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真夏の昼の夢

 高校の同窓会……ちなみに今年で卒業30年。と言う事は、今年私たちは軒並み年男・年女になったということ。


 夫の転勤で県外に住むようになった私は、片道3時間かかる道中を見越して早めの電車に乗り込んだら、一番に会場入り。

「平井さん早い!」

丁度、幹事の相本さんも着いたばかりだった。彼女もかわいそうだな、出席番号1番の相本って家に生まれただけで、結局歴年幹事だもんね。男は最後の若狭君だっけ。つくづく中途半端な平井でよかったと思う。

「だって、この電車に乗らないと次はギリなんだもん」

私がそう言うと、

「あ、そうか……平井さん今〇〇県だったっけ」

相本さんはそう言いながら今日の参加メンバー表を参加者に付けてもらう名札(ただし、ただのタックシール)を取り出して、

「旧姓で書いてあるわよ。今の名字でなんか書いたらピンとこないもん」

と言って笑った。


 みんなが45歳になったことを機に開催されるようになった同窓会も今年で3回目、年々人数が減るのは長引く不況のためか。

 ただ、去年も会った人は何となく解かるんだけど、今年初めて会場入りした面々は顔を見ても男子なんかは名前すら思い出さない。


「平井さーん、飲んでないじゃん」

そう言って寄って来たのはオキ。金田玉姫と言うのがフルネーム。あの頃は、

『どっかの結婚式場みたいで、自分の名前は嫌いよ』

と言っていた彼女。でも、名は体を表すかのように、アラフィフになった今でも彼女はとってもキレイだった。私がみんなに解かってもらえるのは、顔よりあの頃と体型が変わってないからだと思うけど。

「今日は車だもん。在来線は2時間に一本しかないのよ」

 実は夫は休みだから近くの駅から迎えに来てもらえるけど、わざと自分で運転して、特急の停車駅に置いてきた。お酒が苦手だからだ。でないとこの体型だから、飲めないと言っても勧められる。だけど、飲酒運転の罰則が厳しくなってからは、車だというと誰も勧めなくなった。車社会万歳!


 ふと見ると、真ん中のテーブルでは3年の時のクラスのムードメーカー立浪が一人ニコニコと酔っぱらって黙ってへたり込んでいた。

立浪……あんまり人付き合いの良くない私にまで呼び捨てで呼ばれていたお調子者の彼。去年はでかい声でしゃべりまくってたのにな、飲みすぎなんだよね、あいつ……


 やがて大盛り上がりで時は過ぎ……お開きの時間。徐に男性の幹事、若ポンが立ち上った。

「皆さん、盛り上がっているところに水を差すのは申し訳ないんですが、訃報があります。立浪君がくも膜下出血で亡くなりました。ちょうど一週間前に、立浪君のお兄さんから連絡を頂きました。同窓会の葉書が立浪君ちに着いたその日が告別式だったそうです」

と沈痛な面持ちで立浪の訃報を告げたのだった。


 えっ? う、うそぉ……あいつさっき会場にいたじゃん。ポツンと一人で真っ赤な顔で笑って……そういや、あのおしゃべりが黙ってたし、誰も声掛けなかったよな。


 私は誰と見間違ったんだろ。それとも、毎年日を決めて行っていたから、楽しみにしていた彼はそっと会場に来ていたんだろうか。


 私はそんな真夏の昼の夢に呆然としつつ、集合写真に立浪が写っていることを期待するようなしないような……そんな複雑な思いにとらわれたのだった。


本当に同窓会に出かけたエッセイの後UPしたら、実話だと思われて退かれた作品。


私自身は決してホラーだとは思っていません。アラフィフのありがちな風景として書いたつもりなんですが……

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