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第8話 再会


「――」


…誰かの声がする。


「――じゅ…」


聞き覚えのある…


「――教授」


懐かしい、甘い声。


「教授」


ああ、私はもう死んだのか?


「私、結たんに会えました」



……


!!


朦朧としていた意識が一気に覚醒した。


私はまだ死んではいない。今、ここは現実だ。

では…今の声は…


「あ!教授!!」


力を振り絞り目を開けると…



――友子だ…!


30数年ぶりの…


歳を重ねていてもすぐに友子だと確信出来た。

会いたくて会いたくて堪らなかった…私の愛しい友子。


友子が私の手を取る。

細くなった身体、苦労が滲んだ手…


あぁ、良かった…


友子は誰のものにもなっていない。

私以外の男の元で幸せになった訳ではない。

友子は今でも私のものだ。


それが…最高に嬉しかった。


なんとか手に力を入れる。実際には力など入らなかったかもしれない。


話そうとすると、友子が口元に耳を寄せてくれた。


優しい、昔のままの…友子。


「友子…愛しているよ…」


なんとかつまらずにこれだけ口にした。

話したいことも聞きたい事も山ほどある。だけど私にはもうそんな事は出来ない。


だから…


どうしても伝えたい事だけを…口にした。


友子は懐かしいあの頃のように頬を赤らめ満ち足りたように微笑み…一筋、涙を流した。


ずっと一緒にいたかった、いれば良かった。

私がこの手で友子を幸せにしたかったのだ。


かわいいかわいい友子。


どうか永久に私のものでいて欲しい。



「あ…えっと…すみません、私ばかり。変わります。」


友子が手を離し、私から離れる。

気づかなかった。他に誰かいたのか…?


――


―――背の高い、若い…男……


まさか…


まさか……!


(ここは浄土か!?私はもう死んだのか…!?)


目が涙でぼやける、なんとか目を見開きその姿をこの目に焼き付ける。


一目で分かった…。


間違いない



私と友子の…かわいい天使



「…ご無沙汰しております。結仁に…ございます。」


ああ、やはり…。


緊張しているような強張った表情。しかしその目にはしっかりと私が写っている。


「結…仁…」


名を呼ぶと結仁は私の声が聞こえるように耳を近づけてくれた。


大きくなって…

声も低くなって…

本当に…大きくなって…


いっぱい苦労をさせた。迷惑をかけた。

本当に本当に…


「…許してくれ」


…私は愚かな父親だった。


「知らなかった。知ろうとしなかった。…許してくれ」


結仁を守れなかった。屋敷で何が行われているのかすらも知ろうとも思わなかった。


ただただ…どうしたら友子に会えるか、また三人で暮らせないか…それだけを考えて日々を過ごしていた。


結仁の〝今〟を全く考えずに…


愚かな父を…許してくれ…



「私は、反面教師にさせて頂きます」


結仁は一瞬…物悲しい顔をして…笑った。


その口調ははっきりとしていて、決意のこもった声に聞こえた。


本当に…私の子とは思えないほど、凛々しくなって…



「長生き…されて下さい。…お父さん」



(…父と…呼んでくれるか…)


真っ直ぐに私を見据え、穏やかな顔をしていた…。


私は力尽きた為、目を閉じた。


目を閉じたら一筋の涙が枕を濡らした。



とてもとても…満ち足りた気分だった。



もう、思い残す事は何も無い。



生きて、友子に会えた。結仁に会えた。

もう叶う事は無いと…思い定めていたのに…。



(…今日は…最良の日だ…)



結仁の周りには…きっと素晴らしい人達がいてくれたんだろう。


真っ直ぐで実直で優しくて…


私以外の誰かが…結仁を…素晴らしい人間に育ててくれた…。


私と友子が…それをしたかったのだが…


それでも…結仁に出会ってくれた全ての人に…私は父として…感謝したい。



結仁…


お前は私とは違う。


……幸せになれ。


幸せに、なれ…!

再会シーンは【一生に一度の素敵な恋をキミと】の

【第一章 第59話 過去の執着への手放し、そして和解へ】

とリンクしております(*^^*)

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