第8部分 経済効果Ⅱ
第8部分 経済効果Ⅱ
『ねぇタク、ついでにもう一個聞いていい』
「どうぞぉ」
「結局胴元さんはいくら儲けてるの」
「をぉ! いいところに気付いたね」
これには本当に驚いた。
「うん… そうだな、これは引き算で行けるよ
このとき胴元の手元に残るカネ⑥は、支払った金額を引いた残りだね。
①5000万円― ③4000万円― ⑤198万円― ⑤198万円 = ⑥604万円
つまり、⑥は 604万円ということになるかな」
『じゃぁすごい儲かるんだね、胴元さん』
「それはどうかなぁ。この⑥の中から、土地、レンタル、電気水道、冷暖房、減価償却、広告宣伝の費用とか、人件費も払うんだもん。あ、あとワイロとかも」
『あ、そっか。どうなのかなぁ。儲かるのかしら?』
「もう、分かるだろう? 損しているはずなどあり得ないってさ…」
オレが知りたいのは、損か得かではなく、具体的な金額である。
参考までに、カジノの花形、ルーレットでは、計算上の控除率は5.3% (2/38)~2.7% (1/37)である。また基本的にはディーラーと客との勝負になっている。
こうしてカジノ事業者に落ちるカネは、カジノが無ければ別のギャンブルや飲食費や観光、預貯金に回るカネだと言えよう。そう考えると、日本国民がギャンブルに走るよりも、インバウンドの御客様に多くの貢献をしていただくのが国策として得策かと思われる… つまり外国の富裕層の方に満足していただける施設設備を整えてお待ちすれば、御国のために貢献できる…という図式になるのだ。
話を元に戻そう。つまりオレがまだレナと付き合う前の、バイト掛け持ちだった日々だ。
IRのデメリットはたくさん指摘されている。個人的な意見も含めて挙げてみよう。
①ギャンブル(賭博)依存性の人が増えることが予想されるから
②ギャンブル(賭博)依存性の人やその家族が人生を狂わせるから
③多額のカネが動き、金銭感覚が狂ったヒトが生じるから
④多額のカネが動き、そこに合法組織だけでなく非合法組織の魔手が伸びるから
⑤マネーロンダリング(資金洗浄)を含む、カネを巡った犯罪が多くなるから
⑥大金、外国人観光客、非合法組織と揃えば、治安が悪化する危惧があるから
⑦治安組織(警察等)を含むみんなの道徳観が鈍化するから
①② ギャンブル依存症の増加
パチンコやパチスロ、賭けマージャンなど、ギャンブル依存症の疑いのあった人は四%弱とも言われている。これらの、客単価が比較的安いギャンブルでも依存症は多いのに、客単価が比較的高いカジノでは、当たった場合のリターン(還元)も大きく、ギャンブル依存症の増加を助長するのではないかという意見はまことにもっともなことだと思う。今まででさえ更生できなかったのだから、ギャンブル依存症は当人だけでなく、その家族親戚にも大きな不幸を招くことになるだろう。
日本政府は、ギャンブル依存症対策(ただし国内居住者のカジノ利用者用)として、
入場時にマイナンバーカードを提示
入場時、顔認証システムの導入
入場料6000円を徴収
入場制限:週3回・月10回まで
クレジットカードによるチップ購入を禁止(現金でのみ購入可)
IR区域以外での広告の掲示を禁止
という対策を決めた。つまり、入場制限を付けることを柱にして依存症防止を図るというワケだ。この他に「ギャンブル等依存症対策基本法」を定めて各自治体に十分な対策を義務付け、またギャンブル依存症の治療を医療保険の適用対象とする方針を決定している。(2020年度~厚生労働省)
③④ 多額のカネと非合法組織
