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第8話 求婚の条件

「やあ、ラクナマリア」

「真昼間に現れるとはいい度胸だ」


ラクナマリアの理解が得られたと聞いたドラブフォルトは早速会いに行ったが、態度は相変わらず厳しかった。


「一番面倒な事を先に済ませてしまおうかと思って」

「子供をダシに使うような奴は好かぬ」

「貢物は気に入って貰えたかな?」

「知らぬ」

「何か一つくらいは気に入ってくれたんだろう?」

「知らぬというに」


くどさにラクナマリアが苛立ちを露わにし始める。


「わたくしとの契約を違える気ではあるまいな」

「そんな事はしない。君の願いは私の悲願とも共通している。だが強引に実行すれば今度こそ同胞一千万が死ぬ。前回の市民戦争に便乗した帝国も今は悔いを見せているが、もし正面切って身分制廃止、共和制社会への転換を訴えれば一千万くらい簡単に絶滅に追い込まれる。前回の市民戦争はこちらの内紛につけ込んで自分達の生存が脅かされたわけでもないのに間接的に関与したから帝国は悔いているだけだ。もうしばらく猶予が欲しい」

「時間はいくらでもある。好きにするが良い」


ドラブフォルトは頭を下げ、謝意を示した。


「今後も俗世の客を受け付けるつもりなら門番や侍女くらい置いた方が良くは無いか?」

「面倒だ。いらぬ」

「昼間に図書館に現れたそうだが、護衛は・・・?」

「不要だ」

「そうかもしれないが、手加減が出来ないと困るだろう。クラウスも手加減出来ずに昔面倒を起こしてしまった」

「む・・・」


ラクナマリアは少し思案して、やはり面倒だと考えた。


「練習台もいないだろう?」

「うるさい。お前を的にしても良いのだぞ」


司書に聞いた時はかなり不味い事になったと思ったが、口調ほどには怒っていないか、既に怒りは過ぎ去ったと判断された。怒らせてもまだ誰も傷つけてない。


「またご機嫌伺いに来るよ」

「来なくてよい」

「子供達には朝食まで用意してまたおいでなんていったくせに」

「用があるならの話だ。ご機嫌伺いなど無用」

「用があっても一晩泊めたりしてはいけないよ」

「夜遅くにお前が寄こしたのであろうが!」


今度は本気で怒られて門外まで吹き飛ばされた。


 ◇◆◇


 クラウス達はその後もしばしばラクナマリアの館を訪れた。

良い果物が手に入った時は持参して一曲おねだりなどもした。


ある日クラウスはひとつ訊ねた。


「父上とは身分制社会を終わらせる事を約束されたのですよね」

「詳細はいえぬ」


とはいえ、これまでの話から想像は出来る。


「父の代では奴隷制を終わらせるのは難しいかと思いますが」

「泣き言は聞かぬ」

「もし無理だった場合、ラクナマリア様はこの国を去られるのですか?」

「うむ。次の西方選帝侯というのだったか?西方連合の王の下に行く事になろう」

「嫁がれるのですか?」

「嫁ぐ?」

「結婚されたりなさらないのですか?父はそのつもりがないようですが、いつまでもという訳にはいかないでしょう?」

「前の契約が終わるまで新たな契約は出来ぬ」

「つまり結婚はされない、と」


うむ、とラクナマリアは頷いた。


「では契約が果たされた場合は?」

「その時、求められるのであれば嫁いでもよい」

「でも選挙ですからどんなお爺さんか分かりませんよ」

「構わぬ。年寄りだろうと人外であろうと同性だろうと契約は果される」

「同性でも!?」

「選挙に性別の差別があるのか?」

「い、いえ」


無意識に男性が王になるものと考えていたが女王もいるので西方選帝侯を選ぶ選挙に性別の規定は無い。規定上は女性もなれる。


「じゃあ、俺でもいいのか?」


前はストライキで休んでいたレドヴィルが訊ねた。


「この馬鹿たれ!」「無礼者!」「あほ!」「身の程知らず!」


男子全員で袋叩きにした。

ラクナマリアは気分を害さずにあっはっはと笑い、口元を扇で隠した。


「無論良いとも、立派な大人になるのだな。アフドも」

「は、はい」

「奴隷もアリなの?」

「その時には奴隷などあるまい」


夜間滞在許可は下りなくなったのでもう食事まで一緒に出来なくなくなったが、いつ訪れても鷹揚に迎えてくれるラクナマリアが好きになった少年達は打倒帝国の意思を固くした。


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