2話
家を出発してからジャスト5分。無事駅に到着した俺は、ぱぱっと切符を買ってしまってベンチで一呼吸を置いていた。列車が来るまであと20分くらいってところか。気長に待つしか方法は無い。そうして2分間くらい座って待っていると、隣に知らない男が座ってきた。それは、別に何の問題も無い。ベンチは公共のものだからな。ただ座ってきた男が無駄に近い事が問題なんだ。もうちょっとあっちいけよ狭いだろこんちくしょう。
「にいちゃんまさか帝国進出希望?」
こっちを向いてきた男が話しかけてきた。どうやらコイツも帝国に行くみたいだな。でっかい荷物が全てを物語っている。
「あぁ、そうだけど。あんたもやっぱり帝国に行くのか?」
とりあえず当たり障りの無いセリフで返答する。さっきまで俺は下を向いていたから、初めて男の顔を見た。
怒り狂ったように上を向いているとがった茶髪。何か変な形をしたサングラス。10本全ての指に指輪。うん怪しい。できれば関わりたくない。
「互いに頑張ろな!」
サングラスで目元は分からないが、声のかんじから年齢は18とか19とか20とかくらいだと思われる。 早くあっちにいってもらいたい。
(キィィィン……)
「おっ、列車来たやんね! はよ乗ろうや!」
あぁ、やっぱついてきちゃう的な。
とりあえず座席について一息。ここから3時間くらいかけて隣国へ向かう。そのあとは乗り換えて6時間。そのあともだいたいそんなかんじでホテルで宿泊。これを繰り返して予定通りならば3日目の朝にはつく。事故とか無ければいいけどな。
隣の奴にもこの後どうするか聞いて見たけど、大体同じってところか。長い付き合いになりそうだ。
「にいちゃんは何の目的で帝国に出るんや?」
会話を降ってくる男。というか名前を知らないことに気づく。流石に3日も一緒にいるんだから不便か。
「その前に自己紹介しないか? お互い名前も知らないんだし」
「おう、そうやな。あぁ、なんかすまんな」
「俺はルーク・ルガイド。宮廷の番兵志望で帝国に向かってる。よろしく」
「オレはアイン。帝国で医者になんのが目的や。よろしゅうな」
医者志望とかまさかコイツめちゃくちゃ頭良いのか? 何故だか全く見えないが。
「オレ実は昨日緊張して眠れんかったんや。だから今からちょいと睡眠するけど、そこんとこ堪忍な!」
「おう」
じゃあ俺も寝るか。どうせ終点だしおっさんが起こしてくれるだろう。
「おやすみィ!」
「お、おう」