


「でも主人は、お二人のことを根性がある奴だと褒めていましたよ」


「え、そうなんですか?」


 悠がメイさんの言葉に驚いてロッシュさんを見た。


「ふん」


 悠に見られたロッシュさんは、ぷいと顔をそらした。でも、悠はとてもうれしそうだ。無理もない。今まで散々無能と罵られ、挙げ句前田に散々に打ち負かされたのだから。初めて、それも指導してくれているロッシュさんに褒められあら、うれしくなるのは当然だ。

 もちろん、私もうれしい。私だって頑張ってきたのだから。


「ありがとうございます。ロッシュさん」


「うれしいです」


 悠と私がお礼を言うと、ロッシュさんは照れたようにごほんと咳払いした。


「ま、まあ一度くらいそんな話もしたかのう」


「何言ってるんですか。ユウさん、ユイさん。この人ったら、このところ毎日お二人の話ばっかりなんですよ。素直で礼儀正しくて真面目だって。それはもううれしそうに。二人の仲が良いのも見てて微笑ましいって」


「メイ!」


「うふふ」


 思わぬメイさんの暴露に、ロッシュさんが赤面している。珍しい姿だ。普段のトレーニングでは激しく檄を飛ばすことがほとんどだから。 

 でも、私たちの仲が良いっていうのだけ引っかかる。そんなことはない。見てて微笑ましいこともしていないはずだ。


「メイさん。別に僕たちはそんなに仲が良いわけではないですよ」


「そうです。ケンカばっかりの、腐れ縁です」


「あら、そうなの?私はてっきり恋人なのかと」


「「いえいえ、そんなわけありません」」


 私と悠が同時に否定する。にもかかわらずメイさんは首をかしげた。


「だって、訓練中はお互いを励まし合ったり」


 それはへたった相手を見下しているだけです。


「どちらかが疲れ果てて立てないときは手を貸してあげたり」


 それは余裕ぶってマウントを取っているだけです。


「ユウさんが模擬戦で倒れたときはユイさんがいち早く割って入ったり」


 え?なんで知ってるの!?ロッシュさんもその場にいなかったのに!


「そんな風に聞いて、とても仲良しなんだと思いました。そんなお二人と一緒に住めるなんて、うれしいわ」


 メイさんって天然なのかしら。そこまで好意的に解釈されたらもうどうしようもない。というか、私が割って入ったって何で知ってるの!?やばい。悠に知られたらからかわれる!ごまかさなきゃ!


「結依。お前、俺が気絶したとき、割って入ったのか!?ライオスがすぐ負けを宣告したんじゃないのか!?」


 案の定、悠が食いついてきた。


「ぅ、そ、そうよ!割り込んではいないわ!負けが宣告されたあとにすぐ駆け寄ってあげたのよ!文句ある!?」


「いや、そうだよな。模擬戦中に割り込むなんてしないよな。そんなことしてたら怒ってたぞ」


「な、なんでよ!一刻を争うじゃない!」


 あのときの悠がなすすべなく殴られるだけだった。そして。頭部への攻撃。明らかにまずいと思った。だから割って入った。それで怒られる筋合いはないはずだ。それなのに悠はなぜ怒ってるの?


「危ないだろ!もし前田の攻撃が当たったら、怪我するんだぞ」


「っ!」


 っっっとにこいつは!自分を差し置いて何言ってるんだか!あなたの方が怪我してるでしょ!!


「こういうことね」


「・・・そういうことじゃ」


 メイさんがにまにま笑っている。ただケンカしてるだけなのに、何故笑うのかしら。

 おほん。ロッシュさんが咳払い。空気を変える。


「さて、今後についてじゃが」


 少し真剣な口調になってロッシュさんが語り始めた。私たちもメイさんもおとなしく話を聞く姿勢になる。


「改めて確認じゃ。大前提として、おぬしらは元の世界に帰りたいか?」


「「はい」」


 私と悠は同時に肯定した。一刻も早く帰りたい。そして日本にいる家族に会いたい。元の平和な日常に戻りたい。両親がいて、村上くん、柴田さんがいて、食べ物がおいしくて、野球もあって、そして、まあ、悠もいる。そんな日常が。


