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第三章 過去の君が-⑤
「いいか、さくら。足音を立てないようにゆっくり移動するんだぞ」
正太郎は小声で私に言う。正太郎の顔は真剣で、緊張感を持っている。
私は素直に頷いた。
明るい太陽は当に沈み、暗闇の中を照らす月が顔を出している。
私達は、生活していくために必要な物をある程度持つ。
「よし、いいぞ」
寝静まりかえった正太郎の家は、音一つ無い。
念のため人がいないかを確認した正太郎は、私を手招きする。
正太郎の家の門辺り、正太郎の家から私達は逃げようとしていた。何から逃げているのかは分からないが、私はこの家から出るのだ。
門を通り、正太郎は私に手を差し出した。
私がその手を取ろうとした時。
『ドンッ』
私は聞いたことの無い、衝撃的な音を聞いた。
その音を聞いた瞬間、私の意識は途絶えた。