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CO2排出規制


 食堂を出たところで四天王の一人、巨漢のサイクロプトロールと出会った。

「おはようございます魔王様」

「うむ、おはよう」

 巨漢で筋肉質なのが自慢のサイクロプトロールは、体重100キロ。身長も2mを超える大男なのだが、寒くなるこの時期には毎年服を着ている。

 今年は流行りのヒートテックハイネック長袖シャツを着ていて……まったく強そうに見えないぞ。

「冬は寒いからこうして服を着て暖房器具の省エネを行っております魔王様」

 ――!

「おお、さすがはサイクロプトロール! 卿のそういうところは皆も見習わなければならぬ」

 ……悔しい。私は全身鎧姿のモンスター。上に着れる服など……3Lでも見当たらないっ!

 マフラーも巻けない! 首から上が無いから……「巻く」というより「乗せる」になってしまうのだ。

「魔王様、寒くなければ一緒で御座います」

「おお、デュラハンは痩せ我慢だな?」


 痩せ我慢なので痩せ我慢かと聞くのはおやめください!


「風邪ひくなよ。ハッハッハ」

 ……同じ四天王とは思えぬ肝っ玉の小さい男め……。絶対に風邪を引かないようにして――見返してやる!



 二階では妖惑のサッキュバスが……今日も朝から飲んでいた。まだ七時だぞ……。


「あら、二人共こんな朝早くからわたしに会いに来てくれたの? 嬉しいわ」

 フワフワのクッションから立ち上がると、ニッコリ微笑みながら近付いてくる。

「それ以上近付くでないサッキュバスよ。魔王様の御前だぞ」

 近付いてくると……キスされそうで怖い。

 ……私には顔がないから安心だが、魔王様が危険に冒されてしまう。


「サッキュバスよ。卿はCO2削減にどのようなことをしておるのじゃ」

「やだ魔王様。ひょっとして今、わたしの胸元見てた?」

「見ておらん!」

 話を逸らすなと言いたいぞ!

「デュラハンには聞いてないわよ」

 この寒い時期にヒラヒラと露出の多いドレスを着て……まったく破廉恥だ!

「デュラハンは相変わらず視線がいやらしいわね」

 慌てて視線を逸らす――。

「み、みみ見ていない!」

 額から汗が吹出すではないかっ!


 サッキュバスは自分専用のバーカウンターで小さなカクテルグラスに怪しい色のカクテルを作り始めた。極めの細かい泡がシュワシュワと音を立てる。


「わたしのCO2削減はこれね。炭酸水よ」

「炭酸水?」

 話が難しくなってきそうで……頭が痛くなってきそうだ。

「ええ。水にCO2を溶かしているの。これってCO2の削減になるでしょ」

 バーカウンターの足元には……得体の知れない緑のボンベが転がっている……。水にCO2を溶かしているから……その分のCO2が削減されると言いたいのだろう。

「それで、そのCO2を溶かした炭酸水はどうするのだ」

「飲むのよ」

 くいっと細かな泡立ちのあるカクテルを一気に飲み干した。自分で作って自分で飲む?魔王様と私を差し置いて――。


 ……顎から首……胸元へのラインが美しいのだが……うん?

 カクテルに溶かしたCO2はどうなるというのだ――。


「あー美味し~! ゲップ、あら失礼」


 出た。

 たった今、大気に放出されました。


「――魔王様の御前でゲップをするなと言いたいぞ!」

 ゲップからもいい匂いがして……嫌になる。私には鼻は無いのだが……。

「他にも出るところがあるんだけど……、し・り・た・い?」

 いつの間にかすっと近付いてきて顎を細くてしなやかな指で触れられる――! 顔から上が無いはずなのに、真っ赤になってしまう~!

「バ、バ、バカ者! しりかしりたいか知らないが、それ以上は色んな制約に触れてしまう!」


 R15とかPG12とかになれば、少ない読者がさらに少なくなってしまう――!


「CO2の削減はできていないから『不適合』だな。『是正処置が必要』っと」

 魔王様がスラスラとA4の用紙に書いていく……。目の前でゲップされたことに少し怒っているのかもしれない……。

「そんなことないわ。もう一杯飲むから許して魔王様」

「「――飲まんでいい!」」

 まとわりつこうとするサッキュバスから逃げるように部屋を出た。


 あの部屋にずっといると妖惑の力に中てられてしまいそうだ――。



 魔王城三階の四天王、聡明のソーサラモナーの削減方法は……引きこもりだった。

 大した期待はしていなかったのだが、言うとこがいちいちごもっともなので腹が立つ。


「こうやって外に出ず、じーっと部屋の中にいた方がCO2の削減につながるだろ」

「……」

 滅多に洗濯しない埃臭いローブもCO2削減だと言い出す始末だ。面倒くさいことをCO2削減で済ませないで欲しいぞ。

「確かに理にかなってはいる。だが、なにも努力はしていない」

「そもそもその努力でCO2を排出するのなら逆効果じゃん」

「「……」」

 ああ言えばこう。こう言えばああ。なぜ魔法使いとはこうまでひねくれているのだろうか。三階まで上がって来て損した感……。確かにこの階段の上り下りにも少なからず労力を使っている。


 魔王様は階段の上り下りだけでフーフー言っている……。


読んでいただきありがとうございます!

ブクマ、感想、ポイント評価、面白かったらレビューなどもお待ちしております!

身近にできるCO2削減を考えて実践しましょう!!

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