表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/59

17 ダークドラゴン 前編


「レオル様、新しい盾が出来たのですね。色が綺麗です」


 ギルドのテーブルにつくとルリエが言った。


 レオルは今朝、武器職人のところへ寄って、ウロボロスの鱗でできた盾を受け取ってきたところだ。元々持っていた盾は破損したため、左右の小盾を買い換えている。


「ああ、ありがとう。今朝受け取ってきたんだ」


 椅子に掛けようと思っていたが、せっかくなので仲間に披露しようとテーブルに置く。


 チトセも身を乗り出して興味を示した。


「ホントね。蛇の皮だからもっとグロテスクになるのを想像してたけど、全然蛇っぽくないわ。宝石みたい」


「俺も見たときは驚いた。武器職人特有の魔法で、表面が均一になるよう加工しているらしい」


 盾の表面は光沢のあるエメラルドグリーンで透明感があり、蛇特有の鱗模様は消えている。この加工によって傷一つつかない強度となり、あらゆる攻撃を受け流せると武器職人は誇らしげに語っていた。


「かっけえなー! オレもいい加減、初心者用のハンマー卒業してえぜ!」


「ハンマー自体が初心者用の武器だからな。レア素材が手に入ったら特製で作るのをお勧めするぞ」


 ハンマーのレア武器はおそらくこの世に存在しない。貴重なレア素材で初心者用の武器を作る酔狂な武器職人はいないからだ。


 しかし、それはレオルの小盾も似たようなもので、優先度の低いサブガードの武器という偏見からレア武器はほとんど作られていない。


 過去、レオルは武器屋で何度も大盾との扱いの差を感じていた。


 いつしかレアな小盾が欲しいという欲求すら忘れていたが、突然当時の願いが叶ったような感覚だった。


 そんな気持ちを共有するかのように、しばらくアッシュと武器について話し込んでいたところ。


「白創の古の皆様。少々よろしいでしょうか。また皆様に依頼させていただきたいクエストがあるのです」


 受付嬢が声をかけてきた。レオル達は基本的にクエストを断らないため、最初の頃は緊張しながら声をかけてきた受付嬢も今は気楽に依頼してくる。


「丁度新しい盾を試したかったところだ」


「ありがとうございます。では、説明させていただきますね」


 受付嬢の話はこうだった。


 最近、ドラゴンの中でもとりわけ気性の荒いダークドラゴンが二つ隣の街を自らの寝床にしようと、日夜攻撃をしかけている。


 ドラゴン狩りに特化したパーティが一か月くらい戦闘したが、防衛すらままならず苦戦しているため、代わりに討伐して欲しいとのことだ。


「ダークドラゴンの強さは皆様ご存知の通り、先日のウロボロスと同等です。しかし、今回厄介なのは、ダークドラゴンが街中で暴れているという点です」


「つまり、民家に被害を出さずに討伐する必要があるということか」


「はい。難易度が高いのは承知なのですが……」


 断られるのではないかと思ったのか、不安な表情になる受付嬢。


 しかし、レオルは街へ被害を出さずにドラゴンを倒す方法を考え始めていた。


 答えは出ないが、皆で作戦会議をすれば良い案も出るだろうと結論付ける。


「問題ない。そのクエストを受けよう」


 メンバーも余裕の表情で、異論を唱える者はいなかった。


「ありがとうございます! それでは、後ほど詳細な地図などをお渡しいたしますね」 


 そして、翌日。


 レオル達は二つ隣の街の塔の天辺にいた。高さは七メートルほど。


 ダークドラゴンは知能が高いため、人々の心を折る目的で街の象徴である塔を次々と破壊しているらしい。


 今街に残っている塔の中で一番高い塔が次のターゲットになるだろうと予想し、レオル達は待ち伏せしていた。


 塔の天辺は風が強く、肌寒い。しかし街の遠くまで見通せるため、薄暗いながらも景色は綺麗だった。


「来たな」


 予想通り、一キロほど先からダークドラゴンが向かってくる。全身が薄灰色で全長は十メートルほど。


 そのスピードは速く、あっという間にレオル達の上空まで到達した。


 ドラゴンもレオル達を視認しているはずだ。さらに、賢いドラゴンはレオル達が塔の上にいることの意味まで理解しているだろう。


「予定通り頼む、ルリエ」


「はいっ、いつでも打消します!」


 ドラゴンは上空を旋回すると、レオル達を敵と認識したのか、牙の生えた口をグアッと開いた。


 次の瞬間、レオル達を包み込むほどの大量の炎を吹き出した。


 ゴォオオオオオオオオオオオオッ!


「あっついわね!」


 とチトセが苛立っているが、その程度で済んでいるのはルリエが魔法で打ち消したからだ。まともに食らっていたら丸焦げである。


「やはり便利だな、打消し魔法は」


「ありがとうございますっ!」


 ルリエは嬉しそうに笑顔をこぼし、再び発せられたドラゴンの炎を打ち消す。


 その効果範囲は広く、高さ七メートルの塔全体をすっぽりと包み込んでいた。通常のメインガードが使用する防御壁とは比べ物にならない。


 さらに、防御壁は地面と垂直に展開する一方で、打消し魔法は上空にも展開できるというメリットがあった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