救世会編14
しかし、この日を境に問題が起きました。信者が激減していったのです。良くも悪くも、救世会という教団はあくまで母を中心に回っており、ただの側近であった父にも、未熟な私にも、母の代わりを務めることは出来ませんでした。日に日に信者の数が減っていく中、それをなんとかしようと、私は1つの嘘をつくことを決めました。それは、私が神託を受けたということです。
実際にはそんなことはありませんでしたが、大半の方はその言葉を信じました。受け入れ、崇め、奉り始めましたが、事はそう単純ではありません。いくら神が降臨しようとも、昔からの信者にとっては、神よりも教祖を信頼していたのです。信者全員を救世会に留めることはできませんでした。まったく、偉大な教祖を持つと苦労します。
信者を集める‘作業’に関してはこの嘘でなんとかなりましたが、他にも問題がありました。他の宗教団体からの攻撃です。攻撃というと野蛮な印象がありますが、実際のところはそれよりも陰湿で厄介なものです。昔はこれに‘人の輪’という、人脈という理想的な力をもって対処していたのですが、かつての私達にその力はありませんでした。人数だけ集めた、バラバラなものだったんですから。それを輪にして力とするには、あまりにも時間が足りませんでした。
これに対応するべく、父は外に協力者を求めました。はっきりと言うならテロリストです。父は彼らに武力と資金を求めました。邪魔なライバル団体を潰す暴力と、どこにでも布教へ行ける資金を求めました。今の救世会の知名度を見ておわかりの通り、父の企ては上手くいったようです。しかし、全てが丸く収まることはあるはずがありません。彼らが、テロリスト達が武力と資金を救世会に提供する代わりに求めたのは場所です。隠れ蓑として、自分達を救世会の信者として、富山にある救世会の総本山に居座らせろというものでした。
もちろん、父はその条件を飲みました。救世会を存続させるためなら、藁どころか泥船だろうが、爆弾だろうが縋るような人ですからね。
そして、今も尚彼らは総本山のほうにいます。沢山の武器と一緒に。
ここまで話せばわかるでしょう。何故彼らが銃を持っていたのかが。いえ、これは正確ではないですね。言い直しましょう。何故彼らのような一般市民が、銃に触れられる機会があったのか。
恐らく、彼らはテロリスト達の目を盗み、こっそりと銃を持ちだしたのでしょう。それほど心配だったのです、私の身の安全が。銃を持ちだしたことについては、私のほうから上手く言っておかなければいけませんね。
あ、大丈夫ですよ。これでも私は神様ですから。救世会のトップである私の口添えがあれば、大事になることは避けられるでしょう。
さて、ぐだぐだと長いこと話してしまいましたが、私があなた方に聞いて欲しい話は以上になります。
ご清聴ありがとうございました。
「何で俺達にそこまで話した?」
今神ちゃんが話した内容に嘘があるようには聞こえず、そのような素振りもなかった。俺が見抜けていないだけで、嘘をついている可能性は無きにしも非ずだが。
しかし、神ちゃんが嘘をついていないということを前提とすると、1つ疑問が生じることになる。俺達と彼女は初対面であり、そこに深い信頼関係などはない。そんな間柄にも関わらず、彼女はいろいろと話してくれた。信者に聞かれたくないだろうことまで。俺達が信者に今の話を話す可能性もあるにも関わらず。
まぁ、俺達の言葉なんて信者の耳に入らないだろうという考えがあったのかもしれない。耳に入ったところで、神ちゃんが俺の話は全部嘘だと、あいつは詐欺師だと言うだけで、その件は終わってしまうのだから。なんだったら、信者全員が俺を詐欺師として襲い掛かるという可能性まである。しかし、それだけではないだろう。他の理由があるように俺は思える。
「理由は2つあります。1つはあなた方が風紀委員だからです」
「風紀委員会則、3条8項か?」
「えっと・・・あ、そういうことですか。確か3条8項には、‘調査で得た情報をむやみやたらに周りに漏らしてはいけない’みたいな内容でしたね」
さすが優等生。入学前から風紀委員の会則を暗記しているとは、大したもんだ。
「2つ目の理由は信頼を得ることです」
「信頼ですか?」
「そうです」
「俺達の信頼を得てどうする気だ?まさか、友達になりたいとかじゃねぇだろ?」
「もちろんです」
神ちゃんはそう言った後、居住まいを正しこう言った。
「救世会という団体の解体、破壊。これをあなたがたに手伝って欲しいのです」