IR以外では通用しにくい金銭感覚、道徳感覚が蔓延するのではないか。また甘い汁に非合法組織が合法組織を装って入り込み、陰で縄張り争いをするのではないかなどの危惧がある。今時ドスや青龍刀を振り回すなど時代遅れではあるが、絶無とは言えない。粗暴な手段がより静かに陰険に替わってきただけである。非合法なヤクザ、暴力団、マフィア、蛇頭等が経済ヤクザ化して「合法的会社」の仮面を被って必ず進出してくるだろう。そしてもれなく麻薬、拳銃、人身売買等がついてくるだろう。
⑤ マネーロンダリング(資金洗浄)
たとえば、非合法組織が、違法な手段(金の密輸入、麻薬取引・脱税・反社会的組織の犯罪など)で得た「汚れた資金」があるとする。しかし当局の捜査を受けた時に、これらのカネは当然安全に保全しておきたい。ならば、正当な方法で得た資金に見せかけてしまえ、という意図で「金の出所を不明確にする工作」をマネーロンダリング(資金洗浄)という。
もちろんカネを水で洗うワケではない。無論犯罪行為だが、やり方によっては立証困難になるワケだ。昔からタックスヘブンと呼ばれる税金が異様に安い小国、島国やスイスの銀行、そしてカジノは、マネーロンダリングの温床になってきたという。
カジノを利用する場合「汚れた資金」を賭博で賭け、負けて一旦カジノ側に移すのだ。このあと勝利すれば、賭けに勝った「クリーンかつ合法的な資金」として保有することができるだろう。これでマネーロンダリング(資金洗浄)完了で、カジノと非合法組織が「テーブルの下で」手を握っていることは言うまでもない。
昔のルーレットのディーラーは、相応に熟練していればルーレットホイールの特定の数字を狙うことができたと言う。しかし現在主流のルーレットホイールは、数字の溝の部分が浅く作られているので、ボールは勢いをつけたまま転がって行ってしまうのだそうだ。しかし遊びはルーレットだけじゃない。
イカサマがいかにも簡単にできそうな怪しさも、カジノの魅力なのかも知れない。海外で実績のあるこの方法が日本で利用されないワケがない… と思うが、考えすぎだろうか。
カジノ事業者が利用者の預り金を移動する際には、事業者が管理、または利用者が指定する口座を介すと決められている。資金が自由に移動できるとマネーロンダリングに利用されやすくなるからだ。またギャンブル依存症の増加を予防するため、金銭の貸付けは一定の資力がある利用者、要するにカネ持ちに対してだけ可能で、貸付限度額も個別に決める、という。カジノ事業者はこういった特定金融業務も準備する必要があるワケで、準備もなかなか大変そうだが、その分以上に旨味のある商売なのだろう。
⑥ 治安悪化の懸念
⑤のような秘密があれば、それを保持する方も突き止める方も水面下での攻防が起きる。大金、外国人観光客、非合法組織と揃えば、治安が悪化しないワケがない。カジノに恩恵を受ける人々には忍耐できるかも知れないが、周辺の一般住民にとっては、直接の恩恵が無いのに迷惑なことばかりが増えると予想される。
例えるなら原子力発電所に似ているかも知れない。原発を受け入れる代わりに、受け入れた自治体には多額の税や交付金が落ちてくるが、周囲の自治体にはあまり恩恵がない。しかしいったん事故が起き、放射性物質が漏れだすと、境界に関わりなく迷惑が及ぶ。IRでの犯罪は、むしろ周辺で多くなるのではないだろうか。犯罪は警戒が厳しいところよりもその周辺で起こりやすいものだからだ。
某隣国の「某ランド」では、財産を使い果たしたホームレス兼依存症患者が周辺のサウナ等に棲みつき、カジノ内に質屋、消費者金融、風俗店が林立している状況があったという。
⑦ 日本人の治安組織(警察)を信じたいが… やはり無理かも知れない。
かつてIR整備法を巡って、国会議員による汚職があった。議員も人の子なら、警察官だって人の子である。ヒトの歩いた歴史のいたるところに、手心・情実・汚職がセットで存在していたに違いない。
