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魔王様、CO2削減はおやめください


「なーぜーじゃー」

 玉座の間に魔王様の低く太い声が……小鳥のさえずりのように響き渡る。

 声には怒気が含まれていてドキっとする。


「予は間違ってはおらぬ! こればかりは魔族、人間、読者、全員が満場一致で予が正しいと思うはずじゃ!」

「しかし魔王様」

「しかしではない! 口答えするではないデュラハンよ」

「――!」

(けい)はいっつもそうじゃ。まず真っ向から正論で反対意見を吐く! 予は魔王なのだぞよ。せめて一言目くらいは「そうですね、さすが魔王様ですね」があってもよかろう!」

 魔王様のおっしゃる通りだ。少々口が過ぎてしまった。

「……そうですね、さすが魔王様ですね。しかし魔王様」

「早いわっ! しかしが早過ぎるわっ!」


 ぐ……。魔王様の間……微妙。


「予を誰と心得る」

「……魔王様に御座います」

「卿はまだ若いゆえ、予の真の怖さを知らぬようだ」

 魔王様が玉座から立ち上がると、眉間にシワをよせたまま玉座の間の窓際へとゆっくりお歩きになられた。

「――?」

 コツコツと木靴の音が静寂した玉座の間に響き渡ると、シーンと張り詰めた空気に身が震えた。

 高さ数メートルある磨かれた窓から朝日が射し魔王様が眩しい。まさか、本気でお怒りになられている――?

「宵闇のデュラハンよ」

「はっ!」

「卿は自分の首から上が何故ないのか……知らぬであろう」


 ――!

 額を汗が伝う。首から上は無いのだが……。


 以前からおかしいとは思っていた。

 小さい頃から私だけ首から上がなかったのだ。大きくなったらいつかはタケノコのようにニョキニョキ生えてくるものだと信じていたのに、未だ先っちょすら生えてこない。タケノコの皮が剥けて空を目指す竹のように、ニョキニョキと顔が生えると信じていた――。

 魔王様には……枯れない井戸のような無限の魔力がおありになると聞いたことがある。どうせでっち上げた嘘だと思っていたが……。

「――ま、まさか魔王様」

「フッフッフ。そうだ。気が付いたか」


「――いや、ぜんぜん分かりません。ごめんなさい」

「……」

 魔王様、少し落胆。

「教えてやろう。卿に首から上が無い真の理由を――。


 ――卿のお父さんとお母さんも首から上がないからだ――」


 ――!

 知ってるし――!


 そんなことぐらい小さい時から知ってるし! 知っていてなおその理由が……根源が聞けると思ったからドキドキワクワクしていたのに!


 期待を裏切られる感……おパね~!

 ある意味魔王様、おこえ~!


 魔王様は何事もなかったかのように玉座へと戻られた……。コツコツ木靴の音が……今は少し歯痒い。


「話が脱線してしまったが、二酸化炭素……(以降CO2と呼ぶ)の削減は魔族と人間が行わなくてはならん。こればっかりは絶対に予が正しい。間違ってはおらぬ事実。正義なのじゃ」

「しかし魔王様!」

「――!」

 魔王様は餌をおあずけされたような驚きの表情を見せる。

「炎の精霊に『燃えるな』とはあまりにも御無体! 消えてなくなれと言っているようなものです!」

「……」

 魔王様がお書きになられたA4用紙のCO2削減リスト……内容がえぐい。

 手書きの字も汚く漢字間違いが多過ぎるのも……えぐい。


「さらに、『ドラゴンは火を吐くな』と命令すれば、それはもうドラゴンではありませぬ!」

 大きなトカゲと変わりませぬ――! コモドドラゴンは大人になってもコモドドラゴンにございます。メダカはメダカ説でございます!


「あと、一日一分以上息を止めろと言われても、止めた後にそれ以上吸って吐いてを繰り返せばCO2は変わらないはず!」

「……」

「真夏のエアコン停止なんてムリムリ! 熱中症で敵味方老若男女を問わず皆殺しにするおつもりですか?」

 ――まさに魔王です! 真の魔王です! 怖すぎる~。


「ではどうしろと言うのだ! 今CO2を削減せねば、いつから削減できるのだ? 温暖化は予ほど寛大ではないのだぞよ」

 ――待った無しなのだぞよ?


 じっと私の話を耐えて聞いていた魔王様が玉座の肘置きを指先でキュウっと摘まんだ。怒っている……怒っているぞ。

「エアコンの設定温度を……夏は28℃。冬は18℃に設定しましょう」

「……」

 エアコンなんて付いていないのだが。

「あとは……魔王城の……松明(たいまつ)をLED化してみます?」

「手ぬるいわ! チンバカ!」

「痛いっ!」

 頭をしばかれた――! そりゃあ、削減対策として効果が小さくありきたりなのは分かるが暴力は反対だ! 首から上は無いのだが……。

 チンバカって……なに? ああ……バカチンの対義語か。


「とにかく、CO2は会議室で排出されているんじゃない。現場で排出されているんだ!」

「……」

「着いてくるがよい。魔王城内外を査察するぞ」

「はっ!」

 玉座から立ち上がると疾風の如く廊下を走った……。


 今日も長くなりそうだ……。


読んでいただきありがとうございます!

ブクマ、感想、ポイント評価、面白かったらレビューなどもお待ちしております!

身近にできるCO2削減を考えて実践しましょう!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] 出だしから、面白過ぎますΣ(゜Д゜) これからどんな案が出てくるのか、実行するのか、楽しみです! 魔王様だから、どこかズレた可愛い案が出てきそう(笑)
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