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第四話 血の記憶

【第四話 血の記憶】ーーーーーーーーーーーーーー


 深淵の森を抜けたアキトたちは、星環界の中心にそびえる「星環の門」にたどり着いた。


 巨大な円環状の門は、無数の星屑を纏い、青白い光を放っている。その向こう側には、現世と星環界をつなぐ裂け目が脈動していた。だが、門の前には新たな敵が待ち構えていた。


 黒い霧から現れたのは、骸骨のような鎧を纏った女戦士。手に持つ大鎌からは赤い光が滴り、まるで血のように地面を染める。彼女の瞳は冷たく、しかしどこか哀しげだった。


「光のソルナイト……日向アキト。ようやく会えた」


 彼女の声は低く、抑揚がない。だが、その言葉にはアキトの心を揺さぶる何かがあった。


「お前は誰だ? アザラフのまた別の手下か?」


 クレインが槍を構え、雷を纏わせる。だが、女戦士は動じず、視線をアキトに固定したまま答える。


「我は堕星の将、血鎌のセレナ。かつては……お前の両親と戦った者だ」


 その言葉に、アキトの胸が締め付けられる。両親――リアの話では、星環界の守護者だったという。だが、セレナの言葉にはもっと深い意味が込められている気がした。


「両親と? 何を言ってる……! 俺の両親は事故で死んだんだ!」


 アキトの叫びに、セレナが薄く笑う。


「事故? ふふ……それは星環界の真実を隠すための方便だ。アキト、お前の血には光の力が流れている。そして、その力はかつて我が主アザラフを封じた力でもある」


 リアが前に進み、杖を構える。


「セレナ、あなたはかつて星環界の騎士だったはず! なぜアザラフに堕ちたの?」


 セレナの瞳が一瞬揺れるが、すぐに冷たい笑みに戻る。


「星環界の偽善に疲れただけだ。光も闇も、所詮は同じ。力ある者が支配する――それが真実だ」


 言葉を終えると同時に、セレナが大鎌を振り上げる。赤い光が弧を描き、地面を切り裂く。アキトたちは咄嗟に散開するが、攻撃の余波で星環の門の周囲が震える。


「アキト、気をつけて! 彼女の鎌は血の呪いを持つ。傷つけば魂まで侵されるわ!」


 メルロが叫び、氷の結界でアキトを援護する。カイルが盾を構え、セレナの第二の攻撃を防ぐが、鎌の衝撃で膝をつく。


「くっ……こいつの力、尋常じゃねえ!」


 カイルの声に、クレインが雷の槍を投じる。


「なら、まとめてぶっ飛ばす!」


 雷光がセレナを直撃するが、彼女は霧のように消え、次の瞬間、アキトの背後に現れる。


「遅い」


 セレナの鎌がアキトの肩をかすめる。瞬間、鋭い痛みと共に、アキトの視界が揺らぐ。頭の中に断片的な映像が流れ込む――燃える神殿、叫ぶ両親、そして幼いミユを抱きしめる母の姿。


「これは……何だ!?」


 アキトが膝をつくと、セレナが冷たく笑う。


「血の記憶だ。光のソルナイトの血は、過去を映す。お前の両親はアザラフを封じるため、自らの命を捧げた。そして、お前と妹はその鍵を継いだ」


「ミユ……? ミユが何の関係が――!」


 アキトが叫ぶが、セレナは答える代わりに鎌を振り上げる。


「全てはアザラフの復活のため。お前の命も、妹の命も、我が主に捧げる!」


 その瞬間、リアの風の魔法がセレナを押し返す。


「アキト、記憶に囚われるな! あなたの力は過去じゃない、今にある!」


 リアの声に、アキトは《ソル・レグリア》を握り直す。胸の光が熱を帯び、鎌の呪いによる痛みが薄れていく。


「俺は……過去に縛られない。ミユを守るため、みんなを守るため――戦う!」


 アキトの光の翼が輝き、剣に炎が宿る。セレナが鎌を振り下ろすが、アキトは一瞬早く動き、剣で鎌を受け止める。火花が散り、二人の力がぶつかり合う。


「クレイン、メルロ、カイル! 援護を!」




 リアの指示に、クレインが雷を、メルロが氷を、カイルが鋼の衝撃波を放つ。セレナは四方からの攻撃に動きを封じられ、アキトに視線を戻す。


「愚かな……だが、その光、確かに両親に似ている」


セレナの声に一瞬の迷いが混じる。だが、アキトはその隙を見逃さない。


「なら、その光で道を切り開く!」


《ソル・レグリア》が白熱し、光の奔流がセレナを包む。


「《光焔一閃・極》!」


 剣がセレナの鎌を砕き、彼女の胸を貫く。セレナは一瞬、アキトを見つめ、静かに呟く。


「光よ……再び、闇を……」


 彼女の身体は赤い光となって崩れ、消滅した。 戦いの後、星環の門の前でアキトたちは息を整える。リアがアキトに近づき、静かに言う。


「セレナの言葉……あなたの両親はアザラフを封じるため、星環界と現世の境界を閉じた。でも、その封印は完全ではなかった。アザラフは今、ミユの力を利用して復活しようとしている」


「ミユが……? どういうことだ!?」


 アキトの声が震える。リアは目を伏せ、続ける。


「ミユの血にも光の力が宿っている。彼女は現世にいることで、封印の鍵となっていた。でも、アザラフがその血を狙っているのよ」


 その時、星環の門が激しく輝き、裂け目から黒い影が溢れ出す。アザラフの声が響く。


「光のソルナイトよ、妹を救いたければ、門をくぐれ。さあ、我が復活の時が来た!」


 アキトは剣を握り、仲間たちを見る。


「ミユを……絶対に守る。みんな、行くぞ!」


 クレインが笑い、メルロが頷き、カイルが盾を構える。リアは杖を掲げ、静かに言う。


「星環の門の先は、アザラフの領域。覚悟して、アキト」


 五人の戦士は、輝く門をくぐり、闇の領域へと踏み出した。


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