#3初戦
こうして俺達は相談部としてこの部活棟の一部屋でたむろっている訳だが。いつ、初バトルがあるのやら。聞いてみるか。
「俺達の初戦っていつなんだ?」
「あっ、言うの忘れてた!あと2日後よ。」
「その敵の能力は分かったりするもんなのか?」
「ええ。その時の敵で強い能力は分かるし、言っていいことになってるわ。」
「早速教えてくれよ。」
「分かったわ。今回の敵で強い能力は2つでひとつって感じね。」
「まず操り人形。そして人形使い。それぞれ一つだけでは意味が無いわ。ふたつ揃って意味を持つ。人形使いが操り人形に付与したい能力を操り人形に聞こえるように言う。するとその能力が操り人形に付与されるわ。」
「どっちでも1人潰せば大丈夫なんだな。」
「そういう事ね。」
「ところでその能力名って誰が考えてるんだ?」
「その能力を作った精霊が付けるわ。あなた達の異能は私が作ったわ。」
「神城って結構喋んのな。」
園崎が聞いてきた。
「まあ俺は自分と関わらないやつと喋らないだけだ。麗なら昔の俺のこと知ってると思うぞ。」
「どういうことだ?」
「俺達は幼なじみなんだよ。な?」
「そうね。あんたと零と一緒によく遊んだっけ。」
「俺が“れい”って呼んだらふたりとも振り向いて呼ぶの大変だったんだよな。」
「だって2人とも“れい”だもん。」
「何故か急に話さなくなったんだよな零が死んじまってから。」
「その話はしなくていいから。そんな感じよ、私たちの関係は。」
「へーそうだったのか。意外だな。」
話を変えておくか。
「思ったんだが操り人形と人形使いの弱点ってなんなんだ?」
「能力を付けていくと人形使いの体力が消耗していくわ。」
「OK」
そこでチャイムがなった。
~2日後~
「ついに今日か。言ってたとおりにトップ2から潰してくぞ。」
「神城君ちょっと言い方怖いかな?」
「篠原さんが話すって珍しいな。うーんじゃあトップ2から倒してくぞ。」
「うん。ちょっとはマシになった。」
「みんな準備は出来た?もう転送されるわよ。」
「「「OK」」」
「大丈夫です。」
「了解。」
「じゃあ転送!」
一瞬目の前が白くなって眩しくて目をつぶる。目を開けた時には目の前には荒野が広がった。ぽつぽつと廃ビルのようなものが見える。なんというかFPSでありそうだ。
「開始の合図はそれぞれの脳に直接伝えられるわ。」
言ってるそばから早速聞こえてきた。
『これよりキルネスチームVSガオルチームの戦争を始める。』
「さあ戦争開始だ。」
「花咲、魔眼は出来たか?」
「うん。今相手の言葉を盗み聞いてるところ。」
「OK。じゃあ俺と園崎でトップ2を倒してくる。他の奴らは頼んだぞ。」
「りょーかい。」
「あっ敵が動き始めた。神城君の予想通り。あの二人だけで動き始めた。」
「じゃあ行きますか。」
「場所は分かるの?」
「まあ分かるぜ。」
「え、なんで?」
「私が魔眼で教えてる。」
「一瞬でも園崎のことを凄いと思いかけた自分が恥ずかしいわ。」
「もういいか?」
「うん、もういい。行って恥ずかしいし。」
「行くぞ園崎。」
「お、おう。」
脳に送られてくる情報を頼りに探しに行くか。
「園崎、言ってた通り足の速さ上げる靴作ってくれ。」
「ふっもう作ってんだよ。」
「お前にしては早いな。」
「しては、が余計だ!」
「静かに、敵だ。」
「お前俺に酷くねーか?」
「そうか?」
前から来てる2人が操り人形と人形使いだろう。
「花、敵さんのお出ましのようよ。」
「奏どうするの?」
「戦うでしょ。もちろん。」
挨拶くらいしとくか。
「どうも俺は神城影だ。これは園崎聖人。 」
「これって酷くねーか?」
「どうもご丁寧に。私は高梨花、こっちは花園奏。」
「こちらこそどうも。じゃ、戦いますか。」
「そうね。」
「合図はどうすんだ?」
「じゃあそこら辺の石でも投げて落ちた時でいいかな。」
「いいぞ。」
高梨が石を上に投げる。放物線を描いて石が宙を舞う。
そして、地面に石が落ちた。
「奏、足の速度アップ。あと力もアップ。」
「園崎、来るぞ。」
俺と園崎は、一直線に突っ込んでくる花園を避けた。
「こっからどうする。」
「ダメもとで聞いてみるか。」
「なあ高梨、俺達は女子を傷つけたいとは思わねーんだ。降参してくれねーか?」
「無理に決まってるじゃない。」
「だよなぁ。」
「一旦逃げるか作戦通り。」
「だな、作戦通り。」
俺達はとりあえず逃げることにした。これも作戦だがな。
「ちょっまっ逃げる気?」
俺達は黙って走り続ける。
「なんであんた達そんなに足速いのよ!」
「花、私が。」
「うんでも離れすぎると追加出来ないからね。」
作戦通り進んでるようだ。操り人形が追いかけてくる。
「奏、筋力アップ。」
花園の速度が上がる。
「もうそろそろいいんじゃねえか?神城。」
俺達はあの後そこそこの距離走っている。
「そうだな。操り人形は頼んだぞ。」
俺は横にそれる。案の定、花園は俺にきずかず走り抜けていく。
少し遅れて、高梨も来た。
「なんで全員あんなに速いのよ。」
少し休憩している高梨に俺は話しかける。
「疲れてるんじゃねえのか?」
「あんたそこにいたの?」
「疲れてるんだろ。お前は追うのに夢中で能力の欠点を忘れている。初バトルでこんなに重複して能力を付与すれば当然疲れるだろうよ。」
「な、何が言いたいわけ?」
「降参する気は?無意味な殺しはしたくねーんだ。」
「ないわ。」
「だよな。」
俺は鋭利な刃を持つ片手直剣をイメージする。重さも匂いも色も鮮明に。俺の手の中には一振の黒く鋭い片手直剣が握られていた。
「何をする気?」
「残念だが、戦争から退場の知らせだ。」
俺は高梨の首に剣を振り下ろした。ザシュッっと音を立てて、高梨の首が飛んだ。俺に血しぶきが飛ぶ。高梨が血溜まりを作っている。返り血はどうなるのだろう。すると体と首が離れた高梨が光に包まれる。恐らく記憶を消されて新たに別の記憶を埋め込まれて、元に戻るんだろう。
「神城、終わったか?ってなんで血だらけなんだ?」
「ああ、高梨の返り血だよ。そっちは終わったのか?」
「終わったよ。能力が消えた瞬間悟ったんだろうな。すぐ降参してくれた。」
「良かった。」
その時、また脳に声が聞こえてきた。
『勝者はキルネスチームとなった。元の場所に転送する。』
また、目の前が白くなる。目を開けるとそこは相談部の部室だった。見回すと全員がいた。全員の反応を見るからに返り血は消えているのだろう。
「初戦勝てたな。」
「しゃー!」
「当然よ。」
「良かったー。」
「そこまで危なげもなかった。」
その時キルが目の前に現れた。
「みんなやったわね。凄いわ。」
「当然だろ。」
その時、下校のチャイムが鳴った。