第一話 目覚めの刻(とき)
【第一話 目覚めの刻】ーーーーーーーーー
その日、空は裂けた。
東京郊外、篠宮学園高校の三年生・日向アキトは、放課後の教室で奇妙な眩暈に襲われた。黒板の前で雑談をしていたはずのクラスメイトの声が遠のき、世界が滲む。
「――神よ、目覚めよ。選ばれし者よ、運命の扉が開かれる」
耳元に響いたその声は、明らかに人間のものではなかった。
次の瞬間、彼の眼前に眩い光が走る。気がつけばアキトは、教室ではなく、白銀の神殿に立っていた。大理石の柱が連なるその場所の中央には、五つの玉座。そして彼の周囲には、見知らぬ四人の男女が佇んでいた。
「ようやく目覚めたか、第五の光よ」
そう言ったのは、銀髪の青年。漆黒のローブを羽織り、左肩には**“星環の印”**が輝いている。
「我らはソルナイト――天界の加護を受けし五柱の戦士。おまえは、最後の一人なのだ」
アキトは混乱した。だが、胸の奥にある何かが彼に囁いた。これは夢ではない。始まりなのだ。
「待ってくれ……俺はただの高校生で、戦士だなんて――」
「“ただの”ではない。おまえの血には、天界の力が眠っている」
金髪の少女が口を開く。彼女の背には薄く輝く六枚の羽が浮かび、手には魔法の杖。
「わたしはリア=セラフィム。風のソルナイト。あなたのことは預言で知っていた」
「預言?」
「この世界には二つの軌道がある。“現世”と“星環界”。今、異界の魔族――堕星アザラフが星環の門を開き、この世界に侵攻を始めようとしているの。あなたはその鍵を握る“光の騎士”なのよ」
まるでライトノベルの冒頭のような話に、アキトは思わず笑ってしまいそうになった。
だが、次の瞬間、神殿の天井を破って黒き雷が降り注いだ。怒り狂うように唸る咆哮とともに、そこに出現したのは、真紅の鎧に身を包んだ異形の騎士だった。
「ようやく見つけたぞ、光のソルナイト……この世界も、おまえたちの命も、我が主アザラフへの捧げものとなる!」
異形の騎士が剣を振り下ろす。その動きは人間の域を超えていた。
「来るな――!」
アキトの叫びと同時に、彼の胸から放たれた光が神殿を満たす。
その光は形を成し、彼の身体に白銀と紅の鎧を纏わせた。背中には光の翼。手には灼熱の剣――《ソル・レグリア》。
「これは……俺の……力?」
「ようやく覚醒したな、“第五の騎士”!」
リアが叫ぶ。周囲の仲間たちもそれぞれの魔具と装甲を発動させる。
雷鳴が轟く中、五人の戦士たちと、異形の騎士との死闘が始まった――。
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【登場キャラクター紹介】
●日向アキト(ひなた あきと)
主人公。高校三年生。両親は既に亡くなっており、妹とふたり暮らし。
覚醒後は「光のソルナイト」として、炎と光の力を操る。
●リア=セラフィム
風のソルナイト。高位天族の末裔で、戦士の中でも知識に長ける。
冷静沈着な反面、仲間には優しい。
●クレイン・グリムヴァルド
雷のソルナイト。かつて星環界の軍にいた。短気だが情に厚い。
アキトとは対立しつつも信頼を築いていく。
●メルロ=アンダルシア
水と氷の魔法騎士。元は神殿の巫女。戦いにおいては凄まじい冷気で敵を凍てつかせる。
●カイル・フォルセティ
大地と鋼のソルナイト。寡黙だが最も信頼の置ける盾役。