#2異能
俺は目の前の状況を嘘だと信じたかった。
あいつが逃げてと叫ぶができない。逃げることができない。
当たり前だ。足を折られてるんだできるはずがない。
あいつがフード野郎に首を捕まれ足が浮く。
フード野郎はにやけながら
「プレイヤー候補を二人も殺すのは発案者として気がひけるな。こっちの女だけ殺すか。」
立ちあがって助けたいがかなわない。あいつは無慈悲に投げられた。フード野郎が持った銃が二度火を吹いた。あいつは空中でただの人の形をかたどった肉の塊になった。最後に何か言うこともかなわなかった。
フード野郎は
「死んだ方は新しい異能の実験台にするとして残ったこいつはどうするか。やっぱり両方殺すか。」
フード野郎は俺の前に立ってそう呟いた。できるならそうしてほしい。あいつが目の前で血の水溜まりを作っていた。
「あぁそうだ!最近手に入ったあの異能を入れとくか。」
そしてフード野郎が俺に手をかざし何か呟き始めた。聞き取れない。人間には理解できないだけかもしれない。フード野郎は精霊だ。調べたから分かる。
「最後に名前を教えておいてやろう。俺の名前はーーーーーーーーだ。」
久しぶりに夢を見た。夢を見ることはあまりない。あのときから。見たとしても同じ夢だ。
「やっぱり名前のところだけノイズがかかってるんだな。」
顔や言葉、臭いまで鮮明に覚えているのにそこだけは出てこない。悩んでも出てこないのは分かってる。諦めよう。
着替えてリビングにでると
「おはよーお兄ちゃん。」
とかわいい声が聞こえてきた。妹の光だ。俺の親は何故こんなに対象的な名前をつけたのだろう。今となっては知る由もないが。
この家には俺と光だけで住んでいる。
「お兄ちゃん、なんで泣いてるの?」
どうやら俺は泣いていたらしい。あのことで光にまた謝らせたくない。
「さっき欠伸したからだろ。」
「よかった。またあのことで泣いてたのかと思っちゃった。」
「あのことのことは話さないって決めただろ。」
「あっごめん。」
「別にいいさ。」
テーブルには美味しそうな朝食が並んでいた。
「飯食おうぜもう。」
「そうだね。」
「お兄ちゃん。時間大丈夫?」
時計を見るといつも出る時間だった。寝坊してたらしい。
「ごめん。朝飯」
「あ、うん。行ってらっしゃい。」
「いってきます。」
学校の6時間の退屈な授業を終え、旧校舎に向かう。
扉を開けると
「お前も来たのか。」
園崎の声が聞こえた。見れば全員来ていた。
「全員揃ったのね。」
後ろから声が聞こえた。」
「1人ずつ自己紹介しましょう。私はいいわね。」
「俺は園崎。園崎聖人だ。趣味はこれと言ってない。」
「私は棚田麗よ。歌が好きね。よろしく。」
「私は篠原凛、です。本が好きです。」
「私は花咲愛依。」
「俺は神城影。趣味は読書。」
まあ自己紹介はこんなとこだろう。
「ずっと思ってたんだがお前何組なんだ?」
園崎の質問だ。やっぱり認識されてなかったか。
「俺はお前達と同じ2組だ。」
「マジか。知らなかった。全員の名前覚えてる思ってたよ。」
「認識されてないのは慣れてるよ。」
「さて全員自己紹介が終わったようね。さっそくそれぞれの異能を教えるわ。」
「まず園崎君のは有言実行。言ったことを実現させる異能よ。」
「それって強すぎねーか?」
「まあ実現させるものの規模が大きいほど体力の消費が大きいわ。」
「次に棚田さんは時間掌握。自身の速度を上げたり、時を止めたり敵をスローにしたり出来るわ。これも制限付きで敵には2分自身には3分止めるのは1分よ。ただどれだけスピードが変化しようと制限は変わらないわ。使った後に10秒ほど動けなくなるから気をつけてね。」
「つえーな。」
「篠原さんのは、過剰回復。味方を回復出来るのと敵を過剰回復させて攻撃出来るって異能よ。自身には使えないから注意して。」
「花咲さんの異能は魔眼技師。自身の目に色んな能力を付与出来るわ。でも片目に3つまで。さらに魔眼化した目は視力が無くなるわ。でも戦いが終わったら戻るから安心して。重複して付与する時は付与してない目にも影響が出るわ。2つなら少し霞むぐらいだけど3つだと曇って見えないような感じになるから気をつけてね。」
「最後に神城君のは天下夢創。これは、思い描いているものを作り出せるの。ただ、取り乱したりしたら消えてしまうわ。逆に冷静なら何個でも作り出せるわ。体に負担がかかってしまうから、無理して使ってると五感が少しずつ衰えていくわ。これは異能の負担の副作用だから消えないわ。注意して。」
「ざっとこんな感じよ。質問は?」
誰も手を挙げない。
「なら部活に入って、戦争をするわよ。戦争の日程はその都度連絡するわ。」
「今日はこの辺でお開きってことで。これからよろしくね。」
俺たちは解散した。聞いてた感じ俺たちの異能は強いみたいだ。これから勝って行ってこの戦争に終止符を打ってやろう。
俺は夕暮れ時1人ニヤリと嗤っていた。