カネさえあれば、カジノこそが天国である。ただし多数の「地獄を見るヒト」が居ることも忘れてはならない。みんなを助けるために無限にカネが湧いてくるならば、世の中はインフレになってしまう。
全くの余談だが、欧州モナコ公国の名物もカジノである。ちなみに女性憧れの「ケリーバッグ」は、モナコ公国に嫁いだグレースケリー公妃が所持していたことで有名になったものだ。この国のカジノ協会から賭博禁止を申し渡された二人の日本人がいたという。
一人は明石元二郎。明石はヨーロッパ各所からの帝政ロシア・ロマノフ王朝の内部崩壊を演出する工作を成功させ、日露戦争の勝利をヨーロッパから支えた陸軍のロシア駐在武官(当時大佐)であった。使った資金は当時の100万円(現在の価値では約400億円程度)と言われる。
彼が友人とカジノに立ち寄ったとき、しばらく見ているうちに何やらの法則性を見出したらしく、出る目出る目が彼の言う通りになり『お客さん、困ります』と店が悲鳴をあげたのだとか。見学は良いが賭博は困ると申し渡された伝説が残っている。
もう一人は山本五十六。太平洋戦争開戦の際にはハワイの真珠湾攻撃を指揮した連合艦隊司令長官だった。大正12年、彼が39歳の中佐の頃、視察で立ち寄ったモナコであまりに勝って儲けたことで日本人初の出入り禁止になったと言う。不祥事による出入り禁止は論外として、こういう出禁はむしろ名誉なことだと思う。いったいどういう頭脳なのだろうか。
今このオレにその頭脳があれば、目立たないように少しずつ勝つんだがなぁ…
まあ、無いからこんなバイトしてるんだけどさ。
オレもカネ持ちになりたい。かつてテレビか何かで見た「ルーレット必勝法」は、単純すぎるくらいの確率論で、目からウロコが落ちる思いだった。それは…
まずルーレットの止まった数字をしっかり見ることから始まる。しかしまだベット(賭け)をしてはいけない。
ルーレット賭博では、たとえば数字そのものをズバリと当てる方法(確率は低いが配当は高い)、奇数か偶数かを当てる方法(確率半分で、配当は低い)、赤か黒かを当てる方法(確率半分で、配当は低い)などがあるという。ここでは赤か黒かを当てる方法で解説しよう。
0回目 黒 (確率1/2) (実際は18/37または18/38で、1/2より少し小さい確率)
1回目 赤 (確率1/2)
2回目 赤 (確率1/2 × 1/2 = 1/4)
3回目 赤 (確率1/2 × 1/2 × 1/2 = 1/8)
4回目 赤 (確率1/2 × 1/2 × 1/2 × 1/2 = 1/16)
5回目 赤 (確率1/2 × 1/2 × 1/2 × 1/2 × 1/2 = 1/32)
6回目 赤 (確率1/2 × 1/2 × 1/2 × 1/2 × 1/2 × 1/2 =1/64)
この赤(黒でも奇数でも偶数でも、5回続いたあと)の6回目に、「黒」にベットする(賭ける)というものだ。次に赤がでる確率は1/64でしかなく、ほぼ確実に黒が出ると言うのだが…オレはまだ実践したことはない。
なんちゃって… ね、
失礼しました、ごめんなさい。
わかりました? というか… バレました?
じつは数学的な確率はそれぞれ一回ごとに独立であって、前や後に関係なく常に半々(正確にはディーラーの取り分を差し引いた18/37で48.64%)なのだ。
みなさまは、もうお気づきでしたよね、このデタラメ理論のこと…
どっちみち、そんなムダに使えるほどのアソビ金は持ち合わせていないから、オレはやらない。ちなみにカジノの伝説的記録によると、黒が連続五十一回、赤が連続三十八回という実績があるだそうで… みなさん、頑張ってください。
それにしても、素人のオレでもわかるような見え透いたデマを、まことしやかにTVでやらないでほしいものだ… と思うのはオレだけだろうか。