第3話 7つのクラス
鏡を置いたアルセインが天井に手をかざすと、そこには大きな7つの紋章が浮かびあがった。
「先程も自己紹介しましたが、改めて僕はルクス組(Lux Class)の4年生、アルセイン・シュレディンガーです。ガーディアンとして、皆さんにこの学園に存在する“7つの組”についてご説明します。まずは僕たちルクス組。紋章のモチーフは“太陽の輪”。模範的で優秀な生徒が多く、星の導きを重んじるクラスです。僕も日々、優秀な仲間たちに助けられています」
少し照れたように言葉を結ぶと、拍手が沸き起こる。そして入れ替わるように次のガーディアンが一歩前に出た。
「次は俺が話すぜ!」
快活な声とともに前に出たのは、赤毛をかき上げた男の子だった。
「イグニス組(Ignis Class)、炎属性を扱うクラスだ。俺は4年生のダリル・ファイバー。紋章は“燃える剣”!燃える魂と戦闘技術がウリだぜ!星力操作の精度はピカイチだし、いつでも戦闘訓練の準備は万端!」
「バカ。入学早々、物騒なこと言わないでよね」
その言葉に続いて前に出たのは、涼しげな瞳の少女だった。長い銀髪がふわりと揺れる。
「私はアクア組(Aqua Class)四年生のセリア・リアネス。属性は水、紋章のモチーフは“波打つ月”。癒しや精神の星術を得意とする、穏やかな気質の生徒が多いクラスよ。怪我をしたときはアクア組を頼って」
その凛とした美しさに、思わずフィリアは息を呑んだ。
「続いては、我々テラ組」
荘厳な声とともに前に出たのは、長身メガネで落ち着いた雰囲気の少年だった。
「私は5年生のザカリオ・グレイス。大地を司るクラスだ。紋章は“双頭の獣”。防御と強化術に秀でた者が多く、信頼と堅実さを重んじる。それが我々テラ組の誇りだ」
ザカリオは礼儀正しく頭を下げ、静かに後ろに戻る。
「え、次オレ?……わかったからさ、ザカリオさんそんな睨まないで?」
笑いを誘うように軽やかに前に出たのは、ラフな雰囲気の少年だった。
「ヴェント組、風属性ね。オレはステイン・ニコラス、3年生。紋章は“羽ばたく鷹”。自由で好奇心旺盛な連中が多いクラスだよ。とにかく風通しのいい仲間ばっかだから、よろしく頼むな〜」
にこやかに手を振るステインに、新入生たちからくすくすと笑いが漏れた。
そして、最後に姿を現したのは──
「フルグル組(Fulgr Class)のガーディアン、ミリエラ・フォンティーヌ!2年生!」
まるで雷鳴のような声と共に、金髪をツインテールにまとめた少女がホール中央へと飛び出すように現れた。瞳は稲妻のように煌めくシトリンカラー。動きに合わせて揺れるケープの裾には、銀糸で雷光をかたどった紋章が輝いている。
「フルグル組は雷の属性!紋章は、天を貫く稲妻だよ!」
くるりと一回転してウィンクしながら、ミリエラは元気よく続けた。
「スピードや直感力が求められる星術が多くて、頭で考えるより先に体が動いちゃうタイプが多いの!私もそうだけど、誰にも負けないくらい負けず嫌いで、何事にも全力っ!」
場の空気がぱっと明るくなるような笑顔を浮かべると、ミリエラはフィリア達の方に視線を向けた。
「新入生のみんな、これから一緒に頑張ろうねっ!」
「か、かわいい…!」
その天真爛漫な笑顔に、フィリアは思わず見惚れてしまった。
(あれ?でも7組あるって言っていたけど、1組足りない…?)
するとアルセインがちらりと学園長を見て、小さく頷くと、
「そして、最後に──」
と学園長の声がホールに響き渡る。
「第7の組、“ノクス組(Nox Class)”。」
ざわ……と静寂を切り裂くように、会場がざわめく。
「え、ノクスって……あの“落ちこぼれ組”って噂の?」
「ノクス組は年に1人いるか、いないかの落ちこぼれらしいぜ!ノクス組に選ばれたら恥ずかしくて学園に来れないよなー」
ざわめきは四方からフィリアの耳に刺さる。
やがて、ざわめきからひそひそとした嘲りの渦へと変わっていく。
壇上に立つ学園長が、一瞬眉をひそめるも、すぐに感情を消して告げた。
「静粛に。——それでは只今より星環の儀を、執り行う」