5 元図書委員の後輩 かんな
厨川かんなは僕の一個下の図書委員だった。
背は百五十二CMと比較的小柄で深緑の髪色のショートヘアにいつも黒縁の大きい眼鏡をかけている大人しい女の子だ。
僕も図書委員だった為、昼休みや放課後によく一緒に受付をやっていた。
「先輩。今日もおすすめの本持ってきました」
「何て本?」
「安部公房先生の『壁』です。とってもユニークで面白い小説なんです」
「そりゃ楽しみだ。いつもありがとう」
「いえいえ、こちらこそ。読んだ本が共有できて私も嬉しいです」
こんな感じでよく小説や戯曲、詩集、エッセイなどの貸し借りをしていた。
知的な彼女と過ごす日々はとても有意義だった。
十年後。
かんなは大学を卒業し図書館職員になっていた。
今でもまめに連絡を取り合い、本の貸し借りをしている。
午後十時四十分。かんなから電話がかかってきた。
「たかお先輩。今から本を返しに家に行ってもいいですか」
「いいよ。丁度みんなで集まっているんだ。一緒に飲まないか。京風ガパオライスもある」
かんなの家は僕の家の近所にある。
「じゃあお言葉に甘えて。それより京風ガパオライスって何ですか?」
「来れば分かるよ」
二十分後。かんなが家に遊びに来た。
「これが京風ガパオライス……独特な風味ですね」
かんなはほろよいと一緒にゆうかの料理を堪能した。