9 会議
さて、高校時代からずっと友達付き合いを続けている五人の内誰かと付き合わなければならない。
むしろ、僕は十年前から誰かと付き合うならあの五人のうちの誰かが良いと思って生きてきた。
しかし、どうしよう。ここにきて決められない。
全員が魅力的過ぎるのだ。
さきは漫画やアニメなど共通の趣味を持っており、一緒にいると話題が尽きる事がなくて楽しい。なにより抜群に見た目が良い。
漫画家を志していなければタレントになっていたであろう。
ゆうかは何より料理上手で献身的だ。小さい頃からお互いを知っているし、何より性格が良い。
みかはおっちょこちょいで危なっかしい所を見ていると守ってあげたくなる存在だ。何より時折り見せる素直な瞬間がとてつもなく愛らしい。
まい先輩はまだ夢を諦めておらず近くで応援したくなる存在だ。そして何より美人でスタイルが良い。
かんなは理知的で一緒にいると充実した豊かな時間を過ごせる存在だ。地味で大人しいがよく見たら可憐だ。
逆に皆は何の取り柄もない僕をどうおもっているのだろうか。
大学に進学しいわゆる飲みサーに入って多少は垢抜けたが、根本的には陰キャだし顔も大して良くない。かろうじてまともな企業に就職できたので年収は残業代込みで年齢の割にそこそこあるが高給取りではない。
そこで僕は皆の前で宣言をする事にした。
いつも通り六人が僕の家に集まり宴会をしている最中。
「実は僕、皆の事が好きなんだ」
「「えっ?!」」
驚く一同。
「だけど、いざ告白しよう考えると誰か一人に絞れないんだ。皆が魅力的過ぎるから」
「それはまあ嬉しいけど……」と、まい。
「三ヶ月以内に僕は誰かと付き合わなければならないんだ。でないと地方に飛ばされる事になったんだ」
「この間、課長に呼び出されていたのはその件についてだったのね」と、さき。
「僕は三ヶ月以内に皆のうち一人に告白する事に決めたんだ。だから覚悟しておいて欲しい。今の六人で馴れ合う関係はもう終わりになるかもしれないって事を」
「そんな……」と、かんな。
「実は私も、いいえおそらく私達五人全員がたかおに友達以上の好意を寄せているはず。異論はある?」と、さき。
「……」
全員押し黙った。
「ちょっと待ってよ。三ヶ月以内に私達の中で誰か一人を選ぶって事?」と、みか。
「そうだが」
「ならチャンスを平等にしてよ!」
「どういう事だ……」
「例えば……じゃあ、私達一人ずつときちんとデートしてから決めるってのはどう? 皆はどう?」
「そうね。その方が告白されなかった時諦めがつくわ」と、ゆうか。
「なんかバチェラーみたいね」と、まい。
「こんな冴えない男のバチェラーなんて皆に鼻で笑われるわよ」と、みか。
「とりあえず、みかは選外」と、僕。
「何ですって。まあ今にみてなさい。一回デートすればあんたなんてイチコロよ」
「随分と自信あるんですね。フリーターの癖に」と、かんな。
「ぐぬぬ。この眼鏡陰キャ!」
「ふんっ」
「そんな急に険悪になるなよ」
そんなこんなで僕は皆とデートする事になった。




