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【BL】泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話  作者: 雪 いつき


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9/9

9.最終話


「平瀬君は、毎回臆せずに三年の教室に来るよな~」


 岡本がそう言って苦笑する。


 恋人になった翌日から、理央(りお)は昼休みを俺の教室で過ごすようになった。

 最初の二日間は女子たちが理央に話しかけていたけど、あまりの塩対応に負けて諦めたみたいだ。


(おう)ちゃんのいる場所が、俺の居場所なので」


 俺に向かって微笑むと、女子たちがざわつく。否定的なものじゃなく、理央の笑顔に対する黄色い声だ。


「平瀬君、忠犬で愛しい~っ」

「他の女に取られるよりはいいよね」


 こんな感じで、俺に対する敵意も嫌悪もない。俺たちが恋人同士だと言ったらどうなるか分からないけど……でもそれはあえて告げることじゃないからと、理央にも口止めしていた。



「やだわぁ~、平瀬君ってば、本当に忠犬~」

「……この岡本って人、邪魔なんですけど」

「岡本先輩な~?」


 あんなに怖がっていたのに、今や岡本は、理央をからかうようになっていた。仲良くなってくれて嬉しいけど、理央が毎回岡本を睨むからちょっと申し訳ないんだよな。


「なんかごめんな、岡本」

「ほらほら、平瀬君のせいで坂口が謝ってるぞ~」

「ごめん、凰ちゃん……先輩もすみませんでした。邪魔だなんて本当のこと言って」

「謝る気ゼロで、いっそ清々しいな」


 岡本は気にした様子もなく、明るく笑い飛ばした。



「あんまり他人に冷たい態度取ってると、明るくて優しい俺が坂口のこと奪っちゃうぞ~?」


 そんなことを言ってニヤニヤと笑う。もしかして岡本も、理央の社交性を心配してくれているのか?

 そうだよな……俺は卒業するし、今の友達ともクラスが離れたら、理央は孤立するかも……。


「理央」


 心配だから俺からも言おうとしたら、理央は……何故か、底冷えのする笑顔を浮かべていた。



「凰ちゃんに好きな人が出来たら絶対に阻止するから、覚悟してて」


 え……覚悟って、何を……?

 ……と、言葉にしてはいけない気配を感じる。

 そのうちに理央の顔が近付いてきて、額にキスをされた。


「理央っ……」


 女子たちの叫びが響き渡る。言うつもりはないって言ったのに、今のでバレたじゃないかっ……。


「大丈夫だよ。俺が凰ちゃんのこと大好きなのは、みんな知ってるから」

「うわー、牽制えぐいって」


 岡本が笑い飛ばしてくれたから、変な空気にならずに済んだ。でも、ホッとしたのも束の間。理央の目、笑ってないな……?



「凰ちゃん。ずっと俺のことだけ好きでいて」


 俺の手を取り、理央は再会した当初のような甘えた仕草を見せる。


 俺には、理央を引き留められる要素がない。理央はいつか離れていく……なんて、まったくの杞憂なんじゃないか?


 そう思い知らされた時、今度は理央の唇が、俺の左手の薬指にそっと触れた。





-END-





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