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ピカルとコルロ

雨の季節に、童話をどうぞ。

 ピカルとコルロは双子の天使。お空の雲を作るのが神様から言われた彼らの仕事です。


「どうだい、すごくいい出来だろ? この雲は」

ピカルはたったいま作ったばかりの自分の雲の自慢を始めました。

「そんなでもないじゃない。それより、この僕の作った雲の方が素敵だよ」

しかし、コルロはそれをちらっと見ただけで、自分の作った雲に目をやり目を細めながらこう返しました。

「僕の作った雲の方が形が良い!」

「いや、僕の方が白くてきれいだ!」

「「なんだと!!」」

そして今日もまた、いつものケンカが始まってしまうのでした。


こんなですから、ピカルとコルロの仕事はちっとも進まないのでした。




 神様はこのことに非常に心を痛めておられました。

「どうしたら二人を仲良くできるだろうね」


神様は二人をお側に呼び寄せました。


「「神様何かご用でしょうか」」

神様のお側に着いた二人は同時にそう言いました。

「ピカル、コルロお前たちはいつでもケンカばかりしているが、どうしてそんなに仲が悪いのかな。」

神様がそう尋ねると、二人はまた全く同じタイミングでお互いを指さすと、

「「それは、この『ピカル』『コルロ』が悪いんです!」」

と自分たちの名前の部分だけをのぞいて同じ言葉を吐いたのです。


こんなに似ているのに、どうしてお互いを認めることだけができないのだろう、それを見た神様は深くため息をつかれたのでした。

「そうか、お前たちの言うこと解った。しかし、ケンカはいけない。だから私はお前たちに罰を与えることにする。次にお前たちがケンカをすればどうなるか……それは、お前たちの目で確かめなさい」

そして、神様はそう言い渡し、二人を下がらせました。




 自分の持ち場に戻った後、ピカルはこう言いました。

「コルロのせいで神様に叱られたじゃないか!」

しかし、その言葉が終わるかどうかと言うとき、言葉が突然ものすごい光を発して下界の町へと飛んでいったのです。

「違うよ、それはピカルが悪いんだろ! 僕はそのとばっちりを受けただけだ」

その光に少しビックリしながらも、コルロはそう言って反論しました。するとコルロの言葉は大きな爆音となってドドンと辺り一面に響き渡ります。


 二人はその光の落ちた部分をそっと覗いてみました。すると、そこにはその町で一番大きなクスノキの木があったのですが、真っ二つにおれて真っ黒になってしまっていました。その木はいろんな鳥たちが集い歌を歌うので、二人も大好きな木でした。

「あのクスノキが真っ黒になったのは、お前が悪い」

「いいや、お前が悪い」


 そして、二人がそう言ってののしり合うたび、言葉は何度も光り、大きな爆音を何度も響かせました。道に大きな穴が開き、小さな子供が怖がって泣き叫ぶ声が聞こえます。

二人は、お互いを見つめたまま固まって何も言えなくなってしまいました。


「ピカル、コルロ」

その時、神様が二人に呼びかけられました。だけど、二人は先ほどから何か話すと光って爆音を立てるので、声を出すことが怖くて返事ができないでいました。

「心配しなくていい、普通に話すことには何も起こらないから」

「「ホントですか!」」

二人はまた同時にそう言いました。その言葉は光ることも大きな音もしませんでした。

「そうだ、普通に話すときには何も起こらない。しかし、お前たちが互いのことを悪く言うとき、それはいかずちとなり地上に降り注ぐ。その場にある木はなぎ倒され、生き物はその命を失うことになる。ふたりは地上のものたちが好きか?」

「「はい」」

「ならば地上のものたちが傷つかぬよう、お互いの言葉を慎むように」

「「はい」」


 それから二人がケンカをすることはほとんどなくなりました。


 でも、時々はまだ意見が合わなくてケンカになってしまうことがあり、ピカルの言葉は稲光となり、コルロの言葉は轟音となって地上に降り注ぎます。


 そして、ケンカが終わった後、二人は自分たちのことが情けなくなって、いつもわんわんと泣いてしまうことになるのでした。


雷の後大雨が降るのは小さな双子の天使が流すごめんなさいの涙なのです。


                                  

                           -おしまい-








これは、娘称理が小さい頃に聞かせたでたらめな話の一つ。


そう言えば寝ている彼女をおいていった日に雷雨があり、帰ったら涙でぐちゃぐちゃの称理がいて、この話をしたんでしたっけ……


いまや「たまや~」とか言ってますからね。

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