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第2話 異国語が習いたい

「何だね」

「あの、私、異国語の勉強がしたいの」


 二人して驚いた様に顔を見合わせる。そうでしょうね。私がそんなこと言ったこと今まであったかしら? 

 ……ないわね。だって私ときたら、勉強は本当に嫌いで、ただただお母様の教えてくれる歌とピアノだけが好きだったんだもの。


「異国語がいいのかい? お前が!? それはまたどうして?」


 うわ、信じられてない。お父様がそんな顔するのも当然だわ。

 でもそこはちょっと。


「今結婚の話が出ましたけど、お父様のおすすめしてくれる方はきっと良い方だとは思うのですが、それがもし異国の方だったらと思うと」

「ふうん?」


 嘘だ嘘だ、とお父様の頬に当てる指が語ってる。はい。嘘です。でも。


「……嘘です。もっともっと、異国の歌を習いたいの。だけど歌詞の意味が判らないのが嫌なの。気持ちを込めて歌うには、言葉の意味を知らないと」

「なるほどそれなら納得が行くね。よし、今までの家庭教師以外に、もっと異国語に詳しい先生を探してきてあげるよ」

「ありがとうお父様!」


 私は思わず立ち上がって抱きついた。私と良く似た焦げ茶色の巻き毛がふわりと柔らかい。


「でもねえいつまでも歌ばかりじゃ」

「まあいいじゃないか。どんな理由であれ、異国の言葉はこれからは覚えた方がいいぞ」

「貴方がそうおっしゃるなら……」


 何だろう。お母様の表情が重い。



 さて夜中、そっと部屋を抜け出してみた。

 お父様は私の誕生日にしかいらっしゃらない。だったらお母様とどんなこと話しているのか、十六歳の私には気になる! 

 一応誕生日のお祝いが終わって、部屋に戻ってから考えてみたのよ。

 私は今日十五歳の誕生日を迎えた。

 でも私の中に、十六歳の誕生日の記憶までがある。

 そしてその誕生日のプレゼントが爆発した。

 プレゼントを送ってくるのはお父様。

 ……何かの間違いだとは思う。

 そして気付いた。私、お父様のこと殆ど知らないじゃない!

 十六年生きてきて、死んで、今頃そんなこと気付くなんて!

 だからちょっとでも知りたかった。二人は居間でお酒を呑んでいるみたい。そんな匂いがする。


「その連合とのやりとりが忙しいのですね。貴方は連合には参加なさるおつもりですか?」

「私としては、我が国はできるだけ独立させた一つの国家でありたいと思う。無論連合というのは、国家がそれぞれ同等に手を結ぶということだが……」


 え? 何ずいぶん話が大きい。


「何せ我が国は、北の帝国との国境砂漠の距離が最も短い場所にある。……どうしても他の国と連携を結んでおかねばならないだろう」

「私は政治のことはよく判りませんが、それはあの子の結婚話に影響致しますか?」

「うむ。そこだ……」

「貴方――― 陛下は、あの子をずっと日陰の花としてこの地に放っておかれるのですか?」


 え? 

 今お母様、陛下って言った?

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