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TOKYO LOVER

某所で書いた三題噺です。


お題は「クリスマス」「涙」「勘違い」


「イエス・キリストが生まれたのは、本当は12月25日なんかじゃないんだ。後世にヨーロッパの祭りと融合したもので……」

12月24日午後11時10分、私の待つ新幹線のホームに降り立ってあいつは、得意顔でいきなりそんな蘊蓄話を私に述べる。

 だけど、挨拶もそこそこにするのがどうしてそんな話な訳?


 世間の人々が信仰もないのにかの人の生誕を祝うのがバカバカしいと言うのは解らなくもないけど、それが転勤先から2カ月ぶりに帰ってきて恋人に最初にする話なのかしら。


「聞いてる?」

私があいつの話にノーリアクションなままでいたら、あいつはそう言って私の顔を覗き込んだ。

「聞いてるよ」

それに対してぶすっと答えた私に、

「何、怒ってんのさ、今年はちゃんと帰ってきたじゃん、イブに」

あいつは、そう言って私の頭に手を置く。ああそうね、ちゃんとイブには間に合ったわね。でもイブはあと何分あるの? あんたがそんなご高説を述べてる間に45分を切っちゃったじゃない。

「怒ってなんかないわ」

「嘘、やっぱ怒ってる。」

そう、怒ってはない。呆れてるだけよ。


「それでさ、俺もう、クリスマスに来るのやめようと思うんだけどいいかな。お前とこんな風に会うのは面倒だからな。それで……」

それからあいつは唐突に別れを告げた。まだ、何かいいたそうなのを遮って、

「何で?」

とあいつを睨み上げる。あんたには別れる理由があるのかもしれないけど、私にはないから!

「何でって……その……」

するとあいつは口ごもって、赤くなる。そうなんだ、あっちに新しい人、いるんだ。

「何で?!何で、何で、何で!」

私はそう言いながら耳を塞いだ。聞きたいけど、キキタクナイ!! そもそも何であんな訳のわからない蘊蓄話の後に別れ話なんかする訳?しかも、あったばかりよ! 私の眼から涙があふれて止まらなくなった。

「あちゃぁ、勘違いさせちゃったかな」

そしたらあいつはそう言って頭を掻いた。

「何が勘違いだっで言うの!」

勘違いだと言われて思わず怒鳴った私に、あいつは更に赤くなりながら言った。

「あのさ、話は最後まで聞いてくれる? 俺、今日ここに来るためにどんだけ仕事前倒しでしてきたか」

「……」

「お前の為じゃなきゃ、そんなことしないぜ」

じゃぁ、何で別れ話なんかするのよ。

「睨むなって。俺はさ、こんな忙しいときに500kmの移動は非効率だって言ってんだよ。いや、忙しくなくても非効率だから。新しいマンション借りっから、俺んとこ来いよ」

「へっ?」

それって、まさか……

「つまりだな……その……俺の嫁にならないかってこと!」

首を傾げた私に、あいつは、ぶんぶんと手を振り回して、しどろもどろで、そう言った。ってことは、やっぱりこれってプロポーズ? 分かりにくっ!! 大体理屈屋だとは思ってたけど、まさかここまでとは思わなかったわ。

「イヤよ」

私がそう即答してやったら、

「イヤって……」

あいつは断られるつもりはなかったのか、きょとんとした顔をしていた。

「そう、イヤ。こんなプロポーズなんてあり得ない。もう一度やり直してくれなくちゃ、行かないわ」



-*-*-*-*-*-*-


「一体、どう言やぁ良いんだよ。俺には清華しかいない。頼む、結婚してくれ」

「はい、やり直し。もっと、ムードがなきゃダメ。行事に流されてもムードが欲しいのが女なのよ」

私は腕組みして、既に涙目のあいつにダメ出しを出す。


 そして、あいつは時計が午前〇時を迎えるまでに、ブツブツ文句を言いつつ、都合4回もやり直しのプロポーズをすることとなったのだった。


                    メリークリスマス!!

2009年の自分のクリスマス企画として、当時某所でブレイクしてた三題噺のお題で書いたものです。


実は私自身、こういう理屈屋の男、好きです。


因みにこの主人公の女性は、「満月に焦がれて」の桜木弘毅・圭子夫妻の娘桜木清華です。最初からそのつもりで書いたのですが、改稿前は名無しだったので今回織り込みました。

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