表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ロシアン ルーベッド  作者: 楠本 茶茶(クスモト サティ)
13/34

第13部分 恋人

第13部分 恋人


 あれからオレとレナの密かな交際が始まった。


 レナはやはりあの巨大ホテルの住人だった。一緒にいるのは義父とその父母だという。母とは三年前に死別し、その母の再婚相手である義父に引き取られたのだとか…

 家庭的にはシアワセとは言い難いが、義父一家が金だけは不自由しないくらい持っているのだそうだ。ああ、一度そんなこと言ってみたいわ…


 他にもレナについていろいろなことがわかってきて、オレの想いは募るばかりだった。

・レナは二十歳、今度の成人の日には振袖とドレス、両方を着ること。

・運動はあまり好まず、理系っぽい楽しい男性が好みであること。

・得意科目は英語、不得意は社会。中学では合唱部、高校では家庭科部にいたこと。

・習い事は、ピアノに習字、華道、琴などの経験があること

・ファーストキスは一七歳、まだ男性経験は無いとの自己申告


ちなみにオレはもうじき二十五歳である。


 レナとの会話は果てしなく楽しかったが、毎日必ず23時になると終わるのが疑問だった。このあとはたいてい出てこないが、出たとしても25時を回っていた。

「この間、いったい何をしているのだろう?」


 新たな疑問が湧いてきた。何を聞くにしても、もっと仲良くならないとな。もっと仲良くなりたかった… ココロの底から。


 ある日の25時過ぎのライン会話を再現してみよう。

『ねえいまなにしてる』

「すぐ近くでバイト中。 レナはまだ寝てないの?」

『寝れないの。なんか楽しいお話してよ』


「いきなり、そんな… じゃぁね、こぶとり爺さんて知ってるかい?」

『題は聞いたことあるけどさ、どんな話だっけ?』

「じゃ詳しく語ってあげるからさ、それで良いかい」

『うん、あ、待って、お茶持ってくる、長いでしょ』

「いや、そこまではね、大丈夫さ」


『…』

見てねぇし…


早くも居ないのかい?

『OK、お願い」

「じゃ行くよ」

『わくわく』

「待ってレナ、ハードル高杉晋作」


『ねぇ、はやく』

「わかった」

『どきどき』


「あのね、むかしむかし、あるところに」

『あるところに?』

「うん、小さくて太ったお爺さんが住んでおりましたとさ」

『おじいさんね』

「うん」

『それで?』

「いや、それだけだ」


『???』

「おしまい」

『タク、ね… いつどこでコブとったの?』

「あの、だからコブすら出てきてはいないよ」

『だってこぶとり爺さんて、ワケあってコブを取ったのか、取られた気がする』


「そっちじゃなくて… だから、小さくて太ってるお爺さんだってば」


『ヒドイ、タク…(笑) そっちの小太り? 』

「ごめんごめん、それしか思いつかなくて」


『いいの、タクと話すのが楽しいから』

「ありがと(^▽^)/ ゴメンね、一応バイト中だし…」


『でもね、今日はもうちょっと甘えてもいい?』

「うぇるかむ、どしたん?」

『さっき、いやなもの見ちゃった』

「え、なに?」

『あ、なんでもない、ダイジョブ』

「オレは同じ建物にいるからね、ダイジョブさ」


『アリガト、会いたいな… せつないyo。 あ、同じ建物といえばね』

「なになに」

『ミナがこのホテルに来るよ』


「なんですと?」

『若に紹介されたのがここの住人でさ』

「まさか結婚とか?」

『かもね』


「展開早くない?」

『早過ぎ晋作』

「ウフフ、晋作って… ´∀`  友達来るとか良かったね」

『うん』


アレ、なんで気乗り薄いんだろう? まあ女の子にはいろいろあるからな。


「顔見たいな」

『ミナの? ぷん』

「レナの、だってば」

『部屋から出れないもん』

「わかってる」

『タクはS階来れないんでしょ』

「なぜか、ね」

『従業員でも?』


「この件はね、なぜかだれも話さないし教えてくんない」

『ゴメンね、今はアタシも、なの。レナもう一回寝てみるね』

「そっか、おやすみなさい。レナ」

『タク、おやすみ… ねえ忘れてない』


「あ、やったぁ! おやすみレナ、ちゅっ!」

『ありがと、タク、ちゅっ!』


「むぎゅ は要らない?」

『ほしぃ!』

「むぎゅぅ~~~!!」

『きゃぁ、死んじゃう』

「むぎゅむぎゅむぎゅ」

『えへへへ… コロして、タク、お願い!』

「一緒に、ね、レナ… 二人いつまでも一緒だよ」

『うん… ねぇタク』

「な~に、レナ」

『約束して』

「即答イエス」

『ホント? 絶対夢に出てきてね』

「やったぁ! お安い御用で… でもね」


『でも?』

「そしたら…明日は眠いけど… 覚悟しといてね」

『なんで??』


「二人とも眠れないからさ、たぶん」

『あっ… うん』

「さぁ、早くおやすみ、レナ」

『いつか… 二人で寄り添って夜明けのココア飲みたいな』

「口移しでね… 飲ませてあげたい」

『ユメじゃないよ、もうじき現実になるのね』

「うん、大好きだよ、レナ」

『大好きよ、タク… またあした』

「ちゅ!」

『チュ!』


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