序
―――!
*
何かもの凄い衝撃があったのよ。
光って、熱くて、……そして吹き飛ばされて……
なのに今私、何処にいるの?
闇?
あっちを見こっちを見。
よく目を凝らすと、幾つもの…… 幾千の…… 無数の蜘蛛の糸の様なものが闇の中に浮かび上がって。
私はその中でやっぱり…… 浮いてるのかしら。
底知れない闇の「上」に横たえられているみたい。
「やれやれ」
声が聞こえた。身体を起こす。
椅子に反対向きに座って私を見下ろす青年が居た。斜め上の空中から。
「何ってぇ声だよ。時空の壁を突き破ってくるなんて…… って、あんたの時代じゃ判らねえな」
栗色の髪を長く伸ばし、適当に束ねているだけの。不思議な目の色をした。
「あなたはだれ」
声が出せる!
「俺は管理人」
「管理人?」
「そこに見えるだろ? 糸の様に見えるもの。あれは全部世界の流れ。俺はそれが絡んだり壊れない様に見張ってる管理人。そしてあんたはあの世界をその声でぷっつりと途切れさせてしまった犯人」
「……は…… ?」
「この先続く時間が消滅しちまった。ということであんたには責任とってもらおうと思う」
「え、何? 責任?」
ちょっと待って、何を言ってるかわかんない。
「あんたはブレゼントに仕掛けられた爆弾で家ごと爆破されて死んだんだ。ただその時にとんでもない声を上げた。それがあんたの居たこの世界線」
きらきらと輝く糸の様なものを彼はつまみ上げる。
「それを切ってしまったんだよね。凄い声だ」
判らない。このひとは何を言ってるの。
でもこのひと、プレゼントのこと知ってるわ。あれはお父様から来たもの。
「……お父様からのプレゼントが爆発したって言うの?」
「誰からかなんてのは俺は知らない。ともかくあんたが壊した時点で起こったことはそれだけ」
「え? そんな、世界線? 何の」
「うん、あんたが理解できないことは判る。だからまあ、ともかくあんたはあんたのできることをしてみな」
彼は切れた糸の端をつまみ上げる。
「この切れ端の少し前にあんたを戻す。そう、一年前だな。そのまま何もしなかったら同じことが起こって、あんたはお母様とやらと一緒に殺される」
「そんなの…… 嫌!」
「じゃあ、何とかしてみろや。俺としてはあんたが絶叫する様な死に方をしなければいいだけだけど」
何って言い草!
「まあ生きてりゃ何とかなるさ」
それが彼の最後の台詞。