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乳白色の裸体

医者監修の薬膳酒&カフェ「カルペ·ディエム」は、バイトとは言え常連ひいき客が出来てくると、受験勉強しかしてこなかったタケシでも客の人生の一部を共有した気分になれる特別な場所になってきていた。


今日はタケシが心理学部なのを知って面白がったエステティシャンの有紀が予約しているようだが、彼女は1~2日おきでもう4回目の来店になる。

20歳になったばかりの有紀は先輩に連れてこられて初めてこの店でお酒を飲んだのだが、本人も知らなくて驚くほど結構強くて元気で明るい飲み方をする。

もしもマッチングアプリで選ぶなら有紀がいいなとタケシが思ったのを見透かされたかのように’タケシくんとならマッチングアプリで一番に会いたいな‘と言われてしまった。

その時の視線のやり取りでお互いのシンパシーが伝わってしまったからか、その後は有紀はひとりで来てタケシと2時間ほど話をしてさらっと帰っていくようになっていた。

「カルペ·ディエム」は接客で売上金額競争をするクラブみたいな店ではないので、違法なトラブルさえ起こさなければ客と友達になって店の外で付き合ってもクビになったりはしない。

‘また、来たよ’

’ありがとうございます、4回目ですね‘

‘ストーカーっぽい?’

’いえ、どちらかというと、嬉しいです‘

‘タケシくん、なんか、どんどん話がうまくなってくるねぇ’

’他の人を見習って頑張ってる、というか、楽しいなって‘

‘仕事は楽しいのが一番だよね’

’はい‘

‘大学もちゃんと行かなきゃ、だよ’

’もちろんです‘

‘ねえ、藤田嗣治、好き?’

’レオナール·フジタですよね‘

‘彼がたくさん女の裸を書いたでしょ、その乳白色に光る肌がどうやって書かれたのか不思議でパリのサロンは大騒ぎだったんだって’

’たしか、ペビーパウダーを絵の具に混ぜたとか?‘

‘良く知ってたね!’

’うちの玄関に小さいカレンダーのポスターがあるんです、で、母がレオナール·フジタのだ、って‘

‘どんなの?’

’ちょっと眼が離れた可愛いめの女の子と猫の、なんです‘

‘代表的な感じよね’

’他には全裸の女の人の…‘

‘あ!それ、本物来てるのよ!’

‘え?’

’ワキ毛もしたの毛も黒く描いてあって肌が白いやつね、大きい絵らしいよ‘

‘本物ですか?’

’藤田嗣治が若い妻とパリの郊外で住んでたときの晩年の絵とか手作り作品とかも来てるらしい‘

‘え!すごい’

’行こうよ、見に‘

‘あー、行きたいな’


タケシはこれまで女の子と付き合ったことは無かったが、藤田嗣治の絵をどうしても見たかったので有紀と一緒に行くために待ち合わせる日時はすんなりと決まった。


当日はタケシは午後から大学の授業がない日で有紀のエステの仕事もお休みの日、平日の水曜日だったので、午後1時半から2時間ほどかけてゆっくりと藤田嗣治展を楽しめた。

その後の食事はイタリアンだったが食事よりも本物の絵からの興奮が覚めやらず、いくらでも感想を語り合えた。

タケシは藤田嗣治の描いた大きな女の裸体画を何人も何枚も見たので、目の前の有紀を見ても首から下は薄ピンクの乳首や乳白色の裸の肌を想像してしまう。

一人暮らしの有紀の誘いに一も二もなく乗って部屋に来てしまったタケシは酔っていたのか、自分から上半身を脱ぎ捨てた有紀の乳房を見て‘3Dだな…’と思うのと同時に触れていた。

’藤田嗣治のオッパイは白くてキラキラしてたな、このオッパイは少し茶色で黄色で、乳首は藤田の絵より色が濃いな…‘

‘キスしていいよ’

’(どうやるんだろ…)‘


タケシがもたもたしていると有紀は自分から唇を合わせてキスをしてくれたが、タケシにはとてもこれ以上のことはキャパオーバーだった。

有紀は、綺麗な顔立ちの男の子が綺麗な若い指で自分の乳房を触りながら不器用にキスしてくれているのが愉しかった。


’今夜はここまでね…‘

‘ごめん…’

’フジタの画、素敵だったよね‘

‘本物って、すごい迫力なんだね’

’好きになりそう…‘

‘あ、ありがとう…’


有紀は昨夜ここで35歳になる妻子ある男と全裸で抱き合った自分より、若く張りがあってシワの無いタケシと抱き合ってキスする方がワクワクして、肌と肌も自然にフィットし胸も高鳴っている今の方がすっきりと重荷無しに嬉しいのがわかった。








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