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第26話 鎮魂旅行

 世間では交際が開始の噂が流れ始めた事になっているので素っ気ない応対しかされずともクラウスはラクナマリアの所に通っている。

血税なので無駄にお土産を持っていく事も出来ない。

余計なことをしている暇があったらやるべきことをやれ、と怒られるので長居も出来ない。


「そんなわけで最近は各地の視察をしています。スラムの視察もしましたが、平民間の格差が想像以上に激しくて驚きました」

「ふむ、それでどうしたい?」

「王制を廃しても平民の中で支配者と被支配者が出来てしまっては意味がありません」

「そうだな」


あまりラクナマリアの心に響いた様子は無い。


「闘技場にも行きました。奴隷の剣闘士と獣人は大分扱いが違っていました。獣人は回復が早いからと治療もされないし、死んでも埋葬されずに餌にされたり」

「そうなのか?」

「はい。我々は獣人と講和を模索するガドエレ家に協力するつもりですが、これでは講和も難しいと思います」


講和派の国でも獣人の扱いが悲惨な状況を改善しないと本気には受け取ってもらえない。


「そうだろうな」

「大人達は昔からあるものだから気にも留めてませんが、自分はおかしいと思います」


経験が少なくて常識に流されない若者だからこそ言える事もある。


「マヤ様の所の獣人の様子を見る限り、確かに我々と共存できる種族だと思います。我々も同じようにすればきっと」

「そうだと良いな」

「はい」


珍しく優しく微笑んでくれた。


「さて、毎日頑張っているようだから何かご褒美をやろうか?」

「え、いやそんなとんでもない」

「あ、俺欲しいです」

「ボクも」


従者達は無邪気に欲しがった。


「お前達!」

「良いではないか。毎日お前を助けてくれているのだろう?」

「え、まあ」


ホスタが後ろでギロりと少年達を睨んでいる。


「お前達ラクナマリア様が優しいからってあまり調子に乗るなよ。・・・えーと、ではまた手料理を頂いてもよろしいでしょうか」


歌や舞踊は時々勝手に聞いているので改めてお願いするような話でもない。

金銭を要求するのはみっともないし。


「そんなことで良いのか?ドラブフォルトのように小遣いをねだっても良いのだぞ」


みっともない父だった。


「はい、普段はなかなか贅沢出来ないので」

「ふむ、そうか。では馳走してやろう。子供らの旺盛な食欲を見るのは悪くない」


早速、ラクナマリアは調理に立った。


「今日、これから頂けるのですか?」

「今から準備すれば夕飯にちょうどいいだろう」


 ◇◆◇


 手伝いは無用と言われたので彼らは庭で鍛錬して、それから風呂を使わせて貰って食卓に着いた。


「さあ、どうぞ」

「ありがとうございまーす」


ラクナマリアは珍しく赤い葡萄酒を用意していた。


「あ、お酒飲まれるんですね」

「ええ、たまにはね。貴方達ももう飲んでも構わない年齢だったかしら?試しに飲んでみる?」

「いただきまーす!」「ボクはいいです」「ちょっとくらいならいいかな」

「私は止しておきます」


別の場所でもうちょっと慣れてからにしておきたかった。

出来立ての料理に舌鼓を打ちながら、近況とこれからの予定を話した。


「今度、旧リブテインの鎮魂祭に出席するんです」

「あら、じゃあ一緒に行きましょうか」

「え?」

「ドラブフォルトの依頼で定期的に鎮魂に出かけているの」

「そうだったんですか?」


ホスタが驚きの声をあげる。この宮殿から、後宮から出る事は無いと思っていた。


「普段はここから出かけるのだけれど、世間では交際している事になっているのなら一緒に出掛けてもいいでしょう」

「では公式行事としてご招待しても?」

「ドラブフォルトによく相談してからね」

「はい!」


そんなわけで初デートは鎮魂祭になった。


お腹がいっぱいになってうとうとしたアフドが毛布を掛けられてうっかり「ありがとうお母さん」と口走ってしまい、皆に冷やかされた。


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