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ビーフ? シチュー

「おうちでごはん」企画作品です。



 10月、急な転勤が決まって旦那、開ちゃんは慌てて任地に行ってしまった。

 

 残されたのは私とまだ5歳の称理あぐり。私はともかく娘命の開ちゃんは、転勤後休みをフル稼働してさっさと任地でアパートを見つけてきて引っ越しってことになった。

 

 だけど、当の開ちゃんは引っ越しだからって帰ってこれない。結局私一人でやんなきゃなんないんじゃんと私がぶーたれていると、

「荷造りお任せも実費を払えばしてくれるってさ。引っ越し代は全部会社持ちなんだからさ、使えば?」

って開ちゃんはお気楽に私に逝った。だけどねぇ、それだって荷造りする人に細かく指示しないと今度荷ほどきしたときに困っちゃうんだからね。つまり、荷造り自体をしなくても荷物の把握はいるんだよね。

 そしたら、それを聞いたお義母さんが、

「引っ越しの一週間前から称理ちゃんこっちによこしなさい」

と言ってくれた。助かった。我が娘が可愛くない訳じゃないんだけどね、こいつが居ると絶対に片づかない。

 お義父さんとお義母さんの方も、孫が側から離れちゃうのが寂しいんだよね。これってプチ親孝行でもあるよね。


 でも、さて引っ越しの一週間前、称理を実家に連れて行った翌日、何か困った様子でお義母さんが出先から電話をかけてきた。

「お義母さんすいません、あぐりんが何かワガママ言ってるんですか?」

私は、称理が早速何を困らせているのだろうと恐縮しながら電話に出たのだが、

「いいえ、称理ちゃんはとってもお利口にしてるわよ。

でね、ちょっと聞きたいことがあるんだけど、

たすくちゃん、ビーフシチューに入れるのって、何の肉?」

お義母さんから返ってきたのは意外な質問だった。

「牛肉……ですけど?」

牛肉だからビーフシチューって言うんじゃないんですかって、こっちが聞きたい。だけど私は、

「普通そうよね、やっぱり牛肉だわよね。

あのね、称理ちゃんがビーフシチューを食べたいって言うから、今称理ちゃんと夕食のお買い物に来てるのよ。そしたら、『ビーフシチューに入れるのは絶対に豚肉』って言ってきかないから」

続くお義母さんの話を聞いて頭を抱えた。そう言や、ウチのブラウン系のシチューって豚肉だわ。

 

 もちろん、それは牛肉より豚肉の方が安いからといって、私が『ビーフシチューには豚肉を入れるんだよ』とごまかしている訳じゃない。寧ろその逆。

「あ、それ、あぐりんが牛肉にするとあまり食べないからなんです」

 そう、称理は牛肉が苦手。横に退けたりしないんだけど、ちょっと食べて食べること自体を放棄してしまうのだ。豚肉を使うとちゃんと最後まで食べてくれるので、いつの間にか牛肉を使わなくなっただけのこと。

 だから私は意識して称理には『ビーフシチュー』とは言わず、『トマトシチュー』と言っていたのだが、それでも使うのはビーフシチューの素だ。最近カタカナが読めるようになった称理は、可愛いおばさんが書かれた私の使うルーの箱を見て、トマトシチュー=ビーフシチューと理解したに過ぎない。

 その説明を聞いたお義母さんは、大笑いした後、

「解ったわ。じゃぁ、豚肉を買って、称理ちゃんの大好きな『ビーフシチュー』を作ることにするわ」

と言って電話を切ったのだった。

 




昔、白菜を見て真顔で『牛肉!』と答えた幼稚園児がおりましたが……


これはウチの娘の実話。子供の頃、嫌いなものが一つでも入っていると、食べること自体を放棄する奴でした。


そんなあぐりん、現在168cm。神山家の七不思議であります。

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