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【BL】泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話  作者: 雪 いつき


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6.秀兄ちゃん


「はー、食べ過ぎたぁ」


 焼きそばとたこ焼きとフランクフルトと、苺飴とブドウ飴とチョコバナナ。少し経てばまたお腹が空くだろうけど、短時間で一気に食べるとお腹がパンパンだ。


「先に写真撮ってて良かったね」

「本当にな」


 思わず苦笑する。きっとあれもこれも気になって買ってしまうから、荷物が増える前にイルミネーションの前で写真を撮ろうと理央(りお)が言った。本当に、その通りだった。


 神社の端のベンチに座って、賑わう屋台の通りを眺める。雑踏から離れて眺めるお祭りも、趣があっていいな。

 理央はさっき一緒に撮った写真をスクロールしながら、どれを待ち受けにしよう、と真剣に悩んでいた。



凰太朗(おうたろう)?」

「え? ……あっ、秀兄(しゅうにい)ちゃんっ?」


 屋台の方から近付いて来た人物に、俺は驚きの声を上げる。

 秀兄ちゃんは二歳年上の幼馴染で、理央も含めて、時々一緒に遊んでいた。隣県の大学に進学してからは会っていなかったから、随分と久しぶりだ。


「髪色明るいのかっこいい。帰って来てたんだね」

「同級生に誘われて、今日だけな。凰太朗もかっこよくなったな」

「えっ、そうかな? 秀兄ちゃんに褒められるの、なんかくすぐったい」


 昔から大人っぽい秀兄ちゃんに憧れていたから、かっこいいなんて褒め言葉を貰うとなんだかむずむずする。



「そっちは、凰太朗の友達?」

「やっぱり分からないよね。実は……こんなに大きくなったけど、理央です」

「理央? まじか。別人じゃん」

「ね。あんなに小さかったのにね」

「凰太朗の後ろをついて回ってた泣き虫が、こんなイケメンになるなんてなぁ」


 まじまじと見つめられて、理央はムッと不機嫌な顔をした。


「秀兄ちゃん。俺はもう子供じゃない」

「おー、反抗期か?」

「凰ちゃん以外にはそう」

「凰太朗大好きなとこは変わってないな」


 理央がツンとした態度を取っても、秀兄ちゃんは明るく笑う。昔から余裕があってかっこいいんだよな。



 その時、屋台の方から秀兄ちゃんを呼ぶ声がした。秀兄ちゃんの友達もオシャレな人ばかりだ。


「二人が相変わらず仲良いとこ見られて安心したわ。今度帰る時は連絡するな?」

「うん。楽しみにしてる」


 友達のところに向かう背中を見つめながら……俺もオシャレを勉強しよう、と決心した。


 秀兄ちゃんと理央と三人で遊ぶなら、今持っている服だと悪目立ちする。姉さんいわく、組み合わせが芋っぽいらしいんだよなぁ……。



「……凰ちゃん」

「ん? どうした?」

「俺の方が秀兄ちゃんより年上に見える自信あるし、俺の方がかっこいい」


 拗ねた顔でそんなことを言う。もしかして理央、秀兄ちゃんに嫉妬か?


「そうだな。理央はかっこよくなったよ」


 俺には可愛くて仕方ないけど、黙って立っていると確かに秀兄ちゃんより年上に見える。でもこの拗ねた顔は、可愛いんだよな。


「凰ちゃんまで子供扱いするし」

「ごめんな。でも理央は可愛い弟みたいなものだから……」

「もう弟じゃないよ。凰ちゃんより背も高いし、手も、俺の方が大きい」


 理央が俺の手を握る。その手を持ち上げられて、指に……キスをされた。



「っ、理央っ?」

「凰ちゃん。好きだよ」

「は……」

「こういう意味で、好き」


 もう一度指にキスをして、反対の手で俺の唇に触れる。


「……凰太朗」

「っ……」


 それ以上、理央は何もしてこない。ただ、見つめられるだけ。


 触れた手を離させたいのに、身体が硬直したように指先すら動かせない。

 心臓が痛いほどに脈打つ。理央が言う好きの意味は……もう、疑いようもない。


 理央のことは、弟みたいにしか思えない。そう答えるべきなのに、本当にそれでいいのかと躊躇ってしまう。

 どうして、躊躇ってしまうんだろう……。



「……どんなに頑張っても、年齢だけは凰ちゃんを追い越せない。二年の差は、大きいよ……」


 理央は視線を落として、俺の手をぎゅっと握った。


「凰ちゃんが他の人のものになるって考えるだけで、死にたい」

「っ……」

「俺、凰ちゃんがいないと、生きていけないよ」


 力ない声。……そういえば岡本が、理央のことをヤンデレっぽいと言っていたことを思い出す。


 岡本は気付いていたのに、俺は、理央の昔の面影を追っていたのかもしれない。昔から変わらずに懐いてくれていると思い込んで、今の理央を見ていなかった。


「理央……」


 でも理央はまだ高一だし、これから色々な人に出逢って世界も広がる。結婚したいほどに好きな人に出逢うかもしれない。


 ……そんな説教染みたことを言っても、納得するわけがない。それでも、そうなった時に理央は、俺を捨てられずに後悔するんじゃないか?



 そんな俺の心中を察したのか、理央は俺の両手を握って、まっすぐに見据える。


「凰ちゃん。次の模試で俺が二十位以内に入れたら、俺のこと真剣に考えて」


 理央の言葉に、思わず「二十……?」と呟いてしまった。

 うちの学校では、全教科の総合で学年の二十位までの名前が、廊下に貼り出される。


 でも……全教科だと、今の理央にはかなり厳しいんじゃないか……?


「それ以下だったら……次の模試まで、俺が真剣に凰ちゃんを口説くから」


 あまりにも真剣な顔。こうして見る今の理央は、胸がぎゅうっとなるほどにかっこいい。でも……。



「それって、同じことじゃないか?」


 真剣に口説かれるなら、真剣に考えるしかない。疑問を口にすると、理央はジッと俺を見据えて、突然項垂れた。


「……そうだね」


 俺、かっこわるい。


 そう呟く理央は……今の理央として見ても、やっぱり、いとおしかった。



「分かった。その条件、飲むよ。理央の成績が上がるのは俺も嬉しいしな」

「っ……本当に?」

「正直に言うと、俺は今の理央をちゃんと見ていなかったと思う。だから、これからは……二十位以内に入ったら、今の理央をしっかりと見るよ」


 言い直すと、理央は少しだけ残念そうな顔をする。でもすぐに目元を緩めて、「絶対に二十位以内に入るから」と力を込めて言い切った。




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