「今のところ、元の世界へ帰る手段は三つ。一つは、他の召喚者達が魔王を倒すのを待ち、帰還するときに便乗させてもらう。二つ目は、わしら独自で魔王の魔石が必要ないぐらい効率的な帰還用魔法を開発する。三つ目は、わしらが魔王を倒し、その魔石を提供することで帰還用魔法を発動してもらう。こんなところじゃろう」


「一つ目は怪しいと思うわ。あなたたちを邪険に扱っていた人たちが、何も役に立たなかったあなたたちを一緒に返してくれるかしら」


 メイさんが辛辣な意見を述べた。確かに、もし前田が魔王を討伐したら、悠も一緒に帰ることは前田が拒否しそうな予感がする。それはだめだ。悠だけ置いて帰るのは、さすがに忍びない。


「二つ目も、やってみるけど難しいと思います」


 さらに、メイさんが言葉を重ねる。私は魔法のことはまだ教わっていないので分からないが、あまり現実的ではないらしい。となると、確実に帰還するためには三つ目だ。


「おぬしらが自ら魔王を倒すこと。それが今考えられるもっとも確実な帰還方法じゃ」


「「・・・」」


 魔王討伐。帰還するためには必須。しかも前田達に先んじて。無能と呼ばれた私たちが、できるだろうか。


「やります」


「私も」


 でもやるしかない。そうしないと帰れないなら、やるしかない。やってやる。


「だから、俺たちを強くしてください」


 私と悠は頭を下げる。

 ややあって、ロッシュさんがわかった、と言った。


「ビシバシいくぞ。わしがユウに剣術を、メイがユイに魔法を教える。それに加え、冒険者としても活動していこうと思う」


 ありがたい。ロッシュさんとメイさんが訓練をつけてくれる。前田より先に魔王を倒す。この目標のために。

 でも、聞き慣れない単語があった。


「ロッシュさん。冒険者とは?」


 冒険者。なにをするんだろう。ロッシュさんに問うと、一つ頷いて教えてくれた。


「冒険者とは、様々な依頼をこなす何でも屋のような存在じゃ。薬草採取、街の清掃、ペットの捜索、魔物討伐まで・・・。もちろん中には危険な依頼もあるが、魔物討伐も一種の訓練になるじゃろう」


 魔物。能力測定後の座学で教わった。普通の動物とは違い、魔石と呼ばれる器官を有し、魔力を蓄えている。知能も高いので、手懐ければ人の役に立つように使役できる。一方で、人を襲う危険なものもいる。そして、魔王軍は魔物を強制的に使役し、兵としていると。

 そんなものを、私たちが討伐できるのだろうか。


「早速昼食後、冒険者ギルドへ行こう。ああ、冒険者ギルドとは、冒険者と依頼人をつなぐ仲立ちのような組織じゃ。ここに登録せんと依頼を受けられんからの」


「ええ。私と主人も、近衛隊を引退した後、暇つぶしに冒険者活動をしているの。いいお小遣い稼ぎになるわよ?」


 いたずらっぽく笑うメイさんに、少し肩の力が抜けた。この人達と一緒ならば、大丈夫だろうと。そう思わせる魅力があった。


「さて、では昼食まで時間があることだし、この家の案内でもしましょうか」


 メイさんとロッシュさんに、ベイル邸を案内してもらった。一階はリビングとお風呂、トイレなどの水回りがあった。玄関横の階段を上がって二階は物置部屋とロッシュさんの部屋、メイさんの部屋があり、なんと私と悠の個室もそれぞれ用意してくれたようだ。元々部屋が余っていたところに、ベッド、机、タンスなども用意してくれたそうだ。本当に頭が上がらない。


「さて、どう?最低限ものはそろえたつもりなんだけど。足りないものがあったら遠慮なくいってくださいね」


 メイさんに私の個室を紹介してもらいながら、そう聞かれた。ベッドに椅子机、タンス。広さは日本の私の部屋と同じくらい。これで文句を言ったらバチが当たりそうだ。


「わざわざすみません。ありがとうございます」


「いえいえ。でも、ユウさんと同じ部屋がよかったかしら?」


「え!?いえ!結構です!」


「そう?まあ同じ屋根の下で暮らせるものね。それだけで満足かしら」


「へっ!?」


 そんな、同居みたいな言い方・・・。いや、確かに同居か。でも、それを言い出したら、応接棟にいたとしても同じ屋根の下で暮らしていることになるし。うん。考えすぎるのはよくない。今までと同じだ。そう。だから変に意識することはないのだ。

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