3 元ツンデレ学級委員長 みか
僕はさきとゆうかと夕食を食べ終え、つまみを買いに一人でコンビニに行った。
近所のコンビニに行くと大体元クラスメイトの全九年みかがレジ打ちをしている。
みかは高校時代学級委員長だった。
腰まで伸ばした赤い髪をツインテールに結え、いつも不機嫌そうな顔で僕に提出期限の迫ったプリントの回収をしてきた。
「たかお。プリント出して。いっつもあなたが最後なんだけど。なんでいつも余裕を持って出さないの? ADHDなんじゃないの」
「僕は期限内にいつも提出しているから提出物の期限を守れないというADHDの特徴には当てはまらないよ」
「それは私がいつもこうやって催促しているからでしょ。まあいいわ。とにかく早くプリントを出してちょうだい」
「分かったよ」
そんな真面目な彼女だったが何事にも不器用で本番に弱く大学受験と就活に失敗。
今はコンビニバイトで生計を立てている。
「いらっしゃいませー。って、なんだたかおか」
十年前と比べツインテールの結い目の位置が低くなっている。今時二十七歳でツインテールというもあれだが。
「何よ。人の顔じっと見て」と、みかは少し顔を赤らめながら言った。
「いや、健気だなって思って」
「何よ! あなたが大卒の正社員だからって高卒フリーターの私を見くびらないでよ」
「いいよ。そんないちいちムキにならなくても」
「ムキー! そういう余裕かましているところが腹立つのよ。さっさとつまみ買って帰りなさい」
「みかは今日何時まで?」
「十時までだけど……」
「仕事終わったらうち来る?」
「……行く」
午後十時二十分。みかが僕の家に遊びに来た。
「明日は週末よ。私もバイト休みだし心置きなく飲めるわね」
「いらっしゃい、みかちゃん。お仕事お疲れ様。これ京風ガパオライス」
ゆうかが出迎えた。
「嬉しい。今日は店長いる日だったから廃棄もらえなかったの。うん、美味しいー」
「テンション高いな」と、僕は言った。
「休み前の日の仕事が終わった時の解放感は何事にも変え難いわ。さて、ゆうかちゃんの料理と一緒に呑むわよ。ビール! ビール!」
「バッチリ冷えてるよ」
「うぇーい」
「うぇーい」
ゆうかがみかに缶ビールを手渡す。
プシュッという快音と共にプルタブが開いた。
みかはごくごくとビールを身体に流し込む。
この姿こそが学級委員長の十年後であった。