エピローグ 君にあえて
エピローグ 君にあえて
さくらと別れて二年が経った。
翔はその二年間を、あっという間といえばあっという間に過ごしてしまった。
翔の入った高校は普通よりも少し高めの成績がなければ入れない学校だった。それなりに、翔は勉学に励んだのだ。そのため、このような学校に入れたのかもしれない。
翔ははっきり言って勉強など殆んどせずに、それなりの成績をとるタイプだった。それなのに、何故勉学に励んだのかは、さくらの事がきっかけだった。何故かというと、さくらにもしも出会ったときに、さくらを支える事ができるといいな、と翔が思ったからだ。
翔は始業式の帰りで、さくらと出会ったあの桜並木の道を通っていた。
翔は心のどこかで、さくらとはしばらく会う事ができないだろうと思っていた。
「ねえ、ねえお母さん。私ってここにきた事ある?」
翔にとってなぜか聞き覚えのある声がした。
「いいえ。ここは始めて来るわ。綺麗な桜ね」
翔は声のほうを向くと、一人の幼い少女とその母がいるようだった。
その少女は、さくらの面影があり、美少女である。淡い桜の色に似たかわいらしいワンピースを着ている。
「さくら!」
翔は思わず大きな声で叫んでしまった。
少女は翔に向かってとてとてと小走りで走ってくる。
「あっ、ちょっと」
少女の母親は少女を止めようとするが、少女は止まらなかった。
「ねぇ、どうして私の名前を知ってるの?」
少女の声はさくらの声よりも高い声だった。可愛らしい丸い声。
少女は小首をかしげ、不思議そうにしている。
「ちょっと、昔の友達と似ていたから声をかけたけど、君もさくらという名なんだね」
少女――さくらはこくんと可愛らしいしぐさで頷く。
翔は少女に説明をしても分からないだろうと思って、あえて説明はしなかった。
「私、貴方にあったことがあるような気がする」
「そうかもしれないね。またの機会に会おうね」
「うん」
少女はまるで天使のように微笑んだ。
少女の後ろから、少女の母が駆けて来た。
「す、すみません」
少女の母は翔に向かってぺこぺこと何度も頭を下げる。
「いえ、別にいいですよ」
「もう、だめじゃないの。勝手に走って行っちゃ」
「ごめんなさ~い」
「もう、今度から気をつけるのよ。あわてんぼうなんだから」
「えへへ」
さくらははにかんだように少し笑う。
「じゃあ、それでわ」
少女の母はもう一度会釈して、翔の横を通り過ぎていった。
(よかった。あの様子なら、幸せに暮せてそうで)
翔は何気に心配をしていたのだ、桜が転生してこの世界にくるときには幸せに暮らせているのだろうかと。
「じゃあね~」
さくらの声がすると思って振り返ってみると、大きく手を振っているのに気付く。
翔はそれに返すつもりで少しだけ手を振って見せた。
そして、桜とその母親は桜並木を通り、どこかへといってしまった。
「さあ、俺もそろそろ帰ろうかな。今度、さくらに会うために散歩でもするようにしようかな」
正太郎は大きく伸びをして、桜並木を通る。
そして、翔とさくらの魂は何度も惹かれあい続けた。それが運命のように、何度も何度も。
〈FIN〉
今までどうもありがとうございました。
これからも『小説家になろう』にて小説を書いていくつもりです。
これからも何卒宜しくお願いします。