俺の魔力が世界を動かす
やったぞ、俺は手に入れたんだ!
転生者として神から無尽蔵な魔力という底なしの力を。
この力さえあれば俺は最強、唯一無二、絶対無敵。俺がこの世界を救うかもしれ──。
「いいだろ? ちょっと付き合えよ」
「やめて下さい……!」
おっと、御あつらえ向きに女性が絡まれている。
俺が片付けてやろう。
「おい、その人から手を離すんだ」
「あぁん? 何だこのガキ」
女性は俺に懇願するような目を向ける、しかも中々可愛い。
よしよし、俺のハーレム一号はこの子だな。
「口で言って分からないなら──」
「体で分からせてやろうじゃねぇか」
台詞が途中で取られてしまったが俺の望んだ展開だ。
悪漢たちはナイフを取り出し俺に向ける。これが前世なら泡を食ったように逃げ出すところだが──。
「フッフッフ……」
思わず笑いが漏れる。俺が魔力を増幅させようと腹に力を込めると、体の奥からとんでもない力が溢れ出す。例えるなら蒸気機関・剥きだしのエンジン。
悪漢どもの顔色が変わるのが分かったが手遅れだ。
「た、助け……!」
「おい、逃げろ!」
悪漢どもが背を向ける、だが少し痛い目に会って貰おう。
俺は溢れる力を制御してほんの少しだけ解放し──。
「キャー! 殺されるー!?」
「……え」
助けるはずの女性がなぜか悪漢とセットになって逃げて行く。
おいおい……。
「ちょっと君、何やってるの」
そこにやって来たのは鎧に身を包んだ騎士のような中年男だった。
「何って、人助けを……」
「怖がらせてるのは君の方じゃない? ダメだよ、そんな強い力。魔術法に引っ掛かるよ?」
「魔術法……?」
「魔力術式等不用意発動取締法、知ってるでしょ?」
「いえ……」
「はい?」
その法律はかなり昔に施行された物らしく、例え威嚇行為であれ魔力を見せた時点で捕まる事になる。
この世界で何があったのか知らないが、魔力が相当危険視されているようだ。
これには困ってしまった。俺はこの有り余る力をどうすれば……。
「ちょっと兄さん、いいかな」
俺に声を掛けて来たのは柄の悪そうな男だった──。
「うおお! 俺の無限のパワーを見ろ!」
「いいよ兄さん、いいよ!」
俺は地下室に居た。
思った以上にこの世界はハイテク化が進んでいるらしい、魔力を使った動く歩道という構想に俺はこの溢れる魔力を注ぎ込んでいる。
「凄い力だ、最高だよ!」
俺の中から凄まじい力が溢れ返る、例えるなら蒸気機関・剥き出しのエンジン。
俺の力が世界を変える、俺こそ最強・唯一無二の男!