第6話 歌って凄い。
確かにこれは効果があった!
お母様と合わせて、とりあえずは意味も判らず音だけでも合わせてひたすら歌っていたけど、そうするとだんだん意味も知りたくなってくるというもの。
それから「いつでも読み始めればいい」という先生の言葉で、寝る前に曲と歌詞と訳を付き合わせることに。
そしてその時ようやく、どの曲がどの国の言葉なのかと知ったくらい。
お母様凄い! 四カ国の歌を全部ちゃんと歌えていたって、どういう歌い手だったの?
お父様と結ばれたから歌手はやめたと聞いてはいたけど、どのくらい凄かったんだろうと思うとちょっとぞくぞくする。
そう言えばふと、あの管理人の言葉が頭をよぎった。声で空間を壊してしまったとか何とか。
とすると、私の声って力があるのかな。
少なくともお母様と合わせられるくらいには音程は合っているとしか言えないけど。
「お母様の言葉のリズムは完璧なの?」
「ほぼ完璧です。少なくとも歌としては確実に」
なるほど、と私はひたすら歌って、寝る前には歌詞と意味を眺めた。
すると今度は先生に聞きたくなった。
「先生、つまりこっちの言葉の**がこれなの?」
「そうですよく気付きましたね」
さてそこからは少しずつだけど、これがここに相当する、この言葉の特徴はこうだ、ということを先生は説明しだした。
ただある日気付いた。
「先生、ザマンラント、アウスラント、パラントの言葉は何かちょっと似てるんですけど、ランシャーだけ全然違うんですね」
「はいそうです。特にザマンラントとアウスラントは殆ど同じです。パラントはどちらかというと、この国と一番近いですね。ですがランシャーは作りも発音も一番違います」
「それが社交界の中心なんですか?!」
「はい。今のところ公用語の様なものです。ですが、いつまでもそうであるとは限りません」
「え?」
「ただいま世界は少しずつ変わりつつあります。マイア嬢は『連合』という言葉を聞いたことはないですか?」
「『連合』。あるようなないような」
「では、東の砂漠の向こうに巨大な国、『帝国』があるのは?」
「それは知っています。いつもの先生が教えてくれました」
「ではどのくらい巨大なのかは?」
「そこまでは」
「砂漠を挟んでこちら側全体と同じくらいです」
ひゅっ、と私は思わず息を呑んだ。想像ができない。
「向こうとこちらで鉄道を通そうという計画が進んでおります。今のところは貿易も海洋ルート頼りですが、これが通れば量はともかく速く互いを行き来することが可能になります」
「それと『連合』というものがどう関係あるのですか?」
「対抗できる力を持つには、諸国がばらばらではまずい、ということです」