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解決編

 彼女の問いに、私は口を開いた。

「そういうお前はどうなんだ?いちファンとして」

「うーん、私は…」


 若干戸惑いながら、彼女は真ん中の少女を指差した。


「水谷由香里…ですかね」

「『心だけファン』か。どうして?」

「だって、死因は心臓の失血死なんでしょう?まずはじめに心臓を切り抜かれて、それで山田さんは死んでしまった。そのあとで、「顔ファン」や「手ファン」がやってきて…」

「三人とも犯人で、死体から切り取っていった?バカな」


 私は笑った。いくらなんでも大ファンだったミュージシャンの死体を見て、今のうちに好きな部分だけ盗もうなどと考える余裕がある人間が、三人もいるはずがない。私の態度に、谷口は口を尖らせた。


「大体、『心だけファン』が、いきなり心臓を傷つけると思うか?持ち帰るつもりなら、その部分は最後まで大事に取っておくだろうよ」

「じゃあ、警部は誰が犯人だと思っているんです?」

「俺はな…被害者の山田本人だ」

「えっ?」


 彼女は目を丸くした。


「一般的に、死体の顔を隠すのはどんな時だと思う?」

「それは…あっ」

「そう…『死体偽装』だ。山田宅で殺されているからと言って、彼本人とは限らないからな。事実、今日上がってきた報告では血液型が違ってたそうだ」

「じゃ、じゃああの死体は…」


 慌てふためく谷口に、私は推理を披露して見せた。


「あれは多分、三人目の容疑者、東正志のものじゃないか?『手だけファン』の。最後に手を切り取ったのは、彼の犯行だと見せかけるため…」

「持ち帰るほど熱狂的に「ファンしてる」から、最後に切り取ったと思わせようとしたんですね」

 谷口が納得したように頷いた。


「ま、推測の域だがな。その線で山田を追ってみてくれ。今頃うまいこと県外に逃げ出してるかもしれない。元々ヴィジュアル系で化粧しながらステージ出てたんだから、スッピンだとファンでも山田の顔に気づかない可能性は高いからな」

「そういうことですか…あんちくしょう!」

「おい、谷口」


 声を荒げ、意気揚々と出て行こうとする谷口を私は呼びとめた。


「お前、何ていうか、本当にこのバンドのファンだったのか?どうも冷めてるというか…」

「何言ってんですか、ファンでしたよ!容疑者三人に負けないくらい、熱狂的なファンです」

「それにしては、バンドマンが死んだってのに、あんまり悲しんでないよな?」

 私の訝しげな視線に、彼女は笑って答えた。


「ええ、私も実は一部だけ熱狂的なファンなんです。『Dies irae以外だけファン』」

「なんだそりゃ」

「バンドそのもの以外だったら全部好きっていう…だからもし私が犯人だったら、ファンを皆殺しにして持ち帰ってるでしょうね」


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