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【BL】泣き虫で小柄だった幼馴染が、メンタルつよめの大型犬になっていた話  作者: 雪 いつき


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2.本性ってわけじゃないよ


坂口(さかぐち)~。なんか、えぐいイケメンと校門で抱き合ってたって聞いたんだけど」


 翌日。クラスメイトの岡本(おかもと)が、ニヤニヤしながら俺の席までやってきた。


「ああ。あれ、理央(りお)だよ」

「ん? あー、前に言ってた?」

「そ。俺の可愛い弟が、俺よりでっかくなってた」

「マジか〜。成長期って残酷だよな」

「お前が言うなよ」


 思わず苦笑してしまう。一年の時から同じクラスだけど、岡本はぐんぐん伸びて、今や俺よりも背が高い。運動部は伸びるよな。理央より少し低いくらいか?



「でも、笑顔が可愛いのは変わってなかった」

「男相手に可愛いって」

「可愛いんだよ。昔と変わらずに、凰ちゃん凰ちゃんって懐いてくれてさ」

「あー、まあ、懐く気持ちは分かるわ。坂口って、優しい国語の先生って感じだし」

「それって眼鏡だからだろ?」

「いやいや、雰囲気がもう優しい教師よ」


 褒めているのかどうなのか分からないことを言って、岡本は突然眉間に皺を寄せた。


「昔と変わらず、かぁ……そういう奴ほど裏があったりしないか?」

「理央に限って、ないない」


 笑い飛ばしたところでホームルームが始まって、岡本は「あると思うけどな~」と言いながら自分の席に戻って行った。



◇◇◇



『ごめん、提出物あるから少し遅れそう。迎えに行くから教室で待ってて』



 メッセージと一緒に、ごめん、という可愛いスタンプが送られてくる。


 今日もマンションに来て欲しいとお願いされていたから、待ち合わせ場所の昇降口に向かおうとしたところだった。


「提出物ならそんなに時間かかんないだろうし、迎えに行ったら?」

「見たな?」

「見えたんだよ。ごめ~ん」


 岡本はそう言って舌を出してウインクする。

 別に見られても困らないけど、雑な謝罪だな。背中を軽く叩くと、「ごめんね~」と言って両手を口元に添えて、目をパチパチさせた。



「ゴツい男にされてもなぁ……って、なんでついて来るの」

「まあまあ。坂口が可愛がってる理央君、見てみたいし」

「見てもいいけど、裏とかないからな?」

「あると思うけどな~……って、なんかすごい一軍っぽい奴らいる」


 岡本の視線の先を追うと、長い髪を綺麗に巻いた女子たちと、制服を着崩して髪をセットした男子たちが廊下に集まっていた。


「うちってそんな校則厳しくないけど、坂口的にあれってオッケー?」

「どうだろう……化粧も濃すぎるわけじゃないけど……」

「スカート短いな~。爪ギラギラしててすげぇ」


 岡本はそう言いながら、女子の足元をジッと見る。でも、俺は……その中心にいる人物から目を離せなかった。



「理央、このあとカラオケ行かん?」

「行こーよ、理央君いるだけで盛り上がるし」


 ああ……あれ、やっぱり理央か。

 美男美女に囲まれてても目立つな。早速友達ができたみたいだし、昔は人見知りだったのに、感慨深い……。


「行かねぇ」

「え~、行こうって。イケメンいないとつまんないし~」

「だる……」


 だる、って言った?

 理央が?


「昨日、(おう)ちゃんセンパイ? といた時と違いすぎん?」

「お前ごときが呼ぶな。坂口先輩と呼べ」

「対応違いすぎて笑える」


 彼らの笑い声がどこか遠くに聞こえる。

 眉間に皺を寄せて、面倒臭そうに男子生徒の肩を押して退かそうとする……あれが、理央?



「…………凰ちゃん?」

「あ……え、っと……」


 呆然としていたら、目が合ってしまった。


 え、これ、なんて言ったらいいんだろ……。


「迎えに行くって言ったのに」


 理央は俺のそばまで歩いてきて、聞いたことのない大きな溜め息をついた。


 思わず落とした視線の先には、理央の大きな足。昔は俺よりも随分小さかったのに……いつも俺の後ろをついて回っていたのに……。



「別に、こっちが本性ってわけじゃないよ」

「っ……」


 理央の声音が柔らかくなる。顎を掴まれて、顔を上げられた。


「凰ちゃんのこと大好きな俺も、他の奴らはどうでもいい俺も、どっちも本当の俺だから」


 記憶の中よりも……なんなら昨日よりも随分と低い声で、とんでもないことを言って爽やかに笑う。

 俺の可愛い弟分は、なんてふてぶてしい男に成長してしまったんだ……。



「ところで……凰ちゃん、その人、誰?」

「え? あ……クラスメイトの岡本だけど……」


 驚きのあまり忘れていたけど、俺の隣には岡本がいた。


「仲いいの?」

「まあ……一年の時から一緒だし」

「あーっ、俺、自主練するんだった! じゃあな、坂口!」

「えっ? あ、そっか、頑張れよ」


 岡本は、ありがと! と言って廊下を走り去って行く。明日、廊下は走るなって言っておこう。


「じゃあウチらも帰るね~」

「凰ちゃ……坂口センパイも、またね~」


 理央のクラスメイトたちは、俺にまで手を振ってくれて廊下を歩いて行った。見た目は派手だけど、理央のクラスメイトがいい子たちで安心した……。



 ……でも俺、この後、どんな感情でいたらいい?



「凰ちゃん、帰ろ」

「っ……ああ、そうだな」

「そうだ。ちょっとスーパーに寄っていい? クーポン出てて」


 理央が見せてきたのは、近くのスーパーのアプリだ。今日はカップ麺と掃除用具が値引きになるらしい。


 昨日の理央よりも、少し気怠げな話し方。低い声。表情からも甘えた感じがなくなっている。もしかしたら昨日は、俺が驚くと思って昔みたいにしてくれていたのかな……。


 でも、そうだよな。五年も経ったんだから、昔と違って当然だよな。


「理央はしっかり者になったなぁ」

「五年前の俺とは違うからね」


 笑い方も大人っぽくなったけど、褒めると喜ぶところは、やっぱり変わらずに可愛かった。



「……もう見られたから、今更どうにも出来ないけど」

「うん?」

「……今の俺、嫌じゃない?」

「嫌じゃないよ。正直、すごく驚きはしたけど、理央ももう高校生だもんな」


 不安そうな理央にそう答えて笑ってみせる。それでもまだ心配な顔をしているから、手を伸ばして頭を撫でた。


「本当に大きくなったなぁ」

「凰ちゃんに撫でられるのは好きだけど、俺はもう子供じゃないよ」


 ムッとして拗ねる顔が可愛い。でも、撫でるのは大丈夫そうだな。ご両親のことで荒れてた時期があったって言ってたし……これからは、俺がたくさん甘やかしてやろう。




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