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ロシアン ルーベッド  作者: 楠本 茶茶(クスモト サティ)
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第12部分 金持ち

第12部分 金持ち


 金持ちのやることはよくわからん。


 今日はプールサイドパーティだそうだが、なんで水着じゃないんだろ。オレが泳がないのは納得できなくもないが、女の子たちは普通の服じゃないか。オレはレナを始めJDたちの水着姿を心待ちにしていたのに、見事うっちゃりを食った気分だった。


 レナの胸元、見たかったな。色白だし、大きいし、柔らかそうだし、形もたぶん…


 それはともかく、オレの演出はことごとく成功した。

 マジシャンズセレクトでヒナへの「付き合ってください」のメッセージを読んだ御主人様、最後にオレが入れ知恵した「本気です」を言うことができて、本当に付き合い始めることになったのだ。


 金持ち狙いだったミナには、御主人様が新しい彼氏候補を紹介することになって、一応メデタシメデタシ。レナは当分男は要らないと言っていたが、レナのポケットにこっそり滑り込ませた予備のメッセージカードに添えたインスタアカウント(垢)には、その日のうちにDMが届いた。


『タクありがと、嬉しいな。今度ファルファッレに連れてって』

初めてなのに延々と会話は続いた。


 狙いは達成コンプリートで、オレは満足した。


 そりゃそうだろう。あのあともパーティは盛り上がったのだ。


 ひとつは「マシュマロチャレンジ」。いろいろやり方はあるが、今回はマシュマロ1個とスパゲティ10本、マスキングテープ10センチを使って、なるべく高い塔を作ってもらった。もちろんペアのチームプレーである。言わず語らず、レナとミナは惜しいところでうまく負け、御主人様とヒナに花を持たせてくれた。


 もう一つは脱出ゲームである。1mくらいの紐を2色2本ずつ計4本を用意する。より混乱させるなら、ペアには同じ色の紐を渡しておこう。


「そうですね… じゃぁレナ様、少々アシスタントを勤めていただけませんか?」

「あ、アタシ? いいけど、何もできないわよ」

「いえいえ、レナ様にお任せいたします。皆さま、拍手をお願いします」


「ありがとうございます。ではレナ様、両手を前に出していただけますか?」

「こう?」

「はい… もう少し手首を離してくださ… そう、そんな感じです。ちょっと縛らせていただきますね」

「えええ、やだぁ… タク、ダイジョウブ?」

「はい、大丈夫です… お任せください、もう少しです」


1本のひもの端をレナ様の手首に巻いて「軽く」縛り、あと一端も同様に縛る。

1本のひもの端を自分の手首に巻いて「軽く」縛り、あと一端も同様に縛る。ただしペアの2人のうち、後で手首に結ぶ方の人は、自分の紐を相手の紐に一度交差させておくことを忘れないようにしてほしい。要するに二人ともに手錠をかけられたような姿になるが、鎖(紐)が一か所だけ交差している形にするのだ。


 この形で、オレとレナがくっついたあと、

「さぁ、行きますよ… 2人で後ろを向いて5秒数えますね」

一瞬後ろを向いた後で両手首がヒモで縛られている状態で離れて見せると、たいてい驚く。レナでさえ、何が起きたかわからないくらいに、だ。


 もう一回やってみようか?

わざと身体を密着させて元に戻す支度にかかる。


『ねえ、今何したの』

レナが甘えたような声でつぶやく。


「レナさん… レナさんて温かいですね」

オレはまるで関係ないことを 無声音で答えて口説いている。なぜかと言うと…


 みんなに見えない側の左腕にレナの胸が当たっている。温かくて、柔らかい。手のひらで包んでそっと撫でることができたらなぁ。


『やだ、もう』

レナは逃げない。

どころか、より正確に言うならば… 押し当ててきている…と言う方が実情に近い。


 オレの意識の99%は左腕に集中しつつある。あまりの喜びに、

「レナさん、ステキです」 

ふたたび無声音でささやいてみた。


 振り向きざまに、今度は大きな声で3人に向かって語り掛ける。

「さあ皆さん、もう一回行きますよ、よく見て」


 今度は必要以上に密着して一瞬後ろを向き、少し時間をかけて焦らしながら操作する。


「はい、見事取れました。難しそうだけど、コツがわかればカンタンです」

『わかんな~い』

「くっつき過ぎぃ!」 とヤジが飛ぶ。


「大丈夫、皆さん思っている以上に簡単に取れますよ。はい、若様とヒナ様、ミナ様とレナ様のペアでレッツ トライ! どうぞっ!」


 真の狙いは「紐ほどき」にはない。二人がくっつくこと、そしてドキドキしながら協力し共同作業することが肝心なのである。外し方は簡単だが、これを説明するときには、ペアで紐の色を替えると分かり易くなる。


 仮に私は青、レナが赤の紐であるとしよう。実は…レナは何もしなくて良いのだ。

① 私はレナの赤い紐の向こう(レナの胴体側)にある青い紐を持つ

② ①の青紐を、レナの手首を巻く輪に、ヒジ側から指側にむかって通す。

③ ②の紐は自然に半円状になっているので、てのひらをその半円にくぐらせる。

④ そのまま青紐をそっと引っ張ると、自然に離れている。


 ただし、紐を入れる方向やねじれによっては、もっと絡まってしまうこともあるので、少し練習しておくとよい。慣れれば逆にもできるし、言うなれば脱着自在になれるものである。


 御主人様はよほど嬉しかったらしい。この日、オレは2万円の心付け…予定外収入を得ることができた。 文句があるとすれば、オレのプール掃除の成果はどこ行ったのさ、ということくらいかな。

まあカネはいただいたから、どっちでも良いけどね。



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