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第40話 フォロー②

「事情は伺いました。ドナ様、メテオラ様。後はこちらが引き継ぎます。どうぞ自国の宿舎へお戻りください。父君達には内緒にしておきますから」


エスペラス王の宮廷魔術師がやってくるとさすがに二人はそそくさと引き下がった。


「ホスタ、カラン。君達も」

「あの、でもラクナマリア様の具合が」

「ええ、魔力が暴走し始めています。大分世間になれてきたといってもこの調子ですからね。彼女の事を思いやってくれたのでしょうが、構い過ぎないように」


異変は感じていたが、魔力の事はわからないホスタ達は指示に従うしかなかった。

そして二人きりになる。


 ◇◆◇


「君がこうも不安定なのに、マーはどうしたのですか?」


クズネツォフがラクナマリアに問いながら注射の準備をして腕を出させた。

ラクナマリアは大人しく腕を差し出す。


「精霊に恋愛の事はわからぬ」

「ほう恋愛をしていたのですか」

「しておらぬ」


鎮静剤の注射を打ち、ラクナマリアの力を安定させた。


「何か難しい事でもありましたか?」

「別に。結婚させたいなら勝手にさせればよいのだ。いちいち意思を問うような真似をするな」

「君が本気で嫌がる事を無理強いするつもりはありませんよ。お互い納得ずくが前提の関係の筈です」

「それはそうだが」

「彼が嫌いですか?」

「別に何とも思わぬ。強制された方が面倒がない。実験されて観察されているようで気に食わぬ」


なるほど、と魔術師は頷く。


「意思を尊重するというのも難しいものですね。何か望みはありますか?」

「私には無いが・・・皆はどうしているの?会ってもいい?」

「駄目です。君だって本当は会うのは怖いでしょうに。君はこちらで頑張らなくてはね。出来ますよね?」

「はい」

「友達なら”マー”がいるでしょう?同胞や子供達はあなたのおかげで王に保護されて元気でやっておりますよ」

「うん」

「体は問題ありませんか?怪我をしたと聞いて驚きましたよ」

「大丈夫です」

「でも念のため、数本打っておきましょうね」

「はい」


血を失ってまだ顔色が悪かったので少しばかり栄養を与えた。


「体を大事にしてくださいね。最近は外に出る機会も多いし護衛をつけましょうか」

「心配・・・いらぬ」

「じゃあ、今度はもっとうまく身を守って下さい。出来ますね?」

「はい、先生」


診療用に持ってきた器具をしまい、クズネツォフは立ち上がる。


「嫌なら結婚はしなくて済むよう陛下に伝えます。どうしますか?」

「別に嫌ではありません」

「ではこれまで通り自然に応対してあげてください」

「はい、先生」


 ◇◆◇


 クズネツォフが退室するとホスタが待っていた。カランは既に王子の元へ帰っている。


「落ち着きましたがしばらく寝かせておくように」

「承知しました」

「よく仕えてくれている褒美に、陛下があなたの借金を帳消しにして手配書も取り下げさせました。貴方はもう完全に自由です」

「有難うございます。でもラクナマリア様のお側を離れるつもりはありません」

「でも、誰かに探されているかもしれないと思うと、首に縄をつけられている気分になりませんか?」

「確かにそうですね。ラクナマリア様にご迷惑をおかけせずに済みます。有難うございました」

「ええ」


ホスタが部屋に戻り、目が覚めたラクナマリアに完全に自由になった事を報告すると我が身のように喜んでくれた。


 ◇◆◇


 帰路の船の中でラクナマリアは無言だった。

馬車に乗りこむとき、きまずいクラウスは別にしようかと思ったがそこで立ち止まった。


「もうよい。居心地が悪いであろうが。さっさと乗れ」

「は、はい!」


捨てられた子犬のようだったクラウスは尻尾を振るようにして喜び勇み乗りこんでいく。

馬車の中はまたメアリーとホスタが同乗しているが、事情は知っているので気まずいものの気にせず話しかけた。


「もうお許し頂けたのでしょうか」

「”マー”がいうには私が誘惑したそうだからな」

「精霊でしたっけ」

「うむ」

「不愉快だが、私がしたことならば仕方ない。勝手に楽しんでおればよい」


許してはくれたが許してくれていない。


「いえ、こちらのラクナマリア様の承諾が取れるまでもう体に触れたりはしません」

「それはどうかしら」


さっと切り替わってクラウスとメアリーの間に無理やり割り込んで座る。


「ほら触れた」


そして頬を寄せる。

クラウスは扉を開け馬車から飛び降りようとした。


「ちょっと!」


揶揄からかったラクナマリアの方が焦る。


「ご自分を大切になさってください」

「はいはい」

「ご自分を嫌いになりたくないでしょう?」

「わかりましたってば。でも私の事を落したからってこのまま放置していると嫌いになっちゃうかも」


ラクナマリアが元の席に戻り性格の方も切り替わる。


「何をしておる」

「外の空気が吸いたくて」

「そうか、危ないぞ」

「大変ねえ」


ホスタも少し同情した。

帰り道はもう乗馬に誘っても断られて、ほぼ口もきいて貰えなかった。夜の方の人格はフォローを入れてくれる気はないらしく、あくまでも自分の力で口説けということらしかった。


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