こひごころダイオード
いらっしゃいませ。
地平線のはるか上に、虹色に輝く夕焼け雲がふわり、ふわふわと浮かんでいる。
その雲は、決して手を伸ばしても届かない。
その美しさに惹かれ、毎日のように焦がれていても。
幸福は、犠牲なしではあり得ない。
そんなことはこの世で幾万回と言われてきただろうが、それでもやはりその犠牲を払う勇気がない者が多い。
それは、その犠牲に見合うモノが得られるとは限らないからだ。
例え数十年の労苦の末だったとしても、何も得られないかもしれない。
そんなギャンブルの中に、さらにまた人気の台がある。
「恋愛」だ。
ディーラー(想い人)を巡るプレイヤー同士の戦い。
一番の目玉はルールが決まっていないということだ。
勝ちか負けかは、ディーラーの気持ち次第。
もしかしたら、誰も勝たないことすらあるかもしれない。
だがそんな賭けの先にあるものは人生で二度と代替のきかない、至高だ。
まさに究極のギャンブルだが…ここで凶暴な性質が牙を剥く。
この「恋愛」という台は、突然強制的に賭博台に座らせ、プレイヤーにさせてくるのだ。
そしてそれは、勝負が終わっても、また降りても、決して消えない感情だ。そうなってしまえばもう逃げられない。
すでに片想いだと分かっているのに、決してその先の想いが実るわけがないと分かっているのに。
分かっていても、やまないのだ。
それが「愛」だとは思えないほどに苦しくなるのだ。
友愛だって、家族愛だって、母性愛だって、こんなにも苦しくはないはずなのに…
やはり「恋」のせいだ。
恋、もとい戀は、もつれ合って離れない糸と心を合わせた漢字だそうだが…まったくその通りだ。
恋なんてしなければ、しなければ。
恋心なんてクソ食らえ。
そう思えれば楽だったのにな、とふるふると首を振る。
結局、少しでも振り向いてもらえた時の、あの幸福感に満たされてしまっていたのだ。
そんな自分に少し嫌気がさしたが、諦めた。
きっと、この気持ちは時間にしか解決できないのだろう、と悟ったから。
そんな仕方のないことを、ただ一人で黄昏ながらぼんやりと考えていると、いつしかあの雲は地平線の彼方に消え、新しい雲が上空に優雅に浮かんでいた。
なにとはなしに、少しの解放感と喪失感が空に色をつけているようだった。
いかがでしたでしょうか?
今回も相変わらずの内容ですが、お読みいただきまして本当にありがとうございます。
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