表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
33/57

第33話 鎮魂の儀式②

「ラクナマリア様!」


壁に打ち付けられ朦朧としていたホスタが我に返った時、ラクナマリアの首に亡者が噛みついていた。


「問題ない」


ラクナマリアはあやす様に亡者の肩を叩いた。


「よしよし」


亡者はごくごくと血を飲む。


「こいつ!」


ホスタは花瓶を手に取って頭に叩きつけようとする。


「わたくしは問題ないといった」


ラクナマリアの冷静な声に動きが止まる。


「さあ、喉が潤ったのならもうおやすみ。家族の所に行かなくてはね」


亡者は満足して眠りにつき、その場に倒れた。


「予定より早くなったけれど、始めましょうか。ホスタは扉を固く閉じて待つように。私が呼びかけても開けては駄目」

「え、でも」

「ああ、死体と一緒じゃ嫌よね。メアリーと待ってなさい」

「そういう意味ではなくラクナマリア様はお怪我をなさっているではありませんか」

「このくらい大丈夫」

「でも凄い出血です」

「そうね。じゃあ後で貴女の血を貰ってもいい?」

「え?はい、お役に立てるのなら」

「じゃあ、メアリーの所へ行って大人しくしていなさい」


ラクナマリアが廊下に出ると、クラウス達も慌ててやってきた。


「ラクナマリア様、そのお怪我は?亡者が?」


逆に問う。


「外に出るなといわれなかった?」

「でも、亡者が暴れているんです!」

「だからなに?」

「倒さないと。僕らは剣の扱い方を習ってますし民を守らないといけません。それよりお怪我が」

「亡者というのは倒すとかそういう存在ではありませんよ。言われた通り屋内にいなさい。これは私の仕事です。初めからね」


どこからか悲鳴が聞こえてくる。

問答をしている時間はない。


「ラクナマリア様にはどうにか出来るのかもしれませんが、酷く目立つのでは?」

「嵐で誤魔化せるでしょう。それぞれ役割があるのだから余計なことはしないように」


ラクナマリアはバルコニーから外に出て空へと舞いあがっていく。

クラウス達が追いかけられるのはそこまでだった。


嵐に合わせて精霊達が奏でているのだろうか。

どこからともなく激しい曲が響き渡る。

暴れる亡者達の注意を引くためかいつもと違ってラクナマリアの歌声も天に向かって絶叫するかのように声を引き絞っていた。亡者達はその声に切なさと天へ込められた呪いを感じとった。雷鳴が轟き、稲光で照らされた亡者達は暴れるのをやめて視線が空へと向く。


次第に亡者の魂を月へと導くようにラクナマリアの歌声も穏やかになっていった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブックマーク、ご感想頂けると幸いです

小説家になろうに「いいね」機能が実装されました。
感想書いたりするのはちょっと億劫だな~という方もなんらかのリアクション取っていただけると作者の励みになりますのでよろしくお願いします。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