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執筆練習中です。
第一章 死神の招待者たち
西暦2050年、日本社会にある奇妙な事件が起き始めた。
それは例えば、人の体がまるでプレスされたようにペシャンコに潰されて閑静な住宅街のど真ん中に
ある日突然放置されていたり、普通に歩いていた人間が突然苦しみだして原因不明の発作で死亡したりと
様々だった。
警視庁はこれらの事件を謎、不可思議、原因不明などの点から捜査対象「Ⅹ」と呼称しこれらの案件をす
べて「コードⅩ」と呼び、日本社会を脅かす緊急事態として対処することになった。しかしながら原因や因
果関係がほとんどなく、ほぼ突発的に起こるコードⅩに警視庁の対策課は後手に回ってしまうのだった。
西暦2052年。四条恵理は警視庁庁舎のエレベーター内で深呼吸していた。目の前にはグ
レーのスーツを着た恵理より頭二つほど身長の高い男が立っており、深呼吸した彼女を首だけ後ろに向けて
苦笑した。
「四条、あまり緊張することないぞ。」
「あ、はい!ですが一応他の部署と事件の『質』が違いますから・・・。」
「ま、そりゃそうだけどさ。お前だってもう三年も勤務してるんだ。すぐにⅩ対策課の環境にも馴染むさ。」
「はあ・・・。」
恵理の心配をよそに先輩刑事は両肩を揺らして笑っている。少し不安になった彼女だったが、コードⅩの対
策室の扉を開けてその不安は払拭される。部屋に入った瞬間、両サイドから先輩刑事と恵理に拳銃が突きつ
けられる。恵理は思わず両手を挙げて短い悲鳴を上げるが、先輩刑事は小さいため息をついて肩をすくめ
た。
暗い部屋、水の滴る音、背中に感じる柔らかい感触。男が目を開けると天井には大きな鏡があり、そこに
映った自分の視線が怪訝そうに見返していた。ベッドから上体を起こす。下半身に下着一枚しか纏っていな
いことに気がつく。すると横からバスローブが飛んできた。
「おはよー、壬。寝るときはちゃんと服着ないと風邪ひくよー。」
「蓮・・・いたのか・・・。」
壬は受け取ったバスローブを着るとベッドから降りた。ベッドのそばにあるドレッサーに座っていた少女は
壬がベッドから降りるのを見ると彼の着ているバスローブを引っ張って机の上に乗っている電源の落ちた
ノートパソコンを指差した。
「起きたんだから電気はよ。」
「ああ、そうだったな。」
まだ寝ぼけ気味の壬は両手で顔をこすって目を無理やり見開く。意識が少し覚めたところで深呼吸して部屋
の隅にあるブレーカーを開けて中の回路に手をかざした。壬が手をかざした瞬間、青白い光がブレーカー内
の回路を走り壬達のいる部屋の電化製品たちが一斉に音を立てて起動し始めた。蓮の持っていたノートパソ
コンも例外ではなく、コンセントにつないだコードから電気を得たノートパソコンはすぐに起動した。
「今日一日はこれでもつはずだ。」
「サンクス!」
「・・・少ししたら仕事に行く。サポート頼む。」
「まじ!?外行くんだったらiTunesカード買ってきて!」
「またか・・・ソシャゲの課金もほどほどにしとけ。」
大きなため息をつく壬に、蓮は両頬を膨らませて抗議する。
「いいじゃん別にぃー、私の報酬分でやってるんだし!」
「携帯端末から足がつく。」
「その辺も私の『力』で何とかなるし~。」
「あまり能力を過信するな。『人』としての性分を忘れるぞ。あと、お前最近太ってきたんじゃないか?」
「え!?」
蓮は思わず自分のおなかを摩る。そんな彼女を尻目に壬は浴室へ消えていった。