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14 ラフレシア盗賊団戦 後編


 サブガードのレオルだが、メインガードが使う技も含め、基本的な防御魔法は一通り使うことができる。


「ギャハハハハ! 毒とコイツらを同時に防げるかぁ!? やっちまええええええ!」


 メインアタッカー三人が同時にレオル達に向かって杖を振り下ろした。


 その瞬間、レオルは持っている盾を中心として、約五メートル四方の防御壁を展開する。


 バヂッッッッ……!


 激しい衝突音がして、周囲が強烈な光と砂埃に包まれた。


 本来、怪物や魔物を瞬殺できるほどの特大魔法三つはメインガードでも防げない。


 しかし、魔力を一瞬で開放する力においてレオルは規格外のため、魔力を惜しまなければ技の強度はメインガードを大幅に上回る。


 盗賊たちはゲラゲラと笑っているが、レオル達は無傷だった。


「レオル、メインガードの技も使えたのかよ! 信じられねえ! あれ食らってノーダメージだぜ!」


「本職でもないのに三人の攻撃を同時に防ぐだなんてすごいわね……万能じゃない」


「助かりました、レオル様っ! ありがとうございますっ!」


 三人の称賛を受けながらレオルは防御壁を下した。青い魔力の壁が消え去る。


 しかし、紫色の毒煙はまだ周囲に漂っているため、ルリエの防御魔法を解除することはできない。


「今のでだいぶ魔力を消費した。ジリ貧になる前に攻勢に出よう」


「でも、どうするんだ? オレ達はここから動けねえし、奴らは遠くからオレ達を狙って来るぞ」


 アッシュの言葉は正しかったが、レオルには単純な打開策が浮かんでいた。


 無表情でアッシュを振り返り、その赤い瞳を見る。


「アッシュ、お前は何を言ってるんだ」


「だから、オレ達は遠距離攻撃を持ってねえんだって! チトセはゼロ距離でしか攻撃できねえし、オレも近接特化だ。ここからアイツらに攻撃する手段がねえんだよ!」


「いや、アッシュ。お前は元メインアタッカーだろう」


 その言葉に、アッシュはハッとなった。


 アッシュはかつて一度メインアタッカーを目指していたが、膨大な魔力を保持し続ける才能がなかったため、役割を変えた過去を持つ。


 当然、威力は低いながら特大魔法は使える。


「お前の特大魔法は魔物相手には威力不足かもしれないが、人間相手には十分だろう。むしろ、やりすぎる心配が無くて丁度いい」


「あー……言われてみればそうだな。なんで気付かなかったんだオレ……。っつーか、オレの技のことなのに、レオルよく気付いたな……」


 頭をぽりぽり搔いているアッシュの後ろでは、チトセとルリエが誇らしげな顔をしていた。


「レオルはあたしの呪術も使いこなしてくれたんだもの。これくらい思いつくわよ」


「レオル様は仲間想いな方です。普段から仲間のことを知ろうと努力しているからこそ、ピンチのときに適切な解決方法を見つけてくださるのだと思います」


 少々ほめ過ぎではないかと思ったが、レオルは何も言わなかった。


 アッシュはハンマーを地面に落としてニカっと笑い、赤い髪をかき上げた。


「サンキュー、レオル! 久しぶりだ。この技はもう二度と使うことはないと思ってたぜ!」


 その後、アッシュは特大魔法を五発ほど放ち、十人程度の盗賊たちを戦闘不能にした。


 盗賊団にはまともなメインガードがいなかったため、特大魔法を防ぐことができなかったようだ。


 そもそも彼らは奇襲戦法を得意としていたため、攻撃を受ける準備を怠っていたのかもしれない。


「終わりでしょうか」


「毒の霧も晴れたみたいね」


「よっしゃ! あとはアイツら連れて帰るだけかぁ!」


「いや、まずは残党の確認を」


 と、レオルが言いかけた瞬間。


 皆の油断を見計らったかのように、森の裏側に忍んでいた残党が飛び出してきた。


 小柄な男が顔に怒りを滲ませ、チトセに向かって一直線に走っている。


 レオルは男を止めるかどうか迷ったが、チトセが余裕な足取りでスタスタと前へ出たので、手助け不要と判断した。


「ラフレシア盗賊団を舐めやがってッ!」


 男は素手でチトセに掴みかかった。

 毒をまき散らしていた罠担当のため、剣や杖のような武器を持っていなかったようだ。


 チトセは男の顔を見上げた。


 黒い瞳に怒りが宿っているのをレオルは察した。


「舐めてるのはどっちよ……」


 チトセは手を前に翳し、その手が男に触れた瞬間。


 バシッ……。


 小さな音がして、男は悲鳴をあげながら地面に倒れ込んだ。


「三日はまともに動けないわよ」


 男は縛られているかのように動かなくなり、ヒィヒィと情けない泣き声をあげた。


(呪術も生身の人間相手には十分すぎる威力のようだな)


 その後、チトセは安全確保のため、戦闘不能になっていた他の盗賊達にも呪術を付与した。


 レオル達はぐったりとした盗賊達を魔力で浮かせ、ギルドへ連行した。


 * * * * *


 ギルドに帰ると、凍瘡の羽のリーダーが近づいてきた。


 以前盗賊団に襲われた彼だが、包帯を右腕に巻いているのみで大した怪我はなく、思いのほか元気そうだった。


「遅かったな、レオル。そろそろ俺達で迎えに行こうかと仲間と話してたところだ」


 目じりに皺を作った男の冗談に、レオルはフッと小さな笑みで返した。


 受付嬢やギルドの他の冒険者達もレオル達の元へ集まってくる。


「さすが白創の古の皆様っ! 盗賊を捕まえてくださったんですね! 本当にありがとうございます! あなた方は我がギルドの誇りですっ……!」


「レオル達がやってくれたぞ! オレたちの敵を討ってくれた! あの憎い盗賊団を捕まえてくれたんだー!」


「金品も取り返してくれたらしいぞ! これで今月も女房に美味い飯を食わせてやれる! ありがとう! 白創の古!」


「白創の古の活躍が止まらないわ。また売上の最高記録を更新してしまうわね」


 その夜、レオル達は盗賊に金品を奪われていた冒険者達から、食べきれないほどの食事と酒を奢ってもらった。


 酒のつまみには、白創の古が盗賊を捕まえるまでの一部始終を、アッシュが身振り手振りつきで大声で語り、冒険者達や受付嬢達は大いに盛り上がっていた。


 レオルはルリエとチトセと落ち着いて食事を取りながらも、その盛り上がりに耳を傾け、小さな笑みをこぼした。


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