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12 初陣 後編


「ナ、ナゼダ……?」


「メインガードの効果範囲内にいる」


 レオルの背後では、ルリエが白い杖の先端を魔物に向けていた。


 打消し魔法は通常の防御魔法より効果範囲が広い。


 レオルはその効果範囲を見極めて立ち位置を取り、自身の防御を捨てることで、魔物の攻撃を誘った。


(ルリエは理想のタイミングで打消し魔法を使用してくれたな)


 かつて所属していたパーティ『碧撲の徒』では味わえなかった阿吽の呼吸だった。


 胸が熱くなるのを感じつつも、攻撃の瞬間に魔物の手が人質から離れたことを、レオルは見逃さない。


 繭守マモリを遠隔操作で引き寄せると、ふわりと舞った女性がレオルの腕の中に納まった。


 レオルは繭守マモリを解除して残魔力を回収し、女性を地面に下ろす。


「すげえぜ! レオル! これを狙ってたんだな!」


「自分を囮にするなんて凄い度胸ね……。でも、おかげで安心して戦えるようになったわ」


「わたしを信じてくれたんですね。レオル様、ありがとうございます!」


 仲間達からの称賛を受けながらも、レオルは気を引き締め盾を構え直す。


 その後は一方的な戦いとなった。


 魔物の物理攻撃は全てレオルが盾で防ぎ、後衛への魔法攻撃はルリエが打消し、生まれた隙にアッシュがハンマーを叩き込む。


 組んだばかりのパーティとは思えないほど滑らかな連携で魔物を封じ続け、二分ほど経った頃。


「準備できたわっ」


 最後尾で呪術を整えていたチトセが声を張り上げた。


 それを受けたレオルは自身に隙を作り、魔物の攻撃を誘導する。


 魔物がレオルに攻撃の狙いを定めると、空いた横腹にアッシュがハンマーを叩き込む。


 ドッ……!


 魔物の動きがピタリと止まったのを確認し、レオルは魔力操作でチトセを魔物の背後へ飛ばした。


「さすがね。相変わらず凄い精度」


 ふわりと着地したチトセが魔物に触れる。


 バシュッ……。


 数十本の黒い線が魔物を包み込み、数秒後、魔物の体は石像のように動かなくなった。


 メンバーは皆安堵の息を漏らし、武器をおろす。


「レオル様っ……!」


 人質になっていた給仕の女性がレオルの元へ駆け寄ってきた。


「ありがとうございますっ……! レオル様が来てくださらなければ……私は今頃……! なんとお礼を言ったらいいのでしょう……!」


 相当な恐怖を感じていたのだろうと察して、レオルは女性の背中を軽く撫でた。


 女性は涙を流しながらも、その荒れた呼吸はゆっくりと整っていった。



 * * * * *



 ギルドに帰ったレオル達は、受付嬢から渡された報酬の金額を見て、目を丸くしていた。


「えっ……間違ってるわよねコレ……?」


 と受付嬢のミスを疑うチトセ。


「わたしたち、これで一年は暮らせるのではないでしょうか」


 と現実感のない表情のルリエ。


「冗談だよな……こんな金見たことねえぞ……」


 と混乱した様子のアッシュ。


 レオル達が倒した魔物は、かつて碧撲の徒が倒した魔物と同等以上であり、その貢献度は十分高額な報酬に値する。


 レオル達は約束通り、受け取った報酬を綺麗に四等分した。


 ギルドにいた冒険者達は、レオル達が倒した魔物を一目見ようと、魔物の近くに群がり、そのうち他のギルドからも噂を聞きつけた冒険者達が集まってきた。


「パーティ全員無傷で魔物を倒したって本当か!?」


「元碧撲の徒のレオル・アクレスの創設したパーティらしいぞ」


「白創の古と言うらしい。創設してわずか四日目でこの偉業を達成しちまったんだと」


「しかも、パーティメンバーは鳴かず飛ばずだった魔法使いと、新人の呪術師、三線級の大槌使いらしい。レオル様が三人の才能を見抜き、まとめあげたようだ!」


「まさか、碧撲の徒が魔物を倒したときも、レオル・アクレスのおかげだったんじゃないか……?」


 そんな冒険者達の声の反対側では、受付嬢達が笑顔で話し合っていた。


「碧撲の徒のクエスト達成率がどんどん落ちてきたと思ったら、レオル様がこれほど優秀なパーティを組んでくださるなんて、このギルドは本当に運がいいわ」


「ええ。ギルドが金欠になってクビになるかと不安だったけど、レオル様達のおかげで、私達の生活も安泰ね」


「これまでレオル様と何度も接していたのに、これほど優秀な方だとは知らなかったわ。お恥ずかしい」


「白創の古の皆様は、他のギルドに渡しては駄目よ。万が一ギルドを抜けようとしたら、泣き落としてでも引き留めるのよ」


 レオル達は騒がしくなってきたギルドを抜けて、外へ出た。


「金が入ったところだ。美味い物でも食いにいこう」


「はいっ、ぜひ!」


「ええ、そうね」


「おうっ! そうこなくちゃな!」


 レオルの提案に三人が賛同し、その夜、四人は街で一番高い酒場で高級な食事や酒を楽しみながら、朝まで語り合った。


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