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第二話

 とりあえずはこうなった経緯とかいろいろ伝えようと思う。

 まずはこのチェーンソーをぶんぶん振り回すメイド姿の女の子、冥土は死神らしい。

 何故俺が突然この凶悪美少女と関わることになったのかというと、昨日の出会い系メールが原因だった。

 話としてはこうだ。




 俺の住む地球の他にも無数の星が存在するのは誰でも知っていることだ。

 ただ人の住む星は実は他にもあって機械文明が発達してる星や剣と魔法のファンタジーな星、原始的な星や、世界一面が海しかない星など様々あるらしい。

 各星々では地球と同じように平和な地域だけでなく争いや小競り合いが当然あり、近年救世主となる人物が産まれず、また適性となる人物が時代とともに減少していってるという。

 そこで、各星々の神様が集って考えたそうだ。




 産まれないなら、いる奴から作ればいいんじゃね?




 嘘に聞こえるけど本当にそんな軽いノリだったらしい。

 星の救世主を決めるのにそんないい加減でいいのかってツッコミを入れたが



「神様たちが考えてることなんて私たち下のものにはわからないことですぅ」


 と遠い眼をして語っていた。

 死神も神様だと思うんだが上には上がいるんだな。

 で、そのいる奴を作るという行為がある程度知能が発達してる世界の住人から、厳選に厳選を重ねて選んでそいつに力を与えようってわけ。

 厳選方法もまちまちで今回はメールを百人に送信したらしい。

 ただし、送られたやつみんなが読めるというわけでもない。

 届いたとしてもただの空メールになっているのが半数以上。

 読めたとしても俺みたいに迷惑メールとしか認識されないので、大抵は削除されて終わり。

 実際登録したのは俺だけだったらしいし。

 なんでそんな回りくどいことをするのかと聞いたら



「本当ですぅ。でもそれぐらいやらないと“夢に希望が無い奴にはお得感が無い“って言われましたぁ」


 だと。

 いやいや、俺は夢に溢れてるよ?ただ猛烈に運が悪くてそのせいで友達がいなくて孤独なだけだよ?



「それわかる気がしますぅ」


 と嫌な物を見る眼で言われた。

 いつか泣かす。

 話が反れたけど星の救世主となる人物が何十人も出てくるんじゃ、またそこから争いが生まれるだろうから数が少ないのは納得できる。

 今回の場合、登録してもサイトにそういったことが何も書かれてなかったのは、内容を新人の死神が一からしっかりと伝える義務だったそうだ。

 じゃあなんでさっき殺されそうになったのかというと、冥土が初仕事で緊張のあまり聞き忘れてたとか。

 じゃあ俺が勘違いしたのは悪くないじゃん。



「そこに関しては確かに私の落ち度ですぅ…。でも!あんな下劣なメールに反応する人がパートナーだなんて納得いきません!」


「でも把握してなかったから上司に怒られてたんでしょ?」


「うぅ…」


 しおらしく落ち込んでる。

 思った以上にへこんでるようだなぁ。

 ちなみに付加される力で俺がもらったのは“言語と文字の理解“だけで、その他に付加するためには媒体となるものを経由しないとならないらしい。


 俺の場合、携帯が媒体となっている。

 付加能力の一つとして、写メを撮った画像のタイトルを変えれば撮られた物はタイトル通りの力を発揮する。

 例えば金属バットを写メしてプラスチックのバットって画像のタイトルを変更すれば、金属バットを容易く折り曲げることができるらしい。

 他にも様々な能力が携帯に付加されてるから中々に興味深い。

 携帯能力付加については長くなるので追々説明していく。


 ちなみに俺が真っ暗闇と感じていたこの空間、実は宇宙空間で、しかも宇宙の果てだったらしく目が慣れてきたころには遠〜〜〜〜〜〜〜くに星と思われるものが幾つか確認できた。この辺りに太陽みたいな恒星は無いらしい。

 マジかよ、生身で宇宙旅行に飛び出しちまったよ…。

 空気を吸えてるのは、冥土の神様パワアという力で空気を与えてもらってるそうなんだが、さっき追い回した時に空気供給されなければ、俺はそのまま死んでたんじゃないか?

 冥土も説明してから気付いたらしく深い溜め息をついていた。

 あとは救う星について、だ。





 色んな星の中から一つ選択できるらしい。





 迷わず剣と魔法のファンタジーな世界を選んだよ俺ぁ。

 役者になりたかったのも、ファンタジーな世界に憧れがあったわけで、実体験出来るなら冒険に行くしかない。

 危険な目に会う可能性を考えなかったわけじゃないけど、地球に残ったところで役者になれるかわからないし、周りとの関わりができずに一生を終える可能性が大だ。


 ――だったら異世界に行く。


 それに何かあってもこっちにはチェーンソーを軽々ぶん回す死神様がいる。

 そうそう死ぬ羽目には会わないだろう。冥土に殺されなければ。




 とりあえずの説明は以上だ。

 一部始終話しを終えて、冥土は改めて俺にどうするか聞いてきた。

 登録を取り消すか否か。

 これまでの成り行きに驚いてたけど、俺には断る理由なんか無かった。

 だってファンタジーだぜ?異世界だぜ?

