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第17話 社会科見学③

 闘技場から帰る途中、市長選挙で大勢が集まっていた。

貴族が二人、平民が三人。

家臣や利害関係者も多いし、魔術で声を遠くまで届け、演出も出来るので貴族はなにかと有利である。投票権も全市民が持っているわけではなく、一定以上の資産が要る。


平民派は精神を操られるかもしれないし、魔術の選挙利用禁止を訴えているが、裕福な市民は貴族のように魔術装具で同様の効果を得られるので反対している。

首都市長選挙は大抵貴族が勝つが、ガス抜きで平民が勝つこともある。


折角なのでクラウスは選挙演説を聞いてから王宮に帰ったのですっかり遅くなり、途中で雷鳴まで轟いて大雨になりずぶ濡れとなった。


ひとまず父に面会の許可を求める使いを出している間に体を温めて、身だしなみを整えてから夜遅くに会える時間を作って貰った。


「何かあったのか?」

「はい、ガドエレ家のロックウッド殿下にお会いしました。明日のご訪問の件は聞いてらっしゃいますよね」

「ああ、急な話だが用件は聞いている」

「昔対立した関係なので話を取り持って欲しいとのことでした」

「そうか。別にお前が口を利かなくても承諾するつもりだ。ガドエレ家と我々の利害は一致している」

「商売敵なのでは?」

「そういう面もある」


海運業では激しく対立している。


「ラキシタ家は西方商工会に激しい損害を出している。会頭からも要請があった」

「実は選帝選挙の件でも少し話を伺いまして」


父に今日聞いた話を全て報告した。


「なるほど。女の下らん嫉妬で王室の秘密を帝国にまで伝えるとは」


末端の侍女でも主人の事を外には漏らさないよう教育を受けているのだが、例外もいる。


「あまりに愚かな人間は行動の予測がつかないな。お前ならどうする?」

「どう、と言われても・・・。父上はどうなさるのですか?」


フラガ伯爵夫人に口を閉ざすようにといっても今更遅い。


「国家機密漏洩の罪で処刑する」

「え!?」


事前に口止めされていたわけでもないに処刑するほどの理由になるだろうか。裁判所がそれを許すだろうか、と気になった。


「王権の行使が厳しい監視下に置かれるようになったといっても昔に比べたら、の話だ。こういう場合は問題ない」

「でも、少々厳しすぎるのでは?それに理由を皆が知りたがるでしょうし」

「そう思うか?」

「はい。伯爵も恨みに思うでしょうし。王権派の結束に亀裂が入るかもしれません」

「そうか、では止めておこう」

「え?」

「どうした。反対なのだろう?」

「父上が私の反対で方針を変更するとは思いませんでした」


そういうとドラブフォルトは小さく微笑んだ。


「あ、試したんですね」

「まあな。だがお前も将来、つい感情的になって厳しい処分を決めてしまう日が来るかもしれない。その時、ちゃんと意見を言える人間を側に置き、それを容れる度量を身につけておけ」

「はい」

「王とは面倒なものだ。ロックウッドもさっさと帝国を解体したいのかもしれないな」

「確かにそんな印象を受けました。ガドエレ家は小国だから、と」

「ああ。だが、あまり奴に好意は持つなよ」

「何故でしょう」

「指導者としてはまともかもしれないが、学生時代に奴は乱痴気騒ぎで問題を起こしている。かなり好色な奴だ。ラクナマリアに会わせたくはない」

「そ、そうでしたか」


人は見かけによらない、とクラウスは意外に思った。


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