 あのまま不幸の状態で一生を惨めに過ごすぐらいなら、冒険の世界に飛び出してやる。不幸体質なんかくそ食らえだ!




 今俺たちは実際に自分たちが赴く星の真ん前にいる。

 見た目は地球に近く、海と大地が広がる青々とした星だ。地球儀にのってる大陸や日本と思わしき島は当然無い。

 この星が救世主を求めてる。

 俺の夢にまで見た冒険が今始まるのだった。




 ★ ★ ★ ★




 突然だが、今生か死かの局面を迎えている。

 いきなりすぎて驚くだろうが俺自身も驚いてる。

 流石不幸体質、まともな冒険をさせてくれない。

 そもそもの原因はあのドジッ娘冥土が原因なんだが、件の死神は今いない。

 事の顛末は、星に下り立った時に遡る。




 見渡す限りの草原。

 地球に比べて空気が美味しい。

 俺の住んでた場所も決して都会とは言えない場所だったが、それでも違く感じる。

 陽が昇っていて気温も暖かく、地球基準で言えば季節は春といったところか。

 遠くには鹿の角を生やしたような馬らしき動物が何頭かで群れて草を食べている。

 動物に詳しいわけじゃないけど、地球では見たことない動物だった。

 異世界の地に来たという事実に、気持ちが高ぶっていくのがわかる。



「西に歩けば小さな村がありますぅ。まずは村まで行って、この世界の情報収集から始めましょう」


「ん?冥土は神様なんだから、この星の詳しいこととか聞いてないの?」


「私たち下の者にはざっくりとしか各星のことが説明されないんですぅ」


 冥土は神様とはいえ新人だ。

 自分たちで考えて行動しないと、自立した物事を考えることができないし成長しない。

 “生まれたて“だから、成長過程にあるとか。

 生まれたての神様ってどういうことかわからんかったけど、その辺の詳しい話しは追々しますぅと濁された。

 なんか複雑な事情でもあるんか?

 なんにせよ、この先の現場で活躍するためにも今はまだ全ての事柄を知るわけにはいかないんだそうだ。

 自分で見て聞いて状況を判断する力を養うために。

 それは登録者も同じことだそうで、最終的に星をどう助けるかを決めるのは俺たちだ。


 俺としてもこの世界を堪能したいから、短時間で攻略なんて真似はしたくない。折角のファンタジーだし。

 最初から攻略本を読んでゲームをする派じゃないし、何も知らずにゲームをする感覚は発見の連続で味わう感動も別物だ。

 これから何が起こるかわからないけど、最悪冥土がなんとかしてくれるだろ。



 しばらく歩くと村が見えてきた。

 木造でできた家がいくつかあり、柵に囲まれた麦畑もあった。

 村の中心には教会と思われる建物が建っていて、酒場と思われる建物もあった。

 他に特筆すべき点が無かったので、聞いた通り小さな村という印象だった。


 村に入ると真っ昼間だというのに誰もいなかった。

 辺りを見渡し瞬間寒気が走った。

 特に何かを見たというわけじゃない。

 この村“なんとなく“ヤバい。

 このなんとなくというのは馬鹿にはできない。

 車に轢かれそうになった時や、死を間際にするような事件に巻き込まれる時によく起こる感覚だからだ。

 予知能力に近いものと捉えてる。お陰で重症になったことはあるけど死んだことはない。

 事前に察知できるからな。

 気持ちだけだけど対処してるということだろう。


 おいおい最初の村でいきなりこれかよ。

 異世界だから車に轢かれるってことはないだろうけど、いきなり戦闘入るのか?

 冥土のほうを見ると、気がついてないのか「あれー、誰もいませんねぇ」とか呑気なこと言ってる。

 こいつ本当に神様か?

 死神だから危険な空気とか判るものだと思ってたが、俺の思い違いだったのかっ?


 教会の扉が開く。

 中からバンダナを巻いたオッサンたちが三人出てきた。

 遠目からだが人相は悪く、腰には短刀を挿している。

 明らかに盗賊だった。

 反射的に冥土の手を取り小屋の陰に身を隠す。

 姿は見られなかっただろうか。

 盗賊たちはこっちに向かってきてないだろうか。

 全神経を耳に集中させる。

 こっちに向かってくる足音は聞こえなかったが、首下のほうから唸る声が聞こえてきた。

 唸り声の主は冥土だった。

 手を取り身を隠すまでは良かったが、抱き込む形となっている。

 いや、咄嗟の判断で、無意識でしたよ僕?

 冥土の顔が真っ赤に染まっている。羞恥もあるが、それを上回る怒りの表情だった。

 あ、オワタ。

 俺の腰に手を回し、そのままバックドロップをかましてきた。地面にぶつかった衝撃音が鈍く、重かった。



「エッチな人は嫌いですぅ!」


 冥土は叫んだあと、黒い靄みたいな物に纏ってそのまま姿を消してしまった。

 盗賊たちも声をあげてこちらに向かってくる。

 意識が遠退いていく中、俺は不幸の度合いが冥土のお陰で増していくのがわかったのだった。

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